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中島敦『李陵』解説あらすじ

中島敦
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始めに

 中島敦『李陵』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

象徴主義などの影響

 中島敦は傾向として象徴主義、ロマン主義、また中国の伝奇文学などの影響が顕著です。

 具体的には永井荷風、谷崎潤一郎、上田敏、森鷗外、ポー、ボードレール、ワイルドなどで、その象徴主義、ロマン主義に影響されました。卒論も耽美派の谷崎を論じた「耽美派の研究」でした。

 他にもデイヴィッド=ガーネット、アナトール=フランス、ラフカディオ=ハーン、カフカ、オルダス=ハクスリー、ゲーテなど、幻想文学要素をはらむ作品、寓意的作品に多く親しみました。

 中国文学では列子、荘子、韓非子、王維、高青邱の寓話などに親しみました。

典拠とタイトル

 『李陵』は、『漢書』(「李広蘇建伝」「匈奴伝」「司馬遷伝」)、『史記』(「李将軍列傳」「太史公自序」)、『文選』(「答蘇武書」「任少卿報書」)等を典拠とします。

 『李陵』という題名は、深田久弥が、遺稿に対してつけたもので、実際作品を鑑賞すると、少しズレたタイトルにも感じて、コンセプトとして李陵が主人公というよりは、前漢の武帝から昭帝の時代、匈奴と戦い俘虜となった李陵のほか、司馬遷、蘇武が主人公となる群像劇となっています。

物語世界

あらすじ

 前漢の武帝から昭帝の時代。匈奴と戦い俘虜となった李陵のほか、司馬遷、蘇武が主人公。
 匈奴征伐の際に捕虜となった李陵は、匈奴単于に厚遇されます。李陵は自己弁護をせず、胡に残ります。一族が武帝に粛清されたこともあり、李陵は徐々に匈奴の暮らしに適応し、そこで妻子を得ます。匈奴の生活も、合理性があると認めます。
 一方、匈奴に順うのを潔しとしない蘇武でした。匈奴の支援を得ず、野に暮らす彼は、李陵に内省を促します。特に、武帝の崩御に涙する蘇武に己との違いを自覚します。
 蘇武は苦節19年の末祖国に帰ります。蘇武が顕彰されたことが、李陵にはひどくこたえるもののそれを隠して祝宴で舞います。大赦令が降りているから、漢に帰らないかと誘う使者の言葉にも辱めを見るだけと断ります。
 また、宮刑に処せられるものの『史記』を執筆する司馬遷も描かれます。武帝の前で李陵らを弁護したためにこの屈辱的な刑罰を受け、死を考えていた司馬遷も、歴史書の完成という使命がありました。
 司馬遷の怒りは武帝ではなく、周囲の自分の身が安心でさえあればいいという連中に向かいます。
 屈辱の中、司馬遷は執筆をつづけます。司馬遷は登場人物の言行が己のもののように感じられます。ついに『史記』が完成すると、司馬遷は虚脱しませ。

 物語は『漢書』匈奴伝の李陵の息子の記事への言及で終わります。

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