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ロブ=グリエ『嫉妬』解説あらすじ

ら行の作家
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はじめに

ロブ=グリエ『嫉妬』解説あらすじを書いていきます。

語りの構造、背景知識

等質物語世界の語り

 植民地アフリカのバナナ園を舞台に、妻と隣のバナナ園主との情交を疑う夫を語り手としています。この夫の存在は明示されていないので、読者は解釈によってそれを知るしかありません。「意識の流れ」を駆使した一人称視点のリアリズムが展開されていきます。このあたりは『失われた時を求めて』などと共通です。

 またそれによって、ジョイス『ユリシーズ』のように三角関係を描きます。

モダニズムにおける意識の流れ

 モダニズム文学に典型的な手法が意識の流れです。等質物語世界の語り手を複数導入する手法はH=ジェイムズ『ねじの回転』、コンラッド『闇の奥』など、モダニズムの先駆者の作品に見えますが、ジョイス『ユリシーズ』、フォークナー『響きと怒り』、ウルフ『ダロウェイ夫人』などに見える意識の流れの手法は、それに現象学、精神分析などの心理学、社会心理学、プラグマティズム的な知見を元にラディカルに押し進めたものでした。

 本作でも同様に意識の流れの手法が展開されていますが、印象として特に近いのは川端康成の諸作、特に『雪国』『みづうみ』(両者は異質物語世界の語り)などの、意識の一人称的な認識の不確かさを生かした心理劇です。

意識とは何か

 人間の「意識」とは、そもそもなんでしょうか。現代の心の哲学では、意識や心というものの機能主義的、道具的定義がいろいろに考えられており、大まかに言ってそれは複数のモジュールの計算、表象の操作を統合し、シュミレーションから推論を立て環境に適応的な行動変容を促すツールであるとの見通しが立てられています。そこではインプットされたさまざまな表象を操作し、過去にインプットされた表象との関連性が発見されたり、環境の構造化にあたって認識が修正されたりしていきます。

 本作における意識の流れの手法にも、そのような意識の特性が伺えます。語りの主体は知覚から得た情報からマインドワンダリングを働かせ、主観的なタイムトラベルの中でさまざまな過去の事実の表象を統合しつつ、時間軸の中で状況を構造化、そのモデルを絶えず改訂していきます。妻の不貞を疑い観察から推論を働かせつつ、それを絶えず改訂していくプロセスがここで展開されています。

 加えて、読者の側も意識の機能を駆使して、テクストのなかの断片的な表象から、登場人物の心理や関係性を解釈していくことが要請されます。こうした構造はハメット『マルタの鷹』、川端『雪国』を連想します。

アンチロマン

 ヌーヴォーロマンはアンチロマンなどと呼ばれ、ロブグリエ『新しい小説のために』も、現象学的、プラグマティックな発想の元、小説におけるリアリズムを構想しています。

 ロブグリエが展開しようとしたのは、つまるところ特定の因果に物語世界内の事実が還元されることに対する拒絶と言えると思います。

 例えばしばしばフィクションではAという事実が明らかになったとしてその原因/結果がBだった、というプロットの因果的連なりがデザインされ、それが美的な経験、感動を生みます。ロブグリエは本作でAという事実の観察からBという帰結や原因へと解釈、還元することを許さず、Bという因果への推論が絶えず修正、改訂されたりC,Dという別の候補が推論されたりといったことが時間軸の中で展開されていく、主観的な認識プロセスを美学的再現することを構想しようとしていると評価しています。

 このような記述プロセスを歴史文学において実践したのがビネ『HHhH』といえます。

物語世界

あらすじ

 妻のAを嫉妬深い語り手が監視します。彼は、小説のもう一人の男性キャラクターであるフランクという男との不貞を疑っています。

 プロットは フランクと Aが町へ旅行する前の時間、旅行自体に対応する時間、そして Aが戻ってから小説の終わりまでの時間の3つの時間を追いかけます。

参考文献

・戸田山和久『哲学入門』(筑摩書房.2014)『恐怖の哲学 ホラーから人間を読む』(NHK出版.2016)

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