始めに
芥川龍之介「蜘蛛の糸」解説あらすじを書いていきます。
背景知識,語りの構造
アナトール=フランス、森鴎外流のヒューマニズムとリリシズム
芥川龍之介はアナトール=フランスからの影響が顕著で、そこから合理主義的科学的ヒューマニズムを展開していきました。『地獄変』に描かれるテーマを芥川自身の芸術至上主義を体現するものではないと、以前そちらの記事に書きましたが、芥川龍之介は倫理やモラルを重視するヒューマニストです。
またロマン主義的なリリカルな意匠は手本とした森鴎外からの影響が顕著です。
オスカー=ワイルド、ショーのシニズム
また芥川龍之介ら新思潮派の作家は、ショー(『ピグマリオン』)やワイルド(『サロメ』『ウィンダミア卿夫人の扇』)といった英国の演劇から顕著な影響を受けています。
本作もショーやワイルドを思わせる、シニカルな文明批評の眼差しが特徴です。
元ネタ、ボール=ケーラス「蜘蛛の糸」
本作には元ネタがあり、ポール=ケーラス『カルマ』に収められた「蜘蛛の糸」という説話です。『カルマ』の鈴木大拙訳は『因果の小車』と呼び、これが典拠です。
「蜘蛛の糸」では慈悲深き僧が摩訶童多(マハードータ)の創口を洗ひ清めていたとき、摩訶童多が過去の悪事をしきりに懺悔し、それに対して僧がカンダタという悪党の話をして、それが概ね芥川「蜘蛛の糸」の内容と共通します。
ケーラス「蜘蛛の糸」は仏教における道徳を説いていて、因果応報の発想や我執の否定を伝える説話になっています。芥川の本作においては、もっと普遍的な道徳を説く感じになっています。
物語世界
あらすじ
釈迦はある日、極楽から地獄を覗き見、罪人のうちにカンダタ(犍陀多)という男を見つけます。
カンダタは泥棒ですが、過去に一度、小さな蜘蛛を踏み殺しかけて止め、助けたことがありました。そこで釈迦は、彼を地獄から救おうと、一本の蜘蛛の糸をカンダタにおろします。
カンダタは、地獄から出ようと、糸につかまって昇ります。しかし途中で下を見下ろすと、数多の罪人達が登ってきています。カンダタは、大声で、この蜘蛛の糸は己(おれ)のものだ、降りろと喚きます。
その途端、蜘蛛の糸が切れ、カンダタは再び地獄に落ちます。
カンダタを浅ましく思ったのか、釈尊は悲しそうな顔をして立ち去ります。
参考文献
・進藤純孝『伝記 芥川龍之介』




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