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漱石『彼岸過迄』解説あらすじ

夏目漱石
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始めに

漱石『彼岸過迄』解説あらすじを書いていきます。

語りの構造、背景知識

英露のリアリズム

 夏目漱石は国文学では割と珍しく(露仏米が多い印象です)、特に英文学に創作のルーツを持つ作家です。特に好んだのは、英国のリアリズム作家(オースティン[『傲慢と偏見』]、ジョージ=エリオット、H=ジェイムズ[『ねじの回転』『鳩の翼』])でした。『三四郎』『それから』『こころ』『行人』『明暗』などの代表作も、そのような英国の心理リアリズム描写を範としますし、本作も同様です。

 『行人』『こころ』と続く、後期3部作の第1作で、リアリスティックな心理を展開します。

 またロシア文学のリアリズムからも影響され、ドストエフスキー(『罪と罰』)などに似た心理リアリズムが展開されます。

語りの構造

 本作は、異質物語世界の語り手が設定され、主に田川敬太郎に焦点化が置かれています。

 物語の中心は、敬太郎よりも、その周囲の人々といった感じです。語りの構造は『吾輩は猫である』などと重なり、焦点化される人物はあくまで視点人物にとどまり、筋らしい筋のない全体の中で、さまざまなエピソードが展開されます。

伝記的背景

 漱石の娘の雛子は、19103月2日に五女として生れ、1911年11月29日に急死します。

 ひな子の死は、「雨の降る日」の幼児(宵子)の急死として描かれています。

須永の苦悩

 本作では、心理劇の中心となる人物に、須永というキャラクターが設定されています。

 須永は、千代子に惹かれつつも、須永が母親の実の子供でなかったことなどから内向的になり、縁談を避けようとしています。須永の心理は最後に手紙を通じて描かれ、このあたりは『行人』『こころ』に重なります。

物語世界

あらすじ

「風呂の後」

 大学卒フリーターの田川敬太郎の人物像が、同じ下宿の住人の森本と比較されます。

「停留所」

 敬太郎は、大学の友人の須永の叔父で実業家の田口に就職を頼もうと、須永の家を訪ね、女が家にはいるのを目にします。田口からは小川町の停車場に降りるある男の電車から降りてからの行動を報告しろと依頼され、敬太郎は従います。

 停車場には女がいて、件の男はその女性と町を歩きます。

「報告」

 田口から、調査した男への紹介状をもらって、敬太郎は男を訪問します。

 男は義兄で高等遊民の松本で、女は田口の娘の千代子でした。これをきっかけに、敬太郎は田口の家に出入りします。

「雨の降る日」

 松本が雨の日に面会をことわったのは、幼い娘が突然死んだのとその葬儀が理由と明かされます。

「須永の話」

 須永の母親は千代子と須永の結婚を望み、千代子も須永に好意を持っているものの、須永はそれから逃げます。

「松本の話」

 須永が千代子をさけるのは、須永が母親の実の子供でなかったのが理由でした。

 須永は気持ちの整理のために、関西に一人で旅にいきます。須永からの手紙がとどき、外の世界へ関心を持ちつつあるのが示されます。

参考文献

・十川信介『夏目漱石』

・佐々木英昭『夏目漱石』

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