始めに
キャロル『鏡の国のアリス』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
シェイクスピアの影響
ルイス=キャロルはシェイクスピアからの影響が顕著です。
イギリスルネサンス演劇を特徴づけるアルゴリズムなどによる言語的遊戯はキャロルも多く利用しました。
シェイクスピアには『テンペスト』『夏の夜の夢』など、幻想文学的作品がありますが、『テンペスト』はキャロルも好み、そのナンセンスやドタバタ喜劇から刺激されました。
象徴主義とのつながり
『不思議の国のアリス』で成功する前に、キャロルはラファエル前派の社交サークルに入会ります。ドジソンは1857年に美術評論家ジョン=ラスキンと知り合い、親しくなり、ダンテ=ゲイブリエル=ロセッティと家族ぐるみで交際し、ウィリアム=ホルマン=ハント、ジョン=エヴァレット=ミレー、アーサー=ヒューズといった画家達と知り合います。
幻想作家のジョージ=マクドナルドとも知り合い、『アリス』の原稿を出版社に送る決心をしたのは、マクドナルドの娘の勧めによるものでした。
こうした作家の刺激から、キャロルは自分の古典主義的、象徴主義的スタイルを確立しました。
モデルと成立
1862年7月4日、キャロルは、親しくしていたリデル家 の三姉妹、ロリーナ、アリス、イーディス、それにトリニティ=カレッジの同僚ロビンスン=ダックワースとともに、アイシス川をボートで遡るピクニックをします。
その間キャロルは少女たち、特にアリスのために、「アリス」という名の少女の冒険物語を即興で語り、アリスはその日の話を気に入り、自分のために物語を書き留めてほしいと頼みます。
こうして『地下の国のアリス』が1863年2月10日に完成し、アリスらへの私的なプレゼントとします。
その後、ジョージ=マクドナルド夫妻の息子グレヴィルの励ましで出版することを決意し、そのとき『ふしぎの国のアリス』とタイトルを改めています。
物語世界
あらすじ
ガイ=フォークス=ナイトの前日、暖炉の前で糸を繰っていたアリスは、毛糸玉を解いてしまった子猫のキティをしかり、そのまま子猫を相手に空想します。
その延長で鏡の中の世界を空想していると、アリスは鏡を通り抜けて鏡の世界に入ります。鏡の中の暖炉の前では、チェスの駒が意思を持って動き回りますが、はじめ彼らにはアリスの姿が見えず、アリスは彼らを持ち上げたりして驚かせます。アリスは鏡文字で書かれた本の中の詩(ジャバウォックの詩)を鏡に映すことで読みとり、それから戸外に出ます。
アリスは丘に上ろうとするものの、道が逆らい何度もアリスを家の前に戻します。アリスは喋る花々が植えられた花壇に行き当たり、オニユリやバラなどと会話します。そこにアリスくらいの背丈になった赤の女王が通りかかり、アリスはあえて逆方向に進んで女王に追いつきます。丘に着いたアリスは小川と垣根でチェス盤のように区切られた景色をみて、この異世界全体がチェスゲームになっていることを知り、赤の女王の助言で自分も駒として参加しようとします。
白のポーンとなったアリスは、最初の一手で2枡進むために知らないうちに列車に乗りこみ、紙を着た紳士、ヤギ、カブトムシ、ひっきりなしに駄洒落を言う声(蚊)と相席します。
また知らないうちに列車の外に出たアリスは、巨大な蚊と二人きりになり、蚊から様々な鏡の国の虫を紹介されます。その後一人になったアリスは、入ると物の名前がわからなくなる「名無しの森」に入り、そこで仔鹿と道連れになるものの、森を出た途端にアリスが「人間」だと思い出した仔鹿は逃げます。
再び一人になったアリスは、次の章でマザー=グースのキャラクターであるトゥイードルダムとトゥイードルディーに出会います。彼らはアリスに眠り込んでいる赤の王を見せ、アリスは王の夢の中の人物に過ぎないと教えたあと、唄の通りに壊れたがらがらをめぐって決闘の準備を始め、唄のとおりに、飛来してきた巨大な鴉を恐れて逃げます。
そこに、大鴉のはばたきで女王のショールが飛ばされてきます。アリスは白の女王の身だしなみを整え、彼女から、自分は時間を逆方向に生きていて未来のことを記憶していると聞かされます。
二人がいっしょに小川を越えると、不意に女王はヒツジになり、あたりは雑貨店の店内になります。その店では、アリスが棚にあるものを見ると決まってそこだけ空っぽになります。
アリスはいつの間にかヒツジを乗せてボートを漕いでいる自分に気づき、ヒツジに言われるままにボートを漕いだり、花を摘んだりしたあと、またもとの店内にもどります。アリスは卵を買うことにし、逃げる卵を追って知らないうちに戸外に出ます。
その卵は塀の上に座り、マザー=グースのキャラクターであるハンプティ=ダンプティに変わります。彼はアリスに自慢話をし、自分は言葉に好きな意味をこめて使うことができると話します。アリスは「ジャバウォックの詩」を彼に解説してもらうものの、彼のもとを去ると、その背後で大きな落下音がします。
落下音が起こった途端、森の奥から白の王の大軍勢が現われます。アリスと白の王は、使者の一人のヘイヤからの知らせを受けてもう一人の使者のハッタが待つ町に向かい、そこで王冠を争うライオンとユニコーンを目にします。ライオンとユニコーンはマザー=グースの唄の通りに町中を追いかけまわってからプラムケーキを注文し、アリスがそれを切る役目を向けられるものの、あたりに大きな太鼓の音がしはじめ、アリスはその音から逃れて次の桝目に出ます。
音がやむとアリスのもとに赤の騎士と白の騎士がやってきて、アリスをめぐって決闘します。勝った白の騎士はアリスを次の桝目に送り届けようと申し出て、上下逆さの小箱や円錐形の兜といった自身の発明を披露しながら森のはずれに案内し、そこで長い歌を贈ってアリスと別れます。
次の桝に入ったアリスは、自分の頭に王冠が載っているのに気が付き、自分が女王になれたことを知ります。いつの間にか自分の両側に赤の女王と白の女王が座っていて、二人は女王の資格を問うために、「犬から骨を引くと答えは何か」などの質問をします。
二人が疲れて眠ると不意にアーチが現われ、アリスがくぐるとアリスのためのディナーパーティが始まります。運ばれてきた料理はどれも紹介が済むとそのまま下げられ、アリスはなにも食べられません。アリスがスピーチを始めようとすると、食器や女王たちが変形し、あたりは大混乱します。
怒るアリスは、小さくなった赤の女王を捕まえます。そして女王をゆすぶると、その姿は不意に子猫のキティになります。
アリスはどうやら夢を見ていたらしいと悟り、子猫たちにあれこれ問いかけたあと、この夢は自分の夢だったのか、そ赤の王の夢だったのかと自問するのでした。
参考文献
・ステファニー=ラヴェット=ストッフル (著), 笠井 勝子 (監修, 読み手), 高橋 宏 (翻訳)『「不思議の国のアリス」の誕生:ルイス・キャロルとその生涯 』




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