始めに
ゲーテ『若きウェルテルの悩み』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
ドイツロマン主義
ゲーテはドイツロマン主義を代表する作家です。
初期には古典主義としての傾向もあったものの、キャリアの中で、どんどん形式的な実験を展開していくようになります。シラーが傾向としては古典主義的なスタイルを特徴とするのとは対照的です。
シェイクスピアやホメロスからの影響は大きく、内的世界の混乱や混沌、積極的自由のテーマの側面から影響されています。また、形式的実験もシェイクスピアと重なります。
古典主義とロマン主義
ゲーテという作家は、形式主義者という意味合いにおいて古典主義者であり、作家主義者であるという点でロマン主義者でした。
同時代のフリードリヒ=シュレーゲルはゲーテの『ヴィルヘルム=マイスターの修行時代』をシェイクスピア『ハムレット』への批評性に基づくものとして、高く評価しました。『ハムレット』という古典の形式をなぞりつつ、ゲーテという作家個人の主体性を発揮することで展開される翻案の意匠が『ヴィルヘルム=マイスターの修行時代』にはあります。
本作や『ファウスト』などもそうですが、古典を参照しつつ、大胆な作家主義的意匠を凝らした作風が特徴です。
ロマン主義的苦悩
シェイクスピア『ハムレット』さながらに、本作ではアンビバレントな欲求に取り憑かれた主人公を描きます。
『ハムレット』では父の霊に、敵討ちとして叔父クローディアスを殺すように言われて、そこから主人公ハムレットがさまざまに苦悩する姿を描きます。“To be, or not to be”というセリフは有名です。
本作でもウェルテルは婚約者のある女性シャルロッテに恋をして、許されざる恋に煩悶し苦しむのでした。
本作はロマン主義を特徴づける個人の主体性と自己実現をテーマにしていると解釈できます。
語りの構造
作品は2部で構成されており、主に主人公ウェルテルが友人ヴィルヘルムやシャルロッテに宛てた書簡によって構成されています。
第二部の途中から「編集者」による解説が語りとして挿入され、ウェルテルの書簡に補足的にシャルロッテや周辺人物の状況を説明します。
モデル
この作品は作者ゲーテの実体験をもとに執筆されています。1771年にストラスブール大学で学業を終えたゲーテは、ヴェッツラーに移り、そこで舞踏会に参加し、そこで作中のシャルロッテのモデルとなるシャルロッテ・ブッフと出会い恋に落ちます。そして間もなく彼女は友人ケストナーと婚約中であることがわかるが、諦めきれずにシャルロッテのもとを頻繁に訪れます。しかし思いを果たせず、故郷フランクフルトに戻ります。
しかしゲーテは故郷に戻った後もシャルロッテが忘れられず、彼女の結婚の日が近づくと懊悩し、自殺すら考えます。そんな中、ヴェッツラーの友人の一人イェルーザレムが人妻への失恋がもとでピストル自殺したとしります。ゲーテはこの友人の死と自身の失恋から本作をものしました。
本作のモデルについてはマン『ヴァイマルのロッテ』が書いていて、これがよく知られています。
物語世界
あらすじ
第一部
ウェルテルは新たにやってきた土地で、風物の素晴らしさや、身分の低い人々の素朴さに惹かれたこと、とある公爵とその老法官と親しくなったこと、その老法官の妻が最近死んで、長女がまだ幼い兄弟たちの母親代わりをしていること、ワールハイムという土地にある料亭が気に入って、そこでしばしばホメーロスを耽読していることなどを語ります。
ある日ウェルテルは郊外で開かれた舞踏会に知り合いと出かけ、その際に老法官の娘シャルロッテと対面します。ウェルテルは彼女が婚約者のいる身であることを知りつつ、惹きつけられます。
この日からウェルテルはシャルロッテのもとにたびたび訪れ、彼女の幼い弟や妹たちになつかれます。
しかし彼女の婚約者アルベルトが到着すると耐え切れなくなってこの土地を去ります。
第2部
新たな土地でウェルテルは求めて官職に就き、公務に没頭しようとする。しかし同僚たちの卑俗さや形式主義に辟易し、伯爵家に招かれた際に周囲から侮辱を受けたことから退官します。その知り合いの公爵のもとでも落ち着かず、各地をさまよった後やがてシャルロッテのいるもとの土地に戻ってきます。しかしすでに結婚していたシャルロッテとアルベルトは、彼に冷たくします。
「編集者」による解説が挿入され、ウェルテルの書簡と平行してシャルロッテや周辺人物の状況を説明します。
ある日ウェルテルの旧知の作男が、自分の主人である未亡人への思いから殺人をします。作男に自分の状況を重ね合わせたウェルテルは作男を弁護しようとするが、アルベルトと、シャルロッテの父親である老法官に跳ねつけられ、ここからウェルテルは自殺を決意します。
彼は使いをやってアルベルトの持つピストルを借りようとします。アルベルトの傍らでその使いの用事を聞いたシャルロッテは衝撃を受けるものの、夫の前でどうすることもできず、黙ってピストルを使いに渡します。ウェルテルはそのピストルがシャルロッテの触れたものであることに対する感謝を遺書に記し、自殺します。
最後に編集者によって、シャルロッテが出席できなかったウェルテルの葬儀が報告されます。
参考文献
Safranski, Rüdiger. ”Goethe: Life as a Work of Art”




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