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セリーヌ『リゴドン』解説あらすじ

セリーヌ
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始めに

 セリーヌ『リゴドン』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ラブレー的な伝統

 セリーヌはラブレー(『ガルガンチュアとパンタグリュエル』)的な口語的コミュニケーションのフランス文学の伝統の上で作品を展開していきました。

 ラブレーは『ガルガンチュアとパンタグリュエル』で知られるフランスのルネサンス作家で、大江健三郎への影響がしられます。生き生きとした口語的語り口に見える生の哲学が印象的です。

 本作も、同様にダイナミックな口語的な語りを、セリーヌの分身であるキャラクター語り手として設定し、展開します

実存主義と自伝

 本作はサルトルに影響したことで、実存主義を代表する作品となりました。

 サルトルの実存主義に関しては、ざっくり話すとハイデガーの実存主義哲学、プラグマティズムや、セリーヌ作品などからの影響を受け、一個のエージェントがその伝記的な背景などを背景に世界にコミットメントするプロセスに関して、構造的な把握を試みたものです。対自存在(自分自身を対象として意識する存在。志向する対象とする存在)としての人間は、世界の中にある他のエージェントからの相互的な役割期待があり、世界の中で自分自身をデザインしていく自由と責任があることをモデルとして提起しました。

 またサルトルは実存主義において、未来に向かって現在の自己を抜けでて自覚的に自己を創造していくことをもとめ、さらにそれが社会や世界に対して、そして人類の未来に対して責任を負うアンガージュマン、社会参画を唱えました。

セリーヌの実存主義的文学

 セリーヌの文学作品は、そのようなアンガージュマンと実存主義の世界といえます。なぜならばセリーヌの文学作品は自己の伝記的バックグラウンドを背景に、対自存在としての作家が現実社会、世界へのコミットメントを果たす中で紡がれていく表現だからです。

 本作もセリーヌの自伝的な内容となっています。

セリーヌの亡命

 セリーヌは反ユダヤ的な評論をいくつも書き、44年6月に連合軍がノルマンディーに上陸するとフランスを脱出し、デンマークに亡命しました。本作はその時のことを描きます。

 亡命していた時期の生活を虚実交えて描いた『城から城』、『北』、『リゴドン』(「亡命三部作」「戦争三部作」「ドイツ三部作」「後期三部作」)はセリーヌの代表作です。

物語世界

あらすじ

 パリ近郊のムードンで、セリーヌは戦争の旅の物語を完成させる小説の執筆に取り組んでいます。そしてセリーヌは、第二次世界大戦が終わる数カ月前の 1944 年に、デンマークを目指してドイツを旅したことを語ります。

 前作の小説「北」は、ドイツの首都の北にあるツォルンホフ城に滞在しているセリーヌとその家族が、列車でロストックへ旅行する許可を得たときに中断されました。デトゥーシュ(セリーヌの本名)は妻のリリとともに去り、猫のベベールを友人のラ・ヴィーグ(映画俳優のロベール・ル・ヴィガン)に預けます。

 当局は彼らを武装兵士2名に護衛させました。バルト海のロストック港で、デトゥーシュはコペンハーゲン行きのフェリーの出港に立ち会うものの、それに乗ることができません。南に向かう列車に戻され、ラ・ヴィーグも絨毯爆撃から逃げてきた多くの難民とともに猫と一緒になんとか乗車します。デンマーク国境が閉ざされているため、デトゥーシュはバイエルン州のジークマリンゲンに行くことに同意します。そこにはフランスの協力者が集まっています。

 ライプツィヒを過ぎた直後、車列は爆撃を受け、トンネルに隠れます。ほぼ全員の乗客が下車しますが、指揮官は3人に列車に留まるよう助言し、列車はやがて出発します。その後、別の電車に乗ってウルムまで行きます。

 1944年7月20日のヒトラー攻撃の失敗により自殺に追い込まれたエルヴィン・ロンメル元帥の厳粛な葬儀が行われている間に、一行はウルムに到着します。

 デトゥーシュ、リリ、ベーベールはなんとかジークマリンゲンに到着します。ここでラ・ヴィーグは彼らから離れることを決意し、南にイタリアに向かうという士官の提案を受け入れます。デトゥーシュ夫妻は再び列車で北へ向かいます。

 彼らは幸運にもオッドドルト駅の爆撃から逃れました。爆撃はドイツ空軍が、ドイツ軍の進軍に直面して東から避難してきた何百人もの難民の輸送と食事の重荷から解放されるために実行したものでした。

 ハノーバー南駅に到着した彼らは、北駅からハンブルク行きの列車に乗りたかったため、激しい爆撃にさらされた街を横断することを余儀なくされます。至近距離で爆発した爆弾がセリーヌの頭にレンガを吹き飛ばし、車列に何とか乗り込んだ後も痛みが残ります。

 北行きの列車には、ヴロツワフから来た障害児のグループを連れた女性もいました。女性はセリーヌと彼の妻に、もう耐えられないので子供たちの世話をしてほしいと懇願します。その後、夫婦は自ら安全な場所まで案内することになり、キールに到着すると、戦争の脅威にさらされているすべての同胞を祖国に連れ戻すためにスウェーデン赤十字社が編成した列車を見つけることができました。

 セリーヌは子供たちを書類を紛失したスウェーデン人だと偽り、責任者は彼を信じたふりをして子供たちを乗せます。医師とその妻も入院して食事を与えられ、なんとかスウェーデンの列車で国境を越えることができました。

 彼らはコペンハーゲンに到着し、そこで作家はデンマークの銀行に預けられた印税600万フランを手に入れたいと考えています。

参考文献

・Damian Catani ”Louis-Ferdinand Céline: Journeys to the Extreme”

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