はじめに
フロベール『サランボー』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
ロマン主義、古典主義、ルネサンス文学の影響
フローベールはロマン主義や古典主義、ルネサンス文学に傾倒しつつも、自身はそこから写実主義を展開したと説明されます。オースティン(『傲慢と偏見』)がリチャードソンの影響から風刺作品を展開したのと似ているでしょうか。
とはいえロマン主義(ゲーテ[『ファウスト』『若きウェルテルの悩み』)]、ユゴー[『レ・ミゼラブル』]、シェイクスピア)、古典主義(ヴォルテール)、ルネサンス文学(ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル』)のリアリズム描写や主題はフローベールに継承されていますし、それが公共圏へのコミットメントの中での自己実現を巡る作品であるという点ではそうした作品からの影響が濃厚です。
本作は歴史劇でロマン主義的なテイストが強く、特にロマン主義のルーツとなったシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』と重なる、異なる政治的勢力の上で引き裂かれる恋人たちの悲恋を描きます。
歴史劇
第一次ポエニ戦争後の古代カルタゴを舞台にしています。「サランボー」はカルタゴの将軍ハミルカル=バルカ(ハンニバルの父親)の娘という設定の女性で、フロベールの創作です。
第一次ポエニ戦争後、カルタゴは傭兵軍との約束を果たせず、攻撃を受けます(「傭兵の乱」)。そんななかでのカルタゴの将軍の娘サランボーと傭兵のリーダーのマトスの悲劇的な恋愛を描きます。
巫女であったサランボーは、戦争後に起こった傭兵の乱において、女神タニットを祀る神殿から奪われた聖布を取り返すよう命じられ、反乱軍の指導者マトスの天幕を訪れます。サランボーに恋するマトスと一夜をともにし、彼女もマトスを愛するようになり、反乱の鎮圧後に儀式の生贄として拷問にあうマトスの姿を見てサランボーは死にます。
物語世界
あらすじ
ローマに対するエリックスの戦いの記念日を祝うためのパーティーが開かれます。さまざまな部族からの野蛮な傭兵たちが、カルタゴの将軍ハミルカル=バルカの庭園で行われる祝宴に参加します。しかし、主人の不在と酒、そしてポエニの都市から受けた仕打ちから興奮した戦士たちは、エルガストゥーレに閉じ込められていた奴隷を解放します。
捕虜の中には、最近戦闘中にカルタゴ軍に捕らえられたスペンディウスという名前の者もいました。また傭兵たちはハミルカルの財産を略奪しようとします。
やがてハミルカルの娘サランボが現れます。タニト寺院の宦官司祭たちに囲まれた彼女は、略奪行為を叱り、その後、彼らを落ち着かせようと庭園に降り立ちます。
二人の男が彼女を熱心に見つめます。ハミルカルの客人でヌミディアの若い酋長ナルハバスと、リビアの傭兵マトスです。サランボーはマトスに杯を手渡しますが、ガリアの蛮族はこのしぐさを将来の結婚の象徴として解釈します。嫉妬したナルハバスは槍でリビア人の腕を突き刺します。
混乱が起こる中、サランボーは宮殿に姿を消します。スペンディウスはリビア人に対し、力ずくでカルタゴを占領するよう話し、マトスは、それを拒否します。
その後傭兵たちはポエニ都市を去ります。彼らは神聖な都市シッカに向けて出発し、7日後に到着します。野蛮人たちが平原で野営し退屈をしのぐ一方、スペンディウスはマトスがサランボの記憶に囚われ続けていることに気づきます。
ある晩、カルタゴ共和国の商人ハンノが到着します。傭兵たちはついに給料が支払われるものと思いましたが、しかしハンノはカルタゴの財政の劣悪な状態を彼らに納得させようとするばかりでしかもカルタゴ語しか話せないので、これに乗じて、通訳を願い出たスペンディウスの言葉を歪曲して群衆をハンノに敵対させようとします。
やがてザルクサスがバレアレス諸島からの投獄者として到着し、ザルクサスは、傭兵部隊の大部分が出発した直後にカルタゴの住民によって虐殺されたことを報告します。やがて怒りから反乱が勃発し、ハノンは逃走します。
ある月明かりの夜、サランボーが奴隷を連れて宮殿のテラスに現れる。宮殿で孤独に育てられたサランボーは、女神タニトの像を見たいと熱望するが、テラスで彼女と合流したタニトの大神官シャハバリムは、それを拒否します。
