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ゴールディング『後継者たち』解説あらすじ

ゴールディング
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始めに

 ゴールディング『後継者たち』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ギリシア悲劇、ミルトンの影響

 ゴールディングは、ギリシャ悲劇やミルトンなどの影響を受けました。神話的、宗教的象徴のモチーフ、寓話的ストーリー、悲劇的物語などにおいて、その影響が見えます。

 ​R.M. バランタインは​ゴールディングを語る上で最も重要な負の影響です。19世紀の冒険小説『サンゴ礁の島』は、イギリスの少年たちが無人島で文明的に、かつキリスト教的な徳を持って生き抜く物語でした。ゴールディングは第二次世界大戦での経験から、この無垢な少年たちという楽観的な人間観に強い違和感を抱きました。『蠅の王』は、実質的に『サンゴ礁の島』に対するアンチテーゼとして書かれています。

​ ​ゴールディングは古典文学に非常に造詣が深く、特にギリシャ悲劇の逃れられない運命や人間の内なる狂気というテーマに強く影響を受けています。また​ゴールディングは自身の作品を「寓話」と呼ぶことを嫌う傾向もありましたが、聖書的な象徴主義は随所に散りばめられています。

タイトルの意味

 ​ネアンデルタール人(「人々」)は、テレパシーのような共感的コミュニケーションをとり、自然と調和して生きる無垢な存在として描かれます。対して、新人類(「新しい人々」)は、武器、酒、階級、そして他者を支配する暴力性を携えて現れます。私たち現生人類の祖先が、知性と引き換えにどれほどの残酷さを手に入れたのかを突きつけます。


​ ​物語の多くは、ネアンデルタール人のロクの視点で語られますが、彼の思考は論理的ではなくイメージの断片として表現されます。ネアンデルタール人の直感的・感覚的な世界が、新人類の持つ推論・道具・言語によって破壊されていく過程が描かれます。 ロクたちが新人類の行動を理解できず、それを遊びや魔法だと思い込んでしまう描写は、知性の進化がもたらす決定的な隔絶を象徴しています。

 この小説は、人類の夜明けにおける失楽園の物語でもあります。平和で共感能力の高いネアンデルタール人が、狡猾で攻撃的な新人類に駆逐される様子を通じて、文明が進歩するたびに何かが決定的に失われていく悲哀を表現しています。物語の終盤で、視点がネアンデルタール人から新人類(トアマッド)へと急激に切り替わります。ロクたちの視点では新人類が恐ろしい侵略者でしたが、新人類の視点に切り替わると、ロクたちは自分たちを脅かす毛むくじゃらの怪物に見えています。

物語世界

あらすじ

 ​物語の主人公は、ネアンデルタール人のグループの一員であるロクです。彼ら(自分たちを「人々」と呼ぶ)は、厳しい冬を越して春の居住地である洞窟へと戻ってきます。彼らは非常に穏やかで、言葉よりも絵(イメージ)の共有によって意思疎通を図り、自然や仲間と深い共感の中で生きています。


​ ​彼らが洞窟に着くと、そこには自分たちとは全く異なる存在、クロマニヨン人が先回りしていました。ロクたちは、新人類が火を操り、お酒を飲み、奇妙な生贄の儀式を行う様子を遠くから観察します。ロクたちは新人類を恐れながらも、仲間として受け入れようと近づきます。しかし、新人類にとってロクたちは森に住む恐ろしい怪物でしかありませんでした。


​ ​知能で勝る新人類は、ロクたちの仲間を次々と殺害し、子供たちを連れ去ります。ロクは、新人類が放つ飛ぶ棒(矢)が自分を殺そうとしていることさえ、すぐには理解できません。長老が死に、仲間が消え、最後にはロクと女性のファだけが残されます。彼らは必死に子供を奪還しようとしますが、圧倒的な暴力の前に力尽きます。


​ ​物語の最終章で、視点はそれまでのロクから、新人類の一人であるトアマッドへと移り変わります。それまで無垢で優しい人々として描かれていたロクたちは、トアマッドの視点では夜の闇から襲いくる、毛むくじゃらで不気味な悪魔として描写されます。


 新人類は、自分たちが滅ぼした旧人類への恐怖に怯えながらも、カヌーで新しい土地へと漕ぎ出していきます。彼らが抱いている赤ん坊(さらってきたネアンデルタール人の子)だけが、失われた種族の唯一の生き残りとなります。

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