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サガン『悲しみよこんにちは』解説あらすじ

フランソワ=サガン
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始めに

 サガン『悲しみよこんにちは』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

サガンの作家性

 サガンはカミュ、サルトルの実存主義やプルースト、コクトーなどのモダニズムに影響されました。


​ プルーストの代表作は『失われた時を求めて』ですが、本名フランソワーズ=クアゼだったサガンは、プルーストの作品に登場するサガン公爵夫人から名前を取りました。時間や反ブルジョワ的テーマなどは重なりますが、カポーティ、三島や堀辰雄に似て、スタイルの方ではプルースト的な実験的語りはあまり設定しない傾向にあります。


​​ サガンはまた、コクトーの難解なことを軽やかに表現するスタイルを愛しました。彼女の文章のシンプルさと洗練は、コクトーの美学から引き継がれたものです。本作も心理劇としては特に『恐るべき子供たち』と重なります。


​ サガンの作品に漂う虚無感や不条理(無意味)に対する冷めた視点は、カミュの実存主義の影響が色濃いと言われています。サガンはサルトルの実存主義にも強く惹かれ、後に個人的な親交も結びました。
 

 他にも​スタンダールの心理主義やジュネのモダニズムからも刺激を受けました。

タイトルの意味と心理劇。少女の終わり

 この物語の対立軸は、主人公セシルと父レイモンの奔放なライフスタイル、そしてそこに現れたアンヌが象徴する知性と道徳的秩序の衝突です。このあたりはやはり、コクトー『恐るべき子どもたち』と似ています。


 ​セシルと父は刹那的で快楽主義的で、道徳よりもその時が楽しいかを優先する自由な関係でした。​アンヌは規律、知性、大人の節度を象徴し、セシルの怠惰な生活に「教育」という名の秩序を持ち込もうとする存在です。セシルにとってアンヌは、自分たちの自由な楽園を壊す「侵入者」であり、この対立が悲劇の引き金となります。

 ​セシルは自分の自由を守るために、緻密で残酷な計画を立ててアンヌを追い詰めます。 父を誰にも渡したくないという独占欲と、自分の生活環境を維持したいというエゴからですが、自分の計画が相手の心をどれほど深く傷つけ、取り返しのつかない結果(死)を招くか、彼女は最後まで現実味を持って理解していませんでした。


​ ​タイトルの「悲しみよこんにちは」は、詩人ポール=エリュアールの詩の一節から取られています。物語の結末で、セシルはアンヌの死を経て、それまで知っていた「一過性の落ち込み」とは違う、一生消えることのない沈殿物のような虚無感を知ります。自由奔放に振る舞っていた少女が、自らの手で取り返しのつかない過去を作り出し、それによって一生付き合っていくことになる「悲しみ」と握手するのでした。

物語世界

あらすじ

 17歳のセシルは、父レイモンドと、彼の愛人で若く、ファッショナブルなエルザと共に、コート=ダジュールの別荘で夏を過ごします。

 レイモンドは魅力的で、世慣れしているものの、モラルのない男です。彼はオスカー=ワイルドの「罪とは、現代社会に残る唯一の鮮やかな色彩である」という言葉を引用し、自身の度重なる浮気を正当化します。セシルは罪こそが人生の基盤となるものだと信じ、彼らの怠惰な生活を特権階級の理想として受け入れます。

 セシルにとってこの生活の利点は、知的な興味を持たない父が、彼女が勉強しようがしまいが気にしないことです。また父が、セシルが社交の場に加わる楽しい存在になるだろうという前提で、自分の興味を追求する自由を与えてくれることです。

 彼らの隣の別荘には、20代の若い男、シリルが住んでおり、セシルは彼と初めての性的関係を持ちますり

 レイモンドが誘っていたアンの到着によって、平和な休暇は打ち砕かれます。レイモンドと同年代で、教養があり、信念を持ち、知的で勤勉なアンは、亡き妻の友人でもあります。セシルにとって、アンはいわば名付け親のような存在です。

 3人の女性は皆、レイモンドの関心を惹きつけようとします。人見知りで謎めいたアンはすぐにレイモンドの恋人となり、翌朝婚約を発表します。エルサは家を出て行き、アンはセシルの子育てを引き受けようとします。

 レイモンドは多くの口論でアンの味方をするようになり、セシルを擁護しなくなります。アンはセシルに、シリルとの交際をやめて勉強に戻るように告げます。セシルは、父の愛人として甘やかされてきた生活が脅かされることに恐怖を覚えます。レイモンドの関心はアンに集中するようになります。彼女は結婚を阻止する計画を練るが、同時に、自分の計画に曖昧な感情を抱いていました。

 レイモンドを嫉妬させるため、セシルはエルザとシリルがカップルのふりをして、特定の瞬間に一緒にいるように仕向けます。予想通り、レイモンドは年下のシリルに嫉妬し、エルザへの執着を再開します。

 しかし、セシルはアンの感受性を見誤っていました。森の中でレイモンドとエルザが一緒にいるのを目撃し、レイモンドがスーツについた松葉を払い落とそうとしているのを見たアンは、涙を流しながら車で走り去り、車は崖から転落します。

 セシルと父親は、アンが夏を邪魔する前の空虚で退屈な生活に戻り、アンが自分たちの人生に与えた影響について考えます。セシルは、自分の策略がアンの死につながったことを自覚しながら生き、共に過ごした夏を懐かしみます。

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