始めに
M.シェリー『最後の人間』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
伝記的要素
中心人物の多くは、シェリーの知人に基づいています。
自然の楽園を求めて信奉者を率いて嵐で船が沈没して亡くなるユートピア主義者のウィンザー伯エイドリアンは、パーシー=ビッシュ=シェリーと重なります。
ギリシャのために戦うためにイングランドを離れ、コンスタンティノープルで亡くなったレイモンド卿は、バイロン卿と重なります。
メアリー=シェリー自身が夫パーシー=ビッシュ=シェリーやバイロンといった親しい人々を次々と亡くし、孤独や葛藤を抱えていた経験が作品に反映されます。
『最後の男』はシェリーの友人たちの喪失の時期と重なると同時に、彼らのロマン主義的な政治理念への疑いも垣間見えます。
ロマン主義への懐疑
作中では、人類は政治制度・科学・理性によって前進しているかのように描かれますが、疫病という偶発的で非合理な力によって、すべてが無意味化されます。理性・進歩・制度は人類を救えないという反啓蒙的主題が見えます。
また共和制・英雄的指導者・革命的理想が提示されるものの、理想的統治者は死に、共和的理想も集団死の前では無力になります。ここでは、フランス革命後の政治的ロマン主義の挫折が、黙示録的に描かれています。
科学と医学
『フランケンシュタイン』が電磁気学、化学、唯物論といった科学的問いに取り組んだのと同様に、『最後の人間』においてもシェリーは科学的探究がテーマです。
本作の破滅的な終末論は、医学が臆病になりすぎて、最終的に手遅れになったことを示唆しています。
物語世界
あらすじ
1818年、作者であるメアリー=シェリーは失われたシビュラの書の断片を偶然ナポリ近郊で発見します。そこに書かれていた未来の人類の運命に関する記述を一人称視点で語りなおしたものが本編です。
21世紀末、主人公ライオネルは、エイドリアンやレイモンド卿と知り合い、交流を深めます。その矢先、ギリシャトルコ戦争が起こり、レイモンド卿はギリシャ側の指揮官として戦い、ギリシャを勝利へ導きます。しかしその後、レイモンド卿は急死します。
その頃から謎の疫病が広がります。人間を死に至らしめるものの、他の動植物には被害を及ぼさない病で人口は激減します。
エイドリアンは残った人類の指導者となり、イギリスを捨てて南へ逃げるためにフランス、スイス、イタリアへと移動するうち、残ったのはライオネル、エイドリアン、レイモンド卿の娘の3人だけになります。
3人はギリシャへ渡ろうとしてアドリア海の航海中に嵐に見舞われ、ライオネルだけが漂着します。
ライオネルは最後の人間となり、これまでの記録を書きました。それが偶然発見された、シビュラの書だったのでした。




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