始めに
ワイルド『ウィンダミア卿夫人の扇』解説あらすじを書いていきます。
語りの構造、背景知識
古典主義
ダブリン大学トリニティ・カレッジ、次にオックスフォード大学マグダレン・カレッジで学び、古典を学んだワイルドでした。
ワイルドは、ウォルター・ペイターとジョン・ラスキンが中心となる、ギリシア・ローマ文学やルネサンス芸術に着目する古典主義的ムーブメントから、多大な影響を受けました。
本作もクラシックなスタイルの戯曲作品です。
英国ルネサンス演劇
『真面目が肝心』『ウィンダミア卿夫人の扇』『理想の夫』『つまらぬ女』で四大喜劇と呼ばれています。
本作はシェイクスピアに代表される英国ルネサンス演劇的な、クラシックなスタイルの艶笑喜劇になっていて、すれ違いと誤解、出生の謎が引き起こす物語が展開されます。
本作は夫の不倫を疑っているウィンダミア卿夫人を中心にしている物語です。不倫相手だと疑われている女性、アーリン夫人は20年前に家族を捨てたレディ・ウィンダミアの母で、自身のスキャンダルをネタにしてアーリン夫人はウィンダミア卿を脅迫していたのでした。
一応アーリン夫人自身もそれなりにウィンダミア卿夫人に愛情はあるようで、またタイトルにもなっているウィンダミア卿夫人の扇から起こりかけた醜聞をアーリン夫人がかばってげたことから、ウィンダミア卿夫人にもアーリン夫人への負い目ができてしまいます。結局ウィンダミア卿はアーリン夫人の正体という秘密を、ウィンダミア卿夫人はアーリン夫人が庇ってくれようとしたスキャンダルの一件の秘密を、それぞれ抱えたまま、危ないバランスで辛くも絆が修復されます。
物語世界
あらすじ
第一幕
ウィンダミア卿夫人は自分の誕生日の舞踏会を準備していました。そこへお茶の時間に友人のダーリントン卿が訪れ、夫からもらった新しい扇を見せます。
ベリック公爵夫人がウィンダミア卿夫人のもとに立ち寄り、ダーリントン卿はまもなく立ち去ります。ベリック公爵夫人は、ウィンダミア卿夫人の夫であるウィンダミア卿が、アーリン夫人という他の女性の元を何度も訪ねており、彼がウィンダミア卿夫人を裏切るかもしれないこと、アーリン夫人に大金をあげていることを伝えます。
公爵夫人が発ったあと、ウィンダミア卿夫人は夫の預金通帳を確認します。やがて封がされた通帳を見つけ、彼女はこれをこじ開け、多額の金がアーリン夫人に送金された記録を目にします。
ちょうどウィンダミア卿が入ってきます。ウィンダミア卿はアーリン夫人と取引をしたものの、妻を裏切るようなことはしていないと言います。彼はアーリン夫人を社交界に復帰できるよう助けるため、今晩の舞踏会の招待状を送るようウィンダミア卿夫人に求めます。ウィンダミア卿夫人がこれを拒んだため、彼は自分自身で招待状を書きます。
第二幕
ウィンダミア卿夫人の舞踏会が行われているウィンダミア卿邸宅の客間。
ウィンダミア卿夫人の友人であるオーガスタス・ロートン卿(タッピ―)は、惚れているアーリン夫人について尋ねるために、ウィンダミア卿をわきへ連れて行きます。そこでウィンダミア卿は彼女との関係に何もやましいことはないことと、アーリン夫人がこの舞踏会に出席することを明らかにします。
ウィンダミア卿夫人はダーリントン卿と2人だけで、アーリン夫人の出席について話します。ここでダーリントン卿は彼女に愛の告白をします。彼女はこのときは彼の要求を受け入れず、ダーリントン卿は傷つき、彼女の元を立ち去ります。
その後、ウィンダミア卿夫人は初めは気が進まなかったにもかかわらず、ダーリントン卿のために今すぐに家を出ようと決意し、その旨をウィンダミア卿に向けて手紙に書き残します。この手紙をアーリン夫人が見つけて、ウィンダミア卿夫人が行ってしまったことを知り心配し、実は彼女がウィンダミア卿夫人の母親であり、20年前に彼女自身も似た過ちをおかしたことが明らかになります。
第三幕
ウィンダミア卿夫人は一人でダーリントン卿の部屋にいます。ここでアーリン夫人が登場し、アーリン夫人は夫の元に戻るよう懸命に説得するものの、ウィンダミア卿夫人はこれもアーリン夫人とウィンダミア卿の陰謀だろうと確信し、聞こうとしません。しかしアーリン夫人が、ウィンダミア卿夫人の小さな子供のためにも戻ってほしいと懇願したことで説得に成功します。
彼女たちが部屋を出ようとしたその時、ダーリントン卿とその友人らが入ってくる音が聞こえ、とっさに2人は隠れます。ウィンダミア卿が夫人たちの隠れている場所を発見しようとしていた瞬間、アーリン夫人がウィンダミア卿夫人の身代わりとなって姿を現します。その場にいた男性たちは衝撃を受け、その間にウィンダミア卿夫人は立ち去ります。
第四幕
翌日、ウィンダミア卿は夫人に、最近の出来事を忘れるために休暇をとろうか話します。ウィンダミア卿夫人は彼を疑っていたことや舞踏会での振る舞いを謝り、ウィンダミア卿はアーリン夫人とはかかわらないように警告し、アーリン夫人への軽蔑の言葉を述べます。
アーリン夫人がウィンダミア卿夫人の扇を返すためにやってきます。ウィンダミア卿は会わないよう求めるものの、ウィンダミア卿夫人はアーリン夫人と会うのをやめようとしません。アーリン夫人は入ってくると、自分は海外にいくが、ウィンダミア卿夫人と彼女の子供の写真がほしいと伝えます。
アーリン夫人はウィンダミア卿夫人を産んだ少しあとに、愛人の元へ行くため夫の元を去るものの愛人に捨てられ、悪評のうちに孤立しました。彼女はアーリン夫人という偽名を使い、そして最近元の生活と地位を取り戻すために、ウィンダミア卿夫人が亡くなったと思っていた母親が実は生きており、アーリン夫人こそがウィンダミア卿夫人の恥ずべき親であるという真実を世間にばらすとウィンダミア卿を脅していたのでした。義理の息子であるウィンダミア卿は、すぐに出来事を妻に伝えなかったことを後悔し、今すぐ妻に真実を伝えようとします。しかしアーリン夫人はそれを許さず、もし話したら本当のことをあちこちに言い触らすと脅します。
ウィンダミア卿夫人は、写真を持って戻ると、ウィンダミア卿にアーリン夫人の馬車が戻っているか確認するよう頼みます。ウィンダミア卿夫人はアーリン夫人に対して恩義があるため、アーリン夫人はその恩ゆえに昨晩の出来事をウィンダミア卿には話さないでほしいと求めます。ウィンダミア卿夫人はこれに従い、秘密を守ると誓います。
ウィンダミア卿が戻ったあと、オーガスタス卿が登場します。オーガスタス卿は、アーリン夫人に車までの付き添いを頼まれます。彼はすぐにウィンダミア卿の元へ戻り、アーリン夫人が昨晩のことを満足のいくようにすべて説明してくれて、彼女と結婚しイギリスから離れたところで暮らすと告げます。
ウィンダミア卿とウィンダミア卿夫人の結婚生活は元に戻り、ウィンダミア卿もウィンダミア卿夫人も互いの秘密は守りました。
参考文献
・宮崎かすみ『オスカー・ワイルド – 「犯罪者」にして芸術家』




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