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大岡昇平『武蔵野夫人』解説あらすじ

大岡昇平
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始めに

 大岡昇平『武蔵野夫人』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ロマン主義などの影響

 大岡は傾向としては英米文学とフランス文学からの影響が顕著です。

 特にスタンダールに影響されました。そのダイナミックな描写力は大岡に継承されています。本作も『パルムの僧院』のような戦争文学です。またスタンダール『パルムの僧院』を高く評価したトルストイ『戦争と平和』(大岡も高く評価した作品)のような、文豪と呼ぶにふさわしい筆力が特徴です。

 他にもゲーテ、芥川、漱石などから影響をうけました。ゲーテ的なロマン主義者の筆力と、芥川や漱石にも似た、モラリスト的な主知主義が大岡の特徴です。

 ただここまで褒めてきましたが、筆力はあるものの、似たようなフランス文学をルーツとする三島由紀夫などと比べると構成力はあまり高くなく、そのため「野火」みたいな虚構性の強いものよりも、『俘虜記』『萌野』のような自伝的で虚構性、物語性の低いもののほうが秀でています。

 あと卒論がジッド(『田園交響楽』『狭き門』)でメタな形式的実験に興味があるものの、そういう方面でも優れず、そのベクトルでは石川淳と大差ないです。

ラディゲ的メロドラマ

 本作はラディゲ『ドルジェル伯の舞踏会』のような、フランスの心理小説の衣鉢を継ぐメロドラマです。

 富士山の見える武蔵野の「はけ」に建てられた亡父の家に夫の秋山忠雄と住む道子がいて、この家に道子のいとこの大学生である勉が下宿し、やがて二人は強く惹かれあい、三角関係になります。結局、秋山が不貞するなかでも道子と勉は一線を越えずに惹かれ合い、秋山の横暴のなかで道子は心を病んで自殺します。最後まで勉の名を呼び、秋山は道子への振る舞いをようやく詫びます。

 このように微妙な昼ドラみたいなストーリーですが、全体的にはテンポも構成も良くなくて、似たような路線の三島の中間小説ほど良くないです。中上の『軽蔑』や丸谷才一の『女ざかり』と比べると、ちょっとマシかもしれません。

物語世界

あらすじ

 富士山の見える武蔵野の「はけ」に建てられた亡父の家に夫の秋山忠雄と住む道子。この家に道子のいとこの大学生である勉が下宿し、やがて二人は強く惹かれあいます。

 秋山は近所に住む大野英治の妻の富子と姦通しようとしていました。仕事で大野が出張中、秋山と富子は河口湖の旅館で密会します。

 同じ頃に、村山貯水池に散歩に出ていた道子と勉はキャスリーン台風に遭い、ホテルで過ごすものの関係は持ちません。

 勉は武蔵野を出て五反田のアパートに転居するものの、道子への思いに苦しみます。大野が事業に失敗し、秋山夫妻を頼るものの、やがて両家の夫婦仲はこじれます。秋山は金銭問題と双方の不貞を理由に道子に離婚を迫り、道子はごまかします。

 秋山は家の権利書を持ち出して富子と家出します。しかし家を売って金をつくる計画はうまくいかず、富子は勉のアパートへ逃れます。

 やむなく帰宅した秋山は睡眠薬を飲んで倒れている道子を発見します。道子は勉の名を呼びながら絶命してしまいます。秋山はこれに、涙を流して詫びるのでした。

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