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本谷『異類婚姻譚』解説あらすじ

本谷有希子
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始めに

 本谷『異類婚姻譚』解説あらすじを書いていきます。

語りの構造、背景知識

異類婚姻譚

 異類婚姻譚とは、人間と人間ではない存在(異類)との婚姻を描く説話、物語の類型を指す用語です。 

 とはいえ、本作で描かれるのはそのような恋愛ではなく、語り手の女性とその夫の根本的な相容れなさを象徴するタイトルになっています。

 また、最後も安吾やポーのファルスのような荒唐無稽なラストになっていて、「旦那の形をしなくていいから、好きな形になりなさい」という私の言葉で、旦那は山芍薬になり、旦那は山芍薬になりたかったのだと明かされます。そして、私はそれを山へ送ることにします。

幻想文学

 全体的に幻想文学的要素を心理劇と絡めるという、ゴーゴリ、ドストエフスキー、カフカと重なる手法が取られています。

 中心となっているのは、旦那の顔の変形です。旦那は、めんどくさいことから逃げる性格で、なぜかある時から顔が変形しだします。

 実はそれは旦那の深層心理の反映で、本当になりたい形へと旦那は変形しようとしていた模様です。

 先にも述べた通り、結局旦那は山芍薬になりたかったようで、最後にはその姿になってしまいます。

 異類である山芍薬が本質の存在と、語り手は結婚していたのでした。

物語世界

あらすじ

 ある日、私は自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気がつきます。

 同じマンションに住むキタエさんから聞いた話では、顔がそっくりになった夫婦の近くに石を置くと、夫婦の顔が元に戻ったようでした。

 私の旦那は実はバツイチで、前妻の前では怠惰な自分をさらけ出せず、疲れて離婚しました。

 旦那は、めんどくさいことから逃げます。2人で買い物に行った時、旦那が道端に痰を吐いたことを通行人の女性に注意された時も上の空。私は旦那の吐いた痰をそっとハンカチで拭きましたが、女性からよくやるね、と同情されます。

 歩きながら旦那の顔を見ると、目鼻が顔の下のほうにずり下がっていました。

 私が「あっ」と大きな声をあげると、旦那の顔は元に戻りました。

 旦那の顔はときどき変化しているようです。人といるときは体裁を保って旦那の顔をしていますが、私といるときは目や鼻が適当に配置されているのです。

 ある時、いつもより元気のなさそうなキタエさんを見かけたので、カフェに誘ってみました。すると、猫のサンショの粗相が酷いので山に捨てに行こうかと思っているそうでした。

 私はふと、旦那との新婚旅行を思い出します。旦那はそのとき、マチュピチュ遺跡を見に行きたいと言いました。そして誰よりもハードな道を歩いて行き、「俺には、標高が足りなかったんだなあ」などと言っていました。

 ある日の買い物帰りにハコちゃんと会い、結婚について聞いてみると、蛇ボールのようなだと言っていました。

 夕食後、珍しく旦那がテレビではなくiPadに夢中になっているので、何をしているのか聞いてみると、コインを集めるゲームでした。

 旦那は風呂の中でも、トイレの中でも、布団の中でも、コインを集め続けます。

 旦那の顔は恐ろしいほど崩れ、原型も留めなくなります。


 やがて旦那の体調が悪くなり、よく会社を早退するようになっていました。

 旦那は相変わらずゲームに夢中です。

 ある日買い物から帰ると、旦那が揚げ物を作っていました。  

 体調が治ったようね、という問いかけに答えず、旦那は目を皿に落とし、揚げ物を黙々と食べ続けていました。

 私の顔はついに私を忘れかけていて、代わりに旦那の顔に近づいています。

 私はキタエさんの頼みで、サンショを山に捨てに行くことにしました。キタエさんの夫であるアライ主人も一緒に、群馬の山にサンショを捨てます。

 その際アライ主人から、旦那さんとのあいだに、何か挟んだほうがいいかもしれない、とアドバイスされます。

 旦那は相変わらず揚げ物を揚げ続けていました。

  揚げ物を食べたくないというと、旦那はのんびりした声で「どうして」と聞きます。

 揚げ物を食べると頭がぼんやりして、大事な話ができなくなります。しかし旦那は、家で大事な話なんかしたくないそうです。

 その声は、もはや旦那のものではありませんでした。旦那の話し方は私を真似、私の容姿を真似、別の生き物のようになっています。

「旦那の形をしなくていいから、好きな形になりなさい」という私の言葉で、旦那は山芍薬になります。旦那は山芍薬になりたかったのでした。

 夜が明けてから、私は山芍薬を山に還しに行きました。サンショを逃した場所の近くに咲いていた、紫色の竜胆の隣に並べて植えます。

 翌年の晩春、私は旦那に会いに山に行きました。透き通るような白い花を咲かせている旦那の姿は、涙がでそうになるくらい、美しいのでした。竜胆と山芍薬がよく似ていることに気付くと寒気がしてきて、私は逃げるように山を下りました。

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