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中島敦『名人伝』解説あらすじ

中島敦
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始めに

 中島敦『名人伝』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

象徴主義などの影響

 中島敦は傾向として象徴主義、ロマン主義、また中国の伝奇文学などの影響が顕著です。

 具体的には永井荷風、谷崎潤一郎、上田敏、森鷗外、ポー、ボードレール、ワイルドなどで、その象徴主義、ロマン主義に影響されました。卒論も耽美派の谷崎を論じた「耽美派の研究」でした。

 他にもデイヴィッド=ガーネット、アナトール=フランス、ラフカディオ=ハーン、カフカ、オルダス=ハクスリー、ゲーテなど、幻想文学要素をはらむ作品、寓意的作品に多く親しみました。

 中国文学では列子、荘子、韓非子、王維、高青邱の寓話などに親しみました。

原典の『列氏』

 本作は『列氏』を原典としています。内容は以下。

 昔、名射手の甘蠅に弟子の飛衛がいて、その飛衛に紀昌が学びます。紀昌は瞬きをせずに目を鍛え、視力を極め、ついにシラミの心臓を射抜くほどの達人となった。やがて師飛衛をも倒そうと戦いを挑むものの、互角に終わり、互いに感涙して和解し、父子の契りを結んで技を他言しないと誓ったのでした。

 本作はそのような原典から名人の物語を展開します。

リドルストーリー

 「名人伝」は、寓意的ですが、作品のテーマやメッセージは多義的に開かれています。

 紀昌は師の飛衛を殺そうとして失敗し、さらなる名人を求めて西の霍山に隠棲する老師甘蠅を訪ねます。そして九年後、紀昌は無表情の木偶のようになって邯鄲に戻ります。紀昌は名人芸を披露せず、「弓をとらない弓の名人」として紀昌は有名になるのでした。

 このような結末はまず、紀昌が本当に名人になったのか、なっていないのかの解釈が開かれています。なっていないとしたら、名人を神格化する世間の風潮を相対化していると捉えられます。

 とはいえ、原典は本当の名人を描いているので、こちらでも本当に名人になったようにも見えます。そうすると、真の名人というものは、悟りのごとき境地に至り、その道の人間にしかその心理は計れず、周囲の理解の及ばないものになりうることを寓意として伝えるものとして捉えられます。

物語世界

あらすじ

 趙の都邯鄲に住む紀昌は、天下第一の弓の名人になろうと名手飛衛に入門し、五年余の難しい修行のすえに奥義秘伝を習得します。

 紀昌は飛衛を殺そうとして失敗し、さらなる名人を求めて西の霍山に隠棲する老師甘蠅を訪ねます。紀昌は矢を放たずに鳥を射落とす不射の射を甘蠅に見せられ、霍山にとどまります。

 九年後、紀昌は無表情の木偶のようになって邯鄲に戻ります。飛衛ら邯鄲の住人は紀昌を天下一の名人と認めて絶賛するものの、紀昌は「至射は射ることなし」と名人芸を披露しません。「弓をとらない弓の名人」として紀昌は有名になります。

 その後ついに紀昌は弓を手に取らず、晩年には弓の名前を忘れました。

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