はじめに
安岡章太郎『大世紀末サーカス』解説あらすじを書いていきます。
語りの構造、背景知識
等質物語世界の語り手
本作品は作者の分身のような等質物語世界の語り手が導入されています。似たデザインを持つ作品には後藤明生『吉野太夫』、谷崎潤一郎『吉野葛』『少将滋幹の母』、ローラン=ビネ『HHhH (プラハ、1942年)』などが見受けられます。いずれも一人称的な視点を生かした歴史記述が展開されていきます。
特に谷崎潤一郎『少将滋幹の母』と重なるところは大きく、史料を縦横に読み解いていきます。
アナール学派的歴史記述、モダニズム文学
フレイザー『金枝篇』がT=S=エリオット『荒地』に導入されて以降、作家は語りの手法に民俗学、社会学的アプローチをも積極的に取り入れるようになっていきました。本作でも用いられているアナール学派的な、中央の事件史に抗する心性史としての歴史記述のアプローチは、ポストコロニアルな主題を孕みつつ、ガルシア=マルケス『族長の秋』『百年の孤独』などラテンアメリカ文学などへと継承されていきました。
旧来的な中央の事件史としての歴史記述においては、歴史の構造的理解に欠き、そこから捨象される要素が大きすぎましたが、アナール学派は特定のトポスに焦点を当てたり、ミクロなアクターの視点に注目したりして、歴史の構造的把握と、歴史を構成するアクターの単位の修正を図りました。本作も同様に、等質物語世界の語り手の巡らせる推論、マインドワンダリングを通じて、高野広八のサーカス一座に焦点を当てつつ、同時代の歴史を掘り起こしていきます。
高野広八のサーカス一座
高野広八は実在の人物です。幕末維新の動乱の世、慶応2年10月から明治2年2月まで、高野広八以下18人の曲芸師たちは米欧各地を巡業しました。その日記はオンタイムの風俗、生活を知る資料となっており、本作でも引用されていきます。
アメリカ大統領の謁見を受け、パリでは万国博の最中に公演し満員。ロンドンでは女王までもが見物に来たほか、スペインでは、革命にも遭遇します。このように歴史の動乱を間近で経験したのでした。
物語世界
あらすじ
幕末維新の動乱の世、慶応2年10月から明治2年2月まで、高野広八以下18人の曲芸師たちは米欧各地を巡業しました。
アメリカ大統領の謁見を受け、パリでは万国博の最中に公演し満員。ロンドンでは女王までもが見物に来たほか、スペインでは、革命にも遭遇します。
また芸人らしく行く先々で女郎買いにも走り、同時代の風俗も記録されています。




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