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ヴォネガット『タイタンの妖女』解説あらすじ

カート=ヴォネガット
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始めに

 ヴォネガット『タイタンの妖女』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

トウェイン、ビアスの影響

 ヴォネガットは、マーク=トウェイン(『ハックルベリー・フィンの冒険』『王子と乞食』)やアンブローズ・ビアスという作家からの影響が顕著です。

 トウェインは口語的でエネルギッシュかつリズミカルな語りと、ペーソスを特徴とします。本作も、砕けた口語的な語でありつつも、ペーソスある物語を展開していきます。

 またトウェインやビアスのシニカルな風刺性と、ヴォネガットに影響しています。

オーウェル、ショーのリアリズム

 ヴォネガットはまた、オーウェル(『1984』『動物農場』)やショー(『ピグマリオン』)のシニズム、ペシミズムからも大きな影響を受けています。

 オーウェルのSF作品は、SF仕立ての内容の中に社会批判などを孕んでいますが、本作も同様です。

 ショーも寓意的で辛辣な諷刺作品を展開しましたが、本作も同様の精神を観て取れます。

運命悲劇

 本作は、運命悲劇として、物語がデザインされています。

 本作で特に印象的なのは、ラムフォードとトラルファマドール星人による、人類の運命への介入です。

 ラムフォードは、ふとしたことから、過去と未来の事象を観測できるようになり、そこから人類の歴史や他の惑星の歴史に介入して、地球の神になろうとします。

 しかし、実はラムフォードの行動も、全てトラルファマドール星人による計画の一環にすぎず、ラムフォードも利用されていただけでした。トラルファマドール星人のメッセンジャーロボットのサロは、宇宙船の部品が壊れ、太陽系タイタンで足止めされます。彼はトラルファマドール星に助けを求め、仲間のトラルファマドール星人は、地球人類の文明が交換部品を製造することができるように、人類の歴史を操作します。ストーンヘンジや万里の長城やクレムリンはすべて、トラルファマドール星人の幾何学的な言語で、彼らの進捗状況をサロに知らせるためのメッセージだったのでした。

 トラルファマドール星人が大きな犠牲を払って伝えようとしたメッセージは、ただ「よろしく」というもので、そのために多くのキャラクターの人生が翻弄されていたのでした。

 運命に翻弄されるさまざまな人生の悲哀を描く本作ですが、こうしたテーマは『スローターハウス5』と重なります。

物語世界

あらすじ

 主人公のマラカイ・コンスタントは、カリフォルニア州ハリウッド生まれの22世紀のアメリカの富豪です。彼は、地球から火星へ旅し、記憶を消され、火星軍の一兵士として地球との惑星間戦争の準備をします。出陣の際に水星へむかい、地球に戻って神の不興のしるしとしてさらし者になり、最後には、土星の衛星タイタンで彼の幸運に責任を持つウィンストン・ナイルス・ラムフォードと会います。

 ラムフォード自身はニューイングランドの裕福な家系の出です。地球と火星の間を旅している時に、ラムフォードと飼い犬のカザックを載せた宇宙船は「時間等曲率漏斗」(クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム)として知られる現象に飛び込み、ラムフォードとカザックは「波動現象」になります。彼らは、太陽からベテルギウスに至る螺旋に沿って存在し、地球のような惑星がその螺旋を横切ると、その惑星で実体化します。

 漏斗に入った時に、ラムフォードは過去と未来を知るようになります。

 ラムフォードは、火星人による侵略後の地球を団結させるために「徹底的に無関心な神の教会」を創立します。また、様々な惑星で実体化し、火星人の侵略を煽動します。彼は実体のある人間として存在することができる唯一の場所であるタイタンで、故障した宇宙船を修理するために小さな金属部品を求めているトラルファマドール星からの探検者、サロと友人になります。

 トラルファマドール星人の探検者、サロは、実は何千年も前にトラルファマドール星から遠く離れた銀河へのメッセージを届けるために作られたロボットで、その宇宙船は「そうなろうとする万有意志」 (Universal Will to Become, UWTB) で推進します。

 サロは、宇宙船の部品が壊れ、太陽系タイタンで足止めされます。彼はトラルファマドール星に助けを求め、仲間のトラルファマドール星人は、地球人類の文明が交換部品を製造することができるように、人類の歴史を操作します。ストーンヘンジや万里の長城やクレムリンはすべて、トラルファマドール星人の幾何学的な言語で、彼らの進捗状況をサロに知らせるためのメッセージだったのでした。

 交換部品はひとつの角が丸められ、2つ小穴があけられた小さな金属片だと分かります。トラルファマドール星のメッセージは、点がひとつ、トラルファマドール語で「よろしく」という意味でした。

金属片はコンスタントとその息子のクロノ(ラムフォードの元妻との間に生まれた)によってサロの元へ届けられます。そのとき太陽黒点がラムフォードの螺旋を乱し、彼とその飼い犬カザックは宇宙のどこかへと送られます。ラムフォードとサロの口論は、ラムフォードが消えて未解決になり、取り乱したサロは自分を分解してしまい、コンスタントとクロノはタイタンに取り残されます。

 クロノはタイタンの鳥と一緒に生活することを選びます。32年後、クロノの母は亡くなり、コンスタントはサロを組み立てます。サロはコンスタントを地球のインディアナ州インディアナポリスに還し、コンスタントはそこで死にます。

参考文献

・チャールズ・J. シールズ『人生なんて、そんなものさ: カート・ヴォネガットの生涯』

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