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小林多喜二『蟹工船』解説あらすじ

小林多喜二
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始めに

 小林多喜二『蟹工船』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

志賀直哉のヒューマニズムからプロレタリア文学へ

 小林多喜二はプロレタリア文学の作家ですが、まず志賀直哉の影響が顕著です。

 志賀は白樺派を代表する作家で、このグループではトルストイの自由主義、リベラリズム、ヒューマニズムが共有されました。志賀直哉自身も内村鑑三からの感化を受けたりしつつ、足尾銅山鉱毒問題で資本家の側の不正義を追及しようとしたり、現実の社会問題に関心をもっていたヒューマニストでした。

 多喜二にもこのようなヒューマニズムが継承され、プロレタリアートを搾取する資本主義や資本家の不正義を本作において描きます。

プロレタリア文学

 プロレタリア文学は、プロレタリアートの解放を掲げ、その思想や感情を描くもので、世界各地における社会主義革命運動の展開に伴って1910〜1930年代前後に展開されました。大正末期の「種蒔く人」を出発点とし、度々の組織の分裂、統合を経て、「文戦」派と「戦旗」派の二陣営が中心になるものの、政治的弾圧を受けて1934年までには壊滅してしまいます。多喜二の虐殺も、こうしたプロレタリア文学の挫折を象徴する出来事です。

 プロレタリアのための文学や社会主義のテーマの文学は、その後は戦後まで途絶していきます。

語りの構造

 本作は異質物語世界の、いわゆる三人称の語り手が設定されていますが、特徴的なのは焦点化のスタイルで、本作では一元的な焦点化人物を設定せず、名前のない蟹工船の労働者の群れが主人公になっていて、その様子を物語は描写しています。

蟹工船

 蟹工船とは、オホーツク海のカムチャツカ半島沖海域での北洋漁業で使用される、漁獲物の加工設備を備えた大型船です。搭載した小型船でたらば蟹をとらえ、母船で蟹を缶詰にします。その母船の一隻である「博光丸」が舞台です。

 蟹工船は工船であるために航海法は適用されず、老朽船を改造したものでした。工場でないため、労働法規も適用されません。

 法規の抜け穴で外部から遮断された蟹工船には東北一円の貧困層の出稼ぎ労働者が集まり、資本家に虐待をうけていました。政府もこれを黙認し、その悲惨な労働環境は問題でした。

物語世界

あらすじ

 蟹工船の「博光丸」が舞台です。

 残虐な監督浅川は労働者たちを奴隷のように扱います。労働者らは地獄のような労働環境の中、次々と倒れていきます。

 ある時転覆した蟹工船をロシア人が救出したことから、労働者達は外国人に共感を覚え、中国人の通訳も通じてプロレタリアートの尊さが浸透していくものの、船長はそれを「赤化」と警戒します。学生の一人はここに比べれば、ドストエフスキーの「死の家の記録」の流刑場はましだと言います。

 労働者たちは権利に目覚め、指導者のもとストライキ闘争をします。会社側は海軍に無線で鎮圧を要請し、駆逐艦から乗りこんできた水兵にスト指導者らは捕まり、最初のストライキは失敗します。

 しかし労働者たちは再度のストライキに踏み切り、語り手はそれが成功したと伝えます。

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