始めに
シャーロット=ブロンテ『教授』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
ロマン主義
ブロンテ姉妹は、イギリスのロマン主義を代表する作家です。
シェイクスピア、バイロン、スコット、ワーズワースなどのロマン主義からそのロマン主義を形成していきました。
マイノリティーである女性の視点から、その心理や主体的な行動を描くリアリズムがシャーロットの作風です。
またホフマンのロマン主義、幻想文学の影響も顕著で、本作もゴシック文学風味の演出が垣間見えます。
成長、自立
本作の主人公ウィリアム=クリムズワースは、貴族的な親族からの援助を拒み、自らの知性と労働によって道を切り拓こうとします。 血縁や身分ではなく、教育者としての能力や誠実さによって社会的地位を獲得していくプロセスは、当時の英国の中産階級的価値観を反映しています。 経済的自立が精神的自由の前提条件であるという、ブロンテに一貫した信念が強く打ち出されています。
ブロンテ文学に繰り返し登場する教師と生徒という非対称な関係が、本作の核となっています。社会的地位が低くとも、知性において生徒を圧倒することで得られる静かな権力が描かれます。 激しい感情を冷徹な仮面の裏に隠し、理知的に自己を統治することが、一種の美学として提示されています。
宗教
舞台となるベルギー(ブリュッセル)を背景に、英国的プロテスタント的な価値観と、大陸的カトリック的な価値観の対立が描かれます。英国人の主人公が、異国の地で他者を冷ややかに、時に偏見を持って観察する視線には、ブロンテ自身のブリュッセル留学時の経験が色濃く反映されています。主人公のストイックな誠実さと、周囲の不道徳さや狡猾さが対比されます。
主人公はしばしば、他人の行動を密かに観察したり、その内面を透かして見ようとしたりします。寡黙な観察者として他者を分析することで、心理的な優位に立とうとする態度は、ブロンテが描く内向的な英雄の典型的な特徴です。
物語世界
あらすじ
主人公ウィリアム=クリムズワースは、貴族の叔父たちからの経済的援助を、彼らの高慢さに反発して拒絶します。彼は疎遠だった兄エドワードが経営する工場で事務員として働き始めますが、冷酷な兄はウィリアムを過酷に扱い、精神的に追い詰めます。この血縁という不合理な支配からの脱却を決意したウィリアムは、友人の助言を得て、新天地を求めてベルギーのブリュッセルへと渡ります。
ウィリアムはブリュッセルで、ムッシュ=プレが経営する男子校と、それに隣接するマドモワゼル=ゾライード=ルテールの女子校で英語教師の職を得ます。当初、知性的で洗練されたゾライードに強く惹かれたウィリアムでしたが、密かに彼女がプレと婚約しており、さらに教え子や教師たちを巧妙に操る偽善的で権力志向な性格であることを盗み聞きし、幻滅します。
ウィリアムのクラスに、貧しいお針子をしながら教師を目指すフランシス=アンリが加わります。彼女はスイスと英国の血を引き、周囲の大陸的な気質とは異なる英国的な誠実さと鋭い知性を持っていました。ウィリアムは彼女の隠れた才能を見出し、厳しい指導を通じて彼女の精神を研磨していきます。この教育を通じた対話の中で、二人の間には師弟関係を超えた深い魂の共鳴が生まれます。
ウィリアムとフランシスの接近を察知したゾライードは、嫉妬と支配欲からフランシスを不当に解雇し、行方を隠してしまいます。ウィリアムは絶望の中で彼女を捜し出し、再会を果たします。彼はプレの学校を辞職し、一時的な経済的困窮に直面しますが、自らの教育者としての評判を武器に新たな地位を確立します。
ウィリアムとフランシスは結婚し、共に自分たちの学校を経営し、成功を収めます。フランシスは結婚後も夫に従属するだけでなく、プロフェッショナルな教育者としてのキャリアを維持し続けます。
最終的に、彼らは十分な資産を築き、理想の地であるイングランドの田舎へと戻り、静かな余生を送ることで物語は閉じられます。




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