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ゴールディング『蠅の王』解説あらすじ

ゴールディング
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始めに

ゴールディング『蠅の王』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ギリシア悲劇、ミルトンの影響

 ゴールディングは、ギリシャ悲劇やミルトンなどの影響を受けました。神話的、宗教的象徴のモチーフ、寓話的ストーリー、悲劇的物語などにおいて、その影響が見えます。

 ミルトン『失楽園』には、本作にも描かれるベルゼブブが描かれます。

ベルゼブブ

 ベルゼブブは、本来はバアル=ゼブル、すなわち「気高き主」あるいは「高き館の主」という意味で呼ばれていました。しかし、イスラエル(カナン)の地に入植してきたヘブライ人たちは、こうしたペリシテ人の儀式を嫌ってバアル=ゼブルを邪教神とし、この異教の最高神を語呂の近いバアル=ゼブブすなわち「ハエの王」と蔑みました。この名前が聖書に記されています。

 『失楽園』でベルゼブブは、威厳ある姿で描かれ、神の軍勢に敗れたサタンと悪魔たちの談合のなか、ベルゼブブは、神の創造物である地球を破壊しようと提案します。  

 傲慢と戦争の神である悪魔ベルゼブブが子供たちを支配するさまを物語は展開します。

元ネタの帝国主義とそのパロディ

 ゴールディングは、キリスト教とイギリス植民地主義をテーマとするバランタイン『珊瑚礁の島』からプロットのアイデアを得ていました。これはジュール=ヴェルヌの『十五少年漂流記』と並んで、19世紀に流行した「孤島漂着もの」(ロビンゾナーデ。『ロビンソン=クルーソー』もの)の代表作で、本作はそのパロディです。

 『珊瑚礁の島』はポリネシアの大きな無人島の珊瑚礁で難破した3人の白人の少年のうちの1人である15歳のラルフ=ローバーの視点から綴られる物語で、大まかなコンセプトとしては、少年たちが帝国主義とキリスト教の拡大をする大人の肩代わりする役割を果たして、南洋諸島の野蛮な原住民たちを支配し啓蒙していこうとする内容です。

 本作はこのキリスト教のイデオロギーの普遍化と結びついたイギリスの帝国主義をテーマとする『珊瑚礁の島』へのアンチテーゼとして、支配者側の白人である少年たちの側にこそ、野蛮な暴力性を帯びた悪魔ベルゼブブを背負わせています。

 本作における子供たちは『珊瑚礁の島』の子供たちと同様に、大人の役割や特徴を肩代わりする存在で、権力への渇望や、お互いへの猜疑心から戦争を引き起こしたり、取り返しのつかない惨劇のあとで自分たちは被害者であるとして泣き出す子供たちの姿は、帝国主義の帰結として国粋主義や社会主義によるファシズムの暴走が起こりそれが尾を引き続ける第二次大戦前後の世相を象徴するようです。

 ゴールディングは、戦争を直接体験し、ノルマンディー上陸作戦では上陸用舟艇を指揮しました。戦後に冷戦時代を迎え、そうした悲劇を目の当たりにした経験から、帝国主義や理想主義的な児童観への異議申し立てとして、本作は展開されています。

物語世界

あらすじ

 戦いを避けるために子供たちを疎開地へ運ぶ飛行機が海へ墜落します。乗組員の大人が死亡し、助かったのは少年たちだけでした。

 南太平洋の無人島に置き去りにされた少年たちはラルフとピギーの2人を中心に規則を作り、烽火をあげ続けて救援を待とうとします。

 次第に元々ラルフと仲の悪かった少年ジャックは、ラルフが気に入らず、島で自由に生きることを望んで、独自に狩猟隊を結成します。ジャックは狩猟隊のメンバーと毎日を好き勝手に過ごし、豚を狩ってご馳走を得るようになり、ラルフの一派の少年たちもその魅力に惹かれ出します。

 そんな中、船が島の沖を通りかかったとき、その日の当番が烽火を怠ったことから、少年たちに気が付かずに船が過ぎてしまいます。それによりラルフの一派で対立が起こります。

 ある夜、島の近くで空中戦が起こり、戦闘機パイロットの死体がパラシュートで降下します。双子の少年サムとエリックは、死体を怪物と間違えます。ラルフとジャックがもう一人の少年ロジャーと一緒に調査すると、彼らは怪物が本物であると信じて恐怖に駆られて逃げ出します。

 ジャックは他の少年たちをラルフに敵対させようとし、一人で自分の部族を結成し、他の少年たちのほとんどが徐々に加わるようになります。ジャックと仲間たちは森の中で怪物への供物を準備しました。それは、尖った棒に取り付けられ、ハエが群がる豚の頭です。サイモンは、その頭と想像上の対話をし、それを「蝿の王」と呼びます。頭はサイモンに、島には怪物はいないと告げ、他の少年たちがサイモンに襲いかかるだろうと予言します。

 その夜、ラルフとピギーはジャックの部族を訪ねます。彼らは顔にペイントをし、原始的な儀式の踊りを始めていました。サイモンは、「怪物」が死んだパイロットに過ぎないことに気づき、急いでジャックの部族に知らせるものの、狂乱した少年たちはサイモンを獣と間違えて殴り殺します。

 仲間のほとんどをジャックに奪われたラルフは、唯一の味方のピギーも、ジャックの取り巻きであるロジャーに岩を頭上に落とされて殺されてしまいます。

 その翌日、ジャックは王としての地位とこの楽園を脅かす目障りなラルフを排除させようと、狩猟隊に木の枝を槍のようにして、ラルフを殺害させようとします。ラルフは森に火を放ったジャックたち狩猟隊から、島中を逃げ回ります。

 しかし、火を放ったことで、イギリス海軍に見つかってラルフたちは救助されます。ラルフ、ジャック、その他の少年たちは、泣き崩れます。士官は、少年たちが野蛮な行動をとっているのを見て失望を表明し、その後、感動し、少し恥ずかしくなった様子で、沖合で待機している巡視船を見つめます。

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