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漱石『道草』解説あらすじ

夏目漱石
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始めに

漱石『道草』解説あらすじを書いていきます。

語りの構造、背景知識

英露のリアリズム

 夏目漱石は国文学では割と珍しく(露仏米が多い印象です)、特に英文学に創作のルーツを持つ作家です。特に好んだのは、英国のリアリズム作家(オースティン[『傲慢と偏見』]、ジョージ=エリオット、H=ジェイムズ[『ねじの回転』『鳩の翼』])でした。『三四郎』『それから』『こころ』『行人』『明暗』などの代表作も、そのような英国の心理リアリズム描写を範としますし、本作も同様です。

 またロシア文学のリアリズムからも影響され、ドストエフスキー(『罪と罰』)などに似た心理リアリズムが展開されます。

プラグマティズム

 また、漱石はH=ジェイムズの兄ウィリアムなど、プラグマティズムからも影響されました。これは極めてざっくりいうと、日常言語や日常的実践の世界を分析的に捉えようとする潮流です。現代でも推論主義や消去主義のような形で継承されています。こうした哲学的潮流に触れることが、日常的な実践への鋭敏な感性を培ったと言えます。

 本作も、自伝的な作品で、金の貸し借りの実践を巡るリアリズムが展開されていきます。

金の貸し借りを巡る戦略的コミュニケーション

 本作は、金の貸し借りを巡る戦略的コミュニケーションが描かれていきます。このあたりはややジェイムズ『鳩の翼』や、谷崎『異端者の悲しみ』を彷彿とさせます。

 物語の大まかな内容は、主人公健三に対して、さまざまなキャラクターが金を無心し、主人公がその応答に追われるという内容です。それぞれのキャラクターは義理を武器にして、さまざまに主人公から援助を引き出そうとしていきます。

物語世界

あらすじ

 健三は御住という女性と結婚し、ふたりの娘を得ています。駒込の一軒家に暮らし、大学での講義や執筆で生計を立てています。

 健三には年の離れた兄の長太郎と、16歳年上の姉・御夏がいます。父親は既になく、しかし健三を3歳から7歳までの期間に引き取って育ててくれた島田は健在です。彼と疎遠になっていたものの、島田の代理人の吉田虎吉が訪ねます。

 吉田の話では島田は頼まれると友人にお金を貸してしまい、そのために自分が困っているとのこと。経済的な援助を求められていることは健三にも察せられたものの、年末には3人目の子供を出産する予定なので、やんわりと断ります。しかしその後も吉田は無心にやって来ます。

 健三の姉・御夏の夫は比田虎八という中年です。かつては四ッ谷の区役所に勤めていたものの、 仕事を辞めてからは、遊んでばかりで、家にはほとんど帰ってきません。

 久しぶりに健三が会うと、御夏は持病のぜんそくも悪化していました。姉の話は、彼女に月々手渡している小遣いを増やせということでした。その割に、姉は急な来客のある日には高級寿司屋から出前を取り寄せています。前は島田もこの家に顔を見せていたようで、そんな時にはウナギを食べさせない限りは帰らなかったとのこと。

 ある日のこと、御住の父が突然に訪ねてきます。官僚として失敗した彼は、関西にある私営の鉄道会社の社長になろうとします。コネを持っている義父でしたが、社長に選ばれるにはは会社の株式が必要です。身重の妻から懇願され、これを断れませんでした。

 友人たちの伝を頼り金策に走り回った健三は、ようやく自らの月収の3カ月分に匹敵する400円ほどかき集めます。妻が女の子を出産したのはそれから年末の頃で、年明けには義父の事業が本格的に始動するでしょう。

 再び島田の使いがやって来ます。幼い頃の健三の面倒を島田と一緒になって見ていたという彼は、お金を要求します。ふたりの間に長太郎と比田が仲介、金を渡す代わりいっさいの関係を断つことになりました。

参考文献

・十川信介『夏目漱石』

・佐々木英昭『夏目漱石』

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