はじめに
セリーヌ『なしくずしの死』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの想像
ラブレー的な伝統
セリーヌはラブレー(『ガルガンチュアとパンタグリュエル』)的な口語的コミュニケーションのフランス文学の伝統の上で作品を展開していきました。
ラブレーは『ガルガンチュアとパンタグリュエル』で知られるフランスのルネサンス作家で、大江健三郎への影響がしられます。生き生きとした口語的語り口に見える生の哲学が印象的です。
本作も、同様にダイナミックな口語的な語りを、セリーヌの分身であるフェルディナンを語り手として設定し、展開します。前作にあたる『夜の果てへの旅』と同様です。
実存主義と自伝
本作はサルトルに影響したことで、実存主義を代表する作品となりました。
サルトルの実存主義に関しては、ざっくり話すとハイデガーの実存主義哲学、プラグマティズムや、セリーヌ作品などからの影響を受け、一個のエージェントがその伝記的な背景などを背景に世界にコミットメントするプロセスに関して、構造的な把握を試みたものです。対自存在(自分自身を対象として意識する存在。志向する対象とする存在)としての人間は、世界の中にある他のエージェントからの相互的な役割期待があり、世界の中で自分自身をデザインしていく自由と責任があることをモデルとして提起しました。
またサルトルは実存主義において、未来に向かって現在の自己を抜けでて自覚的に自己を創造していくことをもとめ、さらにそれが社会や世界に対して、そして人類の未来に対して責任を負うアンガージュマン、社会参画を唱えました。
セリーヌの実存主義的文学
セリーヌの文学作品は、そのようなアンガージュマンと実存主義の世界といえます。なぜならばセリーヌの文学作品は自己の伝記的バックグラウンドを背景に、対自存在としての作家が現実社会、世界へのコミットメントを果たす中で紡がれていく表現だからです。
本作もセリーヌの自伝的な内容となっています。
物語世界
あらすじ
最初の部分は、1900 年から 1910 年のパリの店主の息子 (フェルディナンド・バルダム)の子供時代と青年期の物語を語ります。彼の弟子生活は失敗の連続でした。ベル・エポックに浸透した技術的進歩への崇拝が起こる時代のなか、借金と貧困に脅かされていました。
第 2 部では、叔父の主導で両親、特に父親から距離を置き、英語を学びます。やがて両親の元に戻ります。
第三部では、ナレーターが、学者兼出版者ロジェ・マリン・コートティアル・デ・ペレールに仕えて過ごした 2 年間を語ります。彼は大衆科学雑誌を発行し、それをギャンブルで破産に追い込み、ピカルディの荒廃した農場の土地に戻るという夢に妻とバルダミュを連れて行き、そこで農業に革命を起こすことができると信じていますが、破綻は明らかです。
参考文献
・Damian Catani ”Louis-Ferdinand Céline: Journeys to the Extreme”




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