始めに
太宰治『ダス・ゲマイネ』解説あらすじを書いていきます。
背景知識,語りの構造
ジッド『ドストエフスキー論』の影響。芥川龍之介『藪の中』などに似る形式主義的実験
太宰治はジッド(『田園交響楽』『狭き門』)の作品やその『ドストエフスキー論』から顕著な影響を受けました。本作の形式主義的実験にはその痕跡が見受けられます。また私淑した芥川龍之介『藪の中』のような枠物語的構造、非線形の語りに影響されています。
ジッドとドストエフスキーの影響は女性の理想主義的な表象にも顕著で、サリンジャー作品(『ライ麦畑でつかまえて』『ナイン=ストーリーズ』)にも似ています。
変形私小説
本作は語り手を等質物語世界の語り手、佐野次郎に設定します。この次郎は、語り手ですが、最後に唐突に死んでしまいます。
また、太宰治自身も、新人小説家の役として登場しています。このような、特殊な構造の私小説的作品には『道化の華』『人間失格』『恥』などがあります。
タイトル
題名になっている「ダス・ゲマイネ」は、ドイツ語で「通俗性」「卑俗性」を意味する「Das Gemeine」のことです。タイトルからして、ゴンチャロフの『平凡物語』や四迷『平凡』を連想します。特に、『平凡』とは、小説家としての自己実現をめぐるドラマになっている点でも共通しています。
物語世界
あらすじ
主人公の佐野次郎は、甘酒屋で初恋の相手とよく似た女性の菊、そして東京音楽学校の学生・馬場数馬と知り合う。馬場から『海賊』という雑誌を作ろうといわれます。
フランスの詩人ステファヌ・マラルメやポール・ヴェルレーヌが詩を寄せていた雑誌『バゾシュ』やベルギーの詩人エミール・ヴェルハーレン一派の『若きベルギー』や『La Semaine』、『Le Type』に影響を受け、佐野次郎と馬場数馬は『海賊』という雑誌を作ろうとします。そこでオーブリー・ビアズリーに匹敵する画家を探し、馬場数馬の親類であった佐竹六郎に着目します。
しかしある時、佐野次郎が恩賜上野動物園を訪れて佐竹六郎と出会い、佐竹から馬場の出鱈目を知ってしまいます。
佐野次郎、馬場数馬、佐竹六郎に加えて馬場の大学である東京音楽学校の先輩から紹介を受けて、新人作家の太宰治が新たに『海賊』の創刊に加わります。第一回打ち合わせに佐野、馬場、佐竹、太宰の4人が集結するものの、会議は滞り、最終的に馬場が太宰の右頬を殴り、『海賊』の創刊は白紙に戻ります。佐野は誰もみんなきらい、菊ちゃんだけを好きだと馬場に話し、自分は誰だろうという疑問に駆られて走り、電車に轢かれて死にます。
甘酒屋で飲んでいた馬場数馬、佐竹六郎が佐野次郎の死について話し、佐竹の人は誰でもみんな死ぬ、との一言で締めくくられます。



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