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バーネット『秘密の花園』解説あらすじ

バーネット
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始めに

 バーネット『秘密の花園』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

バーネットの作家性

​ バーネットにとって、ディケンズは最も大きな文学的導き手の一人でした。ディケンズが得意とした貧困の中にいる高潔な子供や過酷な社会環境というテーマは、『小公子』や『小公女』の根底に流れています。読者の感情を揺さぶり、道徳的な浄化を促す物語構成は、ディケンズのスタイルを継承しています。


 ​バーネットは少女時代、ブロンテの『ジェーン・エア』を愛読していました。特に『秘密の花園』に見られる、古びた屋敷の不気味さや、主人公の強い自意識、孤立した状況から自己を確立していくプロセスには、ブロンテの影響が見て取れます。


​ ​彼女は幼少期からスコットの歴史ロマンを耽読していました。『小公子』のセドリックが持つ、無意識の貴族的な高潔さや礼節の描写には、スコットが描いた騎士道物語の理想像が投影されています。


​ バーネットは『アンクル・トムの小屋』の著者であるストウなどのドメスティック・フィクション(家庭小説)の洗礼を受けました。子供の純粋さが、頑なな大人の心を溶かし、社会を浄化するというプロットは、当時のアメリカ文学で人気だった道徳教育的な物語形式の影響を受けています。

ヒューマニズム

 物語の核は荒れ果てた庭が手入れによって息を吹き返すプロセスと、心を閉ざしていたメアリやコリンが人間性を取り戻すプロセスとのシンクロニシティです。庭を放置された心身のメタファーとして描き、土に触れ、生命の循環に加わることが、いかに個人の内面を再構成するかを強調しています。
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 ​作中でコリンが語る魔法は、超自然的な力というよりも、思考が現実に与える影響を指しています。当時流行していたニューソート(新思考)の影響が見られ、暗い考えが病を作り、明るい意志が健康を呼ぶという、意識による身体制御のテーマが色濃く反映されています。


​ ​メアリもコリンも、親の不在や無関心によって甘やかされながらも愛されないという特異な孤独の中にいました。自然児のようなディコンや、率直な物言いをする小鳥との交流を通じて、彼らは支配する対象ではなく対等な他者を見出します。これは特権階級の子供が社会性を獲得するビルドゥングス・ロマンとしての側面も持っています。


​ ​物語の前半は、100もの閉ざされた部屋、夜中に聞こえる泣き声、霧深いムーアといったゴシック小説的な不気味さに満ちています。その閉ざされた死の空間が、鍵を見つけ、壁を越えることで、陽光あふれる生の空間へと転換される。この空間的・トーン的なダイナミズムも、本作の大きな魅力です。

物語世界

あらすじ

 主人公のメアリ=レノックスは、インドで育てられた、わがままで愛情を知らない少女でした。コレラで両親を亡くした彼女は、イギリスのヨークシャーにある伯父アーチボルド=クレイヴンの屋敷ミセルスウェイトマナーに引き取られます。​そこは100もの密閉された部屋があり、夜な夜な不気味な泣き声が響く、まるでゴシック小説のような陰鬱な場所でした。


​ ​退屈を持ったメアリは、広大な屋敷の庭を探索し始めます。そこで彼女は、10年前に伯父の妻が亡くなって以来、入り口が塗り固められ放置された秘密の花園の存在を知ります。コマドリに導かれるように、土の中に埋もれていた庭の鍵を見つけ、メアリは密かにその庭に入り込みます。メアリは野生児のような少年ディコンの助けを借り、枯れ果てたように見える庭を再生させるために、密かに土を耕し始めます。


​ ​屋敷の泣き声の主は、伯父の息子コリンでした。彼は自分も母のように死ぬと思い込み、自室に閉じこもって歩くことも拒んでいました。メアリはコリンを秘密の花園へと連れ出します。 土に触れ、植物の生命力に触れることで、コリンは次第に自分は生きられるという確信を抱くようになります。彼は自らの足で立ち上がり、かつての健康を取り戻していきます。


 旅先で亡き妻の夢を見たアーチボルドが屋敷に戻ると、そこには健康を取り戻し、庭を駆け回る息子の姿がありました。バラの咲き誇る庭で、崩壊していた家族が再び結びつきます。

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