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モーム『二十年後』解説あらすじ

サマセット=モーム
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始めに

 モーム『二十年後』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

モームの作家性

 O=ヘンリーの作品の多くは、ニューヨークを舞台にします。

 オー・ヘンリーとよく比較されるのがモーパッサン、モームで、いずれもどんでん返しの巧みなプロットの光る短編を特徴とします。モーパッサンの作品も庶民の苦悩を描き、どんでん返しの結末を描きますが、社会批判としての色彩はモーパッサンのほうがモームやオー=ヘンリーよりも強い感じです。本作も、そのようなプロットの手腕が光ります。

 ​​アメリカ文学の父としてのトウェインも、彼の文体に大きな影を落としています。誇張法や皮肉、そして市井の人々への温かな眼差しは、トウェインの伝統を継承しています。地元のスラングや日常会話を巧みに取り入れ、物語にリアリティと活力を与える手法に影響が見られます。


​ ​オー=ヘンリーが西部劇的な設定の物語を書く際、先行者であるブレット=ハートの影響は避けられませんでした。特定の土地の空気感を物語の重要な要素にする手法です。荒くれ者や泥棒、賭博師といった社会の周辺に生きる人々の美徳を掘り起こす姿勢は、ハートからの影響が色濃い部分です。


​ ​オー・ヘンリーは少年時代からディケンズを熱心に読んでいました。大都会の雑踏に埋もれた無名の市民たちのドラマを拾い上げる視点は、非常にディケンズ的です。格差や制度の矛盾を鋭く突きつつも、最終的には人間愛を信じる物語のトーンにその影響が感じられます。

友情と責任。再会

 テーマは、個人の友情と社会的な責任のどちらを優先するかというジレンマです。​ジミーは親友との約束を守るために現場へ行きますが、そこで友人が指名手配犯であることを知ります。彼は友人を自分の手で捕まえることはできませんでしたが、警察官としての義務を放棄することもせず、私服警官に逮捕を委ねました。友情を裏切ったようにも見えますが、同時に法を守るという公人としての誠実さを貫いた結果でもあります。


​ ​20年という長い月日が、かつて同じ志を持っていたはずの二人の男を、全く別の道へ歩ませたという残酷な現実を描いています。一方は警察になり、もう一方は法を犯す者になりました。物語の中で20年あれば、人間は善かれ悪しかれ作り変えられるという趣旨のセリフがありますが、環境や選択が人間の本質をどう変貌させるかを示唆しています。


​ ​オー・ヘンリーの代名詞とも言えるどんでん返しが、テーマをより強調しています。ボブは友情を信じて20年ぶりに再会を待ちわびていましたが、その再会の場が自分の逮捕の場となってしまいます。自分が最も信頼していた親友が、自分を追い詰める存在になっていたという構図は、読者に人生の予測不能さを強く印象付けます。

物語世界

あらすじ

 ​舞台は、人通りが絶え冷たい風が吹くニューヨークの夜。一人の警官が巡回していると、暗い店先で一人の男が立っているのを見つけます。​男は警官に対し、不審者ではないことを示すように語り始めます。ここで20年前の約束通りに親友を待っているんです、と。


​ ​男の名前はボブ。20年前、この場所にあったレストランで、親友のジミー=ウェルズと別れの食事をしました。​ボブは大金を稼ぐために西部へ行く決意をし、​ジミーはニューヨークに残り、地道に生きる道を選びます。​二人は20年後の同じ日、同じ時刻に、ここで再会しようと誓い合ったのです。ボブは親友ジミーを世界で最も誠実な男だと信じ、再会のために遠く西部からやってきました。


​ ​警官が去った後、コートの襟を立てた背の高い男が現れます。ジミーのようでした。二人は再会を喜び合い、腕を組んで昔話をするために明るい場所へと歩き出します。


​ ​街灯の光の下に来たとき、ボブは異変に気づきます。「お前はジミーじゃない。20年経っても鼻の形までは変わらないはずだ」と。


 ​その男は、君は10分前に逮捕されているんだ、シカゴから手配書が回っている、と告げます。男は私服警官でした。そして、動揺するボブに一通の手紙を手渡します。「ボブへ。私は約束の場所にちゃんといたんだ。君がマッチを擦ったとき、君の顔がシカゴで指名手配されている男だと気づいた。自分では君を捕まえられなかったので、別の警官を向かわせることにしたよ。ジミーより」とあったのでした。

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