シッカからわずか 3 日の旅の後、傭兵軍はカルタゴの前に到着します。
大評議会のメンバーは兵士たちと直接交渉します。傭兵たちを落ち着かせるためにギスコンが彼らのもとに派遣されますが、スペンディウスとザルクサスが扇動して反乱を起こします。暴動の最中にギスコンが姿を消します。
翌日、傭兵たちはカルタゴの復讐を恐れます。スペンディウスはマトスを水道橋に連れて行き、そこから夜に街に入ります。スペンディウスはタニット神殿に行きたいと考えています。マトスは、カルタゴへの侵入に成功したら従うと約束し、彼に同行します。
寺院に向かう途中、スペンディウスはマトスに、タニットのベールである聖布を盗もうとしていることを明かします。マトスは怯えますが、結局スペンディウスに従います。彼らは神殿に入り、通り過ぎるときに大きな黒い蛇を見て、聖布を盗みます。
司祭が現れ、スペンディウスは彼を刺し、2人はハミルカルの宮殿に逃げます。彼らはそこで眠っているサランボを発見します。 サランボーが目を覚ますと、マトスは彼女への愛を告白します。
警報が鳴らされ、スペンディウスは崖を越えて逃げ、泳いでキャンプに戻り、マトスもなんとか逃れます。
ヌミディア人のナルハバスは、マトスと同盟を結び、カルタゴに対抗します。マトスは未払いの給料を傭兵たちに支払い、傭兵たちは彼を総司令官に任命します。ウティカとヒッポ=ザライトという2つの都市は中立を保ちます。スペンディウスはウティカを攻撃しに行きます。カルタゴはハンノに全権を与え、ハンノは全国民を動員して象の準備をします。ハンノはウティカで傭兵たちを襲撃し、象を用いて彼らを倒すものの、マトスとナルハバスが介入して傭兵たちに有利になります。ハンノはカルタゴに逃亡し、カルタゴはハミルカルに要請します。
ハミルカルは軍隊と象の準備を整えます。やがて蛮族との戦いが始まり、マカール川の戦いにて、スペンディウスらが優勢だったもののハミルカルの象の介入により戦局が変わります。マトスが援軍として到着したとき、惨状が広がるのみでした。
しかしその後、傭兵らはカルタゴ陣営の包囲をします。ハミルカルは自分を支持しなかった長老評議会に激怒してるものの、カルタゴ側は敗北の責任をハミルカルに背負わせます。
宮殿では、サランボーのヘビ(ニシキヘビ)が死につつあり、サランボーは聖布の失踪の責任を感じています。司祭兼宦官のシャハバリムは、テントにいるマトーを誘惑して聖布を取りに行くよう彼女を説得します。サランボーは受け入れ、するとニシキヘビは力を取り戻します。
サランボーはシャハバリムの奴隷を連れて、ハミルカルの軍隊を包囲する傭兵の野営地に向かいます。亡命者のふりをしてマトスに会いたいと頼みます。マトスはサランボーを自分のテントに連れて行き、そこで彼女は聖布を見つけます。サランボーは聖布を取りに来たと彼に話しますが、彼には聞こえません。マトスはサランボーに愛を告げ、2人は交わります。
キャンプで火災が発生した後、サランボーは聖布とともに父親のキャンプに逃げます。ハミルカルは、マトスを裏切ったばかりのナラハヴァスをサランボーと婚約させます。
スペンディウスらはカルタゴに到着すると包囲を開始します。水道橋を破壊し、水が供給されなくなった カルタゴは追い込まれます。
包囲下にあったカルタゴ軍は渇きと飢えに苦しみます。長老たちは神モロクが怒っていると考え、カルタゴの子供たちが犠牲にされます。ハミルカルは奴隷の子供を息子のハンニバルに変装させ、息子の代わりに死なせるのでした。
雨が降り、カルタゴ人は勇気を奮い起こします。ハミルカルは、傭兵団の大部分を渓谷に引きずり込み、そこで3週間飢えさせます。ハミルカルは、降伏に出た彼らにとどめを刺します。
その後、ハミルカルはチュニスを占領するためにチュニスへ向かいました。そこでハンノは野蛮人によって磔刑になり、スペンディウスらもカルタゴによって磔刑になります。
戦争は泥沼化し、マトスはハミルカルに、最後の野戦で終わらせる提案を持ちかけ、ハミルカルは受け入れます。やがて最後の戦いが始まりますが、カルタゴ市民と象の助けにより、傭兵たちは敗北します。その後マトスは捕虜となるのでした。
儀式のいけにえとしてマトスは歩きだし、市民の拷問でボロボロになります。サランボはその光景を目の当たりにし、ショックで亡くなります。




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