始めに
円地文子『女坂』解説あらすじを書いていきます。
語りの構造、背景知識
谷崎潤一郎の影響
円地は谷崎潤一郎からの影響が顕著です。本作『朱を奪ふもの』(1956年)『傷ある翼』(1960年)『虹と修羅』(1968年)の三部ではなんと、自身が選考員を務める谷崎潤一郎賞を受賞するという怪挙を成し遂げました。
本作も谷崎と同様に古典的な日本文芸や劇作品を参照しつつ、ドラマティックな心理劇を展開していきます。代表作であり、心理劇的な膨らませ方が上手いです。
また、谷崎は新思潮派のテーマとして、バーナード=ショー的な自由主義とフェミニズム的なテーマもみて取れますが、本作も同様の要素が認められます。
倫の悲劇
物語は、明治という自体に抑圧された一人の女性、倫の悲劇を描きます。
二十代後半くらいの倫が、東京に出てきて、夫の妾を探す場面からはじまります。夫の肉欲は、十代半ばの妾たちに向かいます。倫は、心を閉ざし、それによって家族からも疎まれていきます。
家を憎む倫は、最期に死体を海へ捨てるように頼むものの、それは叶わない模様で、一族の墓へと入れられてしまうことが示唆されています。
ただ、家を守るために、能面をつけられて与えられた役割を演じることを強いられた倫の人生は、最後まで主体的な意志を認められることはなかったのでした。
物語世界
あらすじ
二十代後半くらいの倫が、東京に出てきて、夫の妾を探す場面からはじまります。夫は、自由民権運動を弾圧した福島事件で有名な泣く子も黙る鬼県令と言われた人物の懐刀の白川行友です。
夫の肉欲は、十代半ばの妾たちに向かいます。倫は、自分で見つけてきた妾や女中たちを取り仕切り、一方では、未納や踏み倒しが絶えない土地の管理をしています。
倫は、心を固く閉ざすようになります。感情とは、無縁の人生を送ります。周囲の人間は、そんな倫からしだいに離れていきます。
倫の人生は、愛情を失い続ける人生でした。倫は、青年となった孫が、腹違いの妹に、兄弟を越えた愛情を持っていることを見抜きました。倫は、女学校を出るとすぐにその妹を遠くへ嫁がせます。
老齢となった倫は、孫が女中を妊娠させたことの後始末を一人で済ませます。病んでいた倫は、高配の急な坂をゆっくり登ります。
倫は死の床にて、夫の姪の豊子に、夫への伝言を命じます。葬式は無用だから、死体は海の中に捨てるようにいいます。豊子は、倫の言葉を、倫の夫に伝えます。しかし、そんなことはさせないと言われます。
倫の願いはむなしく、立派な葬式を出され、骨は、倫が憎んだ家の墓に入れられると思われます。




コメント