始めに
ドストエフスキー『貧しき人々』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
ゴーゴリからバルザック風のリアリズムへ
ドストエフスキーはキャリアの初期には特に初期から中期のゴーゴリ(「鼻」「外套」)の影響が強く、本作『貧しき人々』も書簡体小説で、繊細かつ端正なデザインですが、次第に後期ゴーゴリ(『死せる魂』)やバルザック(『従妹ベット』『ゴリオ爺さん』)のリアリズムから影響されつつ、独自のバロック的な、アンバランスなリアリズム文学のスタイルを確立していきます。
自意識とを描くリアリズム
本作においてはマカールの心理をリアリスティックに展開していきます。
ドストエフスキーは『罪と罰』では、理想と承認欲求と孤独を拗らせ、自己の存在価値を確かめるために無意味な殺人に走るラスコリニコフを描きました。『悪霊』では実践に根ざさない理想主義がカルト的なコミュニティを形成し、破滅的な顛末を辿るまでが描かれました。
本作ではお人好しで臆病で貧乏な小役人マカールの、無垢な少女への執着が描かれます。
マカールの愛を描く艶笑コメディ
マカールは、遠縁にあたる孤児の少女ワルワーラの不幸に同情して、あれこれと助力します。自分の衣服を売ったり、給料を前借りしてまで懸命に尽くすものの、最後は彼女はブイコフの元へ行ってしまいます。
無垢な少女への執着を描く艶笑コメディとしてのデザインは『地下室の手記』へと継承されます。
また報われない片思いを描く点で『白夜』と似たプロットです。
物語世界
あらすじ
初老の小役人マカール=ジェーヴシキンと少女ワーレンカとの間で往復書簡が交わされます。
ワーレンカの父親が事業に失敗した後病気で死んだ事、く債権者が押し掛けて家や土地も家具も差し押さえたこと、彼女がポクロフスキーという元大学生と交流し、亡くなるまで世話をしたことなどが綴られます。
ゴルシーコフ家の赤ん坊が死んだこと、マルコフに関すること、マカールの友人のゴルシーコフが業務上横領で懲戒免職となるものの、裁判で無罪放免となったことなども綴られます。
やり取りの中でマカールはワーレンカに愛情を伝えるものの、ワルワーラはジェーヴシキンと別れて地主のブイコフのもとに行ってしまいます。
参考文献
・桑野隆『バフチン』
・トロワイヤ『ドストエフスキー伝』




コメント