PR

メリメ『カルメン』解説あらすじ

メリメ
記事内に広告が含まれています。

始めに

 メリメ『カルメン』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

語りの構造

 オペラしか知らない人が原作に触れて戸惑うのは、まず語りの構造でしょう。

 本作は、非線形の語りになっていて、4章から構成されるうち、最初の二章が語り手を考古学者としていて、外枠の物語になっています。3章において主人公のホセとカルメンの恋愛が、カルメンを殺し獄中にいるホセの口から、考古学者に対して語られます。4章は、作者の分身のような、等質物語世界の語り手の評論文になっていて、ロマやバスク地方についての、作品の背景的なことが語られます。

オペラとのおおまかな違い

 有名なビゼーのオペラは物語の第3章を中心にして脚色しています。主人公が盗賊で、殺人によって終わる展開がオペラコミックの劇場にふさわしくないとされ、原作からオペラはかなり改変されています。

 カルメンの夫や語り手など、多くの要素が廃され、脇役のダンカイール、ルーカスの出番が増え、ミカエラ、フラスキータ、メルセデスなどの独自の人物も追加されています。

 また、カルメンとホセという主役キャラクターの設定や性格、背景がやや異なっています。

カルメンという女。そしてホセ

 オペラも原作も、カルメンとホセが惹かれ合うもののやがてカルメンにつれなくされたホセが嫉妬からカルメンを殺すプロットは共通です。しかし、細かい描写が異なります。

 原作でもホセとカルメンが主人公なのは変わりませんが、ホセは原作ではバスク地方という出身が強調されます。そして軍隊に入る前にも喧嘩から人を殺してしまって故郷を追われ、その後もカルメンをめぐって軍の上官と争い、上官を刺殺した後に軍を脱走し、ダンカイロ一味に身を寄せます。それからは付近で有名な尋ね者となっていたりと、マイノリティでアウトサイダーのはぐれものとしての描写が原作では濃厚です。他方でオペラでは、プライドの高い竜騎兵長です。

 原作のカルメンは、オペラのカルメンよりも悪女としての性質が強いです。自由を好み束縛を嫌う女性なのは共通ですが、身を寄せているダンカイロの犯罪グループも原作では殺しも平気でする危険な組織ですので、オペラよりも性悪です。ダンカイロ一派は、単なる密輸団に過ぎないオペラとは対照的です。

物語世界

あらすじ

第一章

 アンダルシアの人里離れた場所でムンダの戦いの跡地を歩いている際、語り手の考古学者はガイドから危険な強盗だと伝えられる男に出会います。語り手は葉巻と食べ物を分け、男と親しくなります。

 その夜、二人は同じ宿屋に泊まり、ガイドは語り手にその男がドン=ホセ=ナバロとして知られる強盗だと言い、彼を逮捕するために立ち去るものの、語り手はドン=ホセに警告して逃がします。

第二章

 その後、コルドバで、語り手はカルメンという美しいロマ)の女性と出会い、彼女は語り手の時計に魅了されます。語り手はカルメンに占ってもらうために彼女の家に行き、カルメンはオカルトの知識で著者を感心させます。二人はドン=ホセに邪魔され、ホセは語り手を外に連れ出します。それから語り手は時計がなくなっていることに気づきます。

 数か月後、コルドバで、ドン=ホセ=ナバロが翌日、絞首刑になることを知った語り手は、ドン=ホセをを訪ね、話を聞きます。

第3章

 強盗の本名はホセ=リサラベンゴアで、ナバラ出身のバスク人です。ホセはパウメのゲームから生じた喧嘩で男を殺し、逃亡し、セビリアで警察機能を持つ兵士である竜騎兵の部隊に加わります。

 ある日、ホセは自分が警備していた葉巻工場で働いていたカルメンに出会います。部隊の中でホセだけがカルメンを無視していたので、彼女はホセをからかいます。

 その後、ホセは口論中に同僚の顔に「×」の形に切りつけたとして彼女を逮捕します。カルメンはバスク語で自分は半分バスク人だとホセを説得し、ホセはカルメンを釈放したものの、それによりホセは1か月間投獄され、降格されます。

 釈放後、ホセは再びカルメンと出会い、彼女に魅了されます。その後、ホセはカルメンの仲間の密輸業者ダンカイロ一派にに彼の持ち場を通らせます。ホセは彼女のロマ人の友人の家で彼女を探したが、彼女は彼の中尉と一緒に入ってきた。その後の喧嘩で、ホセは中尉を殺した。彼はカルメンの無法者集団ダンカイロ一派のもとに逃げた。

 無法者たちとホセは密輸から強盗へと仕事の幅を広げますが、カルメンが自分の魅力を組織の拡大に利用していたため嫉妬します。また、カルメンが既婚者であることを知りますが、その夫ガルシアが組織に加入した後、ホセはガルシアとナイフで争い、殺害します。そしてカルメンはホセの妻となります。

 しかし、カルメンは前ほどホセを愛していないと言い、ルーカスという若いピカドールに惹かれます。嫉妬するホセは、他の男たちを捨てて自分と一緒に暮らすよう頼み、アメリカでまっとうに暮らそうと言います。しかしカルメンは、「自分はいつでも自由だ」と言い、そしてホセに愛させた自分を嫌っているので、妥協することはないと告げます。ホセはカルメンを刺し殺し、自首します。

 ホセは、カルメンという女を育てたのはロマであると言うのでした。

第四章

 このパートはロマ人に関する学術的考察から成り、ロマの外見、習慣、歴史、言語などについて語ります。

コメント

You cannot copy content of this page

タイトルとURLをコピーしました