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芥川龍之介「杜子春」解説あらすじ

芥川龍之介
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始めに

芥川龍之介「杜子春」解説あらすじを書いていきます。

背景知識,語りの構造

アナトール=フランス、森鴎外流のヒューマニズムとリリシズム

 芥川龍之介はアナトール=フランスからの影響が顕著で、そこから合理主義的科学的ヒューマニズムを展開していきました。『地獄変』に描かれるテーマを芥川自身の芸術至上主義を体現するものではないと、以前そちらの記事に書きましたが、芥川龍之介は倫理やモラルを重視するヒューマニストです。

 本作も『赤い鳥』という児童文芸誌に発表された童話で、ヒューマニズムをテーマにします。

 またロマン主義的なリリカルな意匠は手本とした森鴎外からの影響が顕著です。

オスカー=ワイルド、ショーのシニズム

 また芥川龍之介ら新思潮派の作家は、ショー(『ピグマリオン』)やワイルド(『サロメ』『ウィンダミア卿夫人の扇』)といった英国の演劇から顕著な影響を受けています。

 本作もショーやワイルドを思わせる、シニカルな文明批評の眼差しが特徴です。

 本作はあくまでも童話ですが、もしも杜子春が仙人の言いつけに従うだけのボンクラで、親を大切にしないクズだったら、仙人に殺されていたというウィットの効いた展開があります。

原作との違い

 原拠は伝奇小説『杜子春』です。

 大まかなプロットは共通なのですが、原作では杜子春は地獄に落ちた後、女に転生し、怒った夫が赤ん坊を叩き殺したとき、そこで妻である転生した杜子春が悲鳴を上げたところで現実に戻り、仙人は声を出さなかったら仙薬ができて仙人になれたのに、と杜子春を批判します。これは、あらゆる執着を捨て昇仙出来るという道教の思想を伝えるものです。

 他方で芥川は、それを親が地獄で拷問される展開にし、声を出さなかったら殺していた、と仙人に言わせます。全体的に中庸と利他を重んじるヒューマニスティックな内容として翻案した感じです。

物語世界

あらすじ

 唐王朝の洛陽の都。ある春の日の日暮れ、西門の下に杜子春という若者がいます。彼は親の遺産を散財し、ほとんど一文無しです。

 彼を哀れんだ片眼眇の老人が、この場所を掘る様にと杜子春に言います。そこからは黄金が出てきて杜子春は大富豪になりますが、散財して、3年後にはまた一文無しになります。杜子春はまた西門の下で老人に出会っては黄金を手に入れ、遊び暮らします。

 3度目、西門の下に来た杜子春。金のことしか頭にない人間というものに愛想を尽かした杜子春は、老人が仙人だと見破り、仙術を教えてほしいと頼みます。老人は自分が鉄冠子という仙人だの明かし、峨眉山へ連れて行きます。

 峨眉山の頂上に一人残された杜子春は試練を受けます。鉄冠子がくるまで、絶対に言葉を発してはならないというものです。虎や大蛇に襲われ、神に突き殺され、地獄に落ちて拷問されても、杜子春は一言も発しません。閻魔大王は、畜生道に落ちた杜子春の両親を、彼の前で鬼に鞭打ちさせます。杜子春を思う母親の心を知り、お母さん、と叫んでしまいます。

 叫ぶと同時に杜子春は現実に戻ります。すべては仙人が見せていた幻でした。これからは人間らしい暮らしをすると言う杜子春に、仙人は泰山の麓にある一軒の家と畑を与えるのでした。

参考文献

・進藤純孝『伝記 芥川龍之介』

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