PR

ヘラー『キャッチ=22』解説あらすじ

ジョセフ=ヘラー
記事内に広告が含まれています。

始めに

 ヘラー『キャッチ=22』解説あらすじを書いていきます。

 

背景知識、語りの構造

語りの構造

 語りの主体は異質物語世界の、いわゆる三人称の語りで、それが複数の人物に焦点化します。ジョイス『ユリシーズ』などと重なる語りです。

 物語は1941年のヨッサリアンの入隊から、アメリカ国内での空軍予備士官学校での訓練、1943年のピアノーサ島着任と大尉昇進、最後の1944年の空軍部隊からの彼の脱走までを描きます。概ね前から後へと時系列が進んでいくものの、非線形の語りになっていて、ヨッサリアンの周辺の人物の描写は断片的です。

 物語は全42章で構成されます。第 1 章から第 11 章では、登場人物ごとに断片化されたストーリーを大まかに追っていきますが、1944 年のことがおおむね時系列に沿って進みます。第 12 章から第 20 章では、フラッシュバックにより1944年6月のボローニャの大包囲戦(架空の戦い。「ボローニャの戦い」がモデルか)を中心に展開します。第21章~第25章は1944年の現在です。第 26 章から第 28 章では、ミロのシンジケートの起源と発展が展開されます。 28 章から第 32 章では、再び物語の現在に戻ります。第32章以降は物語の現在を描き、戦争の悲劇が特に濃厚に描かれ、第39章の特にアーフィーによる罪のない若い女性ミカエラの強姦と殺害などが描かれます。第41章では、スノーデンの死が描かれます。第41章では、スノーデンの死が描かれ、ヨッサリアンにトラウマを与えます。42章では、ヨッサリアンの逃亡の決意を描きます。

 全体的に非線形の語りによって、キャッチ=22の支配する軍隊、戦争の狂気と不条理を演出します

タイトルの意味

 作品のテーマを象徴するのが「キャッチ=22」という特殊な軍規かつ落とし穴(Catch)です。 「キャッチ=22」は、成文化されていないもののだれもがその存在を信じ、有無を言わさぬ力を持つ暗黙の軍規です。この軍規は実在しないために批判も訂正もできず、ジレンマを生みます。

 具体例を出すと、狂気と判断された場合に出撃任務が解かれると知ったヨッサリアンは狂気を装って出撃免除を申請しようとします。しかし、狂気を理由とする出撃免除の申請は、現実の危険を知って身の安全を図れるという合理的な精神すなわち「正気」であると判断されて申請は却下され、結局出撃しなければならなくなります。

 また仮に指揮官が司令部の定めに背く命令を兵士に出しても、命令に逆らえば軍規破りとなり、司令部から罪を着せられるのは兵士本人です。

 「キャッチ=22」は、権力者が保身のためにその権力を行使してどのようにも展開できる無敵の規則で、それが兵士たちに絶望的な袋小路を生んでいます。

キャッチ22から逃げられないヨッサリアン

 物語のラストはヨッサリアンの逃亡が描かれます。

 ヨッサリアンは71回目の出撃後、軍の出撃命令を拒否してローマに出かけます。ローマへの機体のなか、ヨッサリアンは「他者への責任」として、戦争から逃げて生き延びることが、他者への正義であると考えます。やがて上官のキャスカート大佐とコーン中佐は、ヨッサリアンを本国に送還する代わりに、自分たちについて好意的な口添えをしてくれと持ちかけ、ヨッサリアンはこの取引に応じてしまいます。その直後、彼はネイトリーの女からナイフで腹を刺され、瀕死の重傷を負います。しかしヨッサリアンは病院で意識を回復し、キャスカート大佐とコーン中佐と交わした妥協的契約を破棄する決意を固めます。タップマン従軍牧師から同僚のオアがスウェーデンにたどり着いたという情報を得たヨッサリアンは自分もスウェーデンへの脱走を決意し、物語が締めくくられます。

 こうした展開はヨッサリアンの成長を感じさせますが、そうとは解釈しづらいところがあります。なぜかというとそもそもこうした倒錯したプロセスによる理屈付けによる逃亡の正当化というのが、キャッチ=22という無敵の規範の正当化メカニズムと何ら変わりないからです。

 ヨッサリアンが戦場から逃げるのはもはややむを得ないと思われるものの、それは実のところ「他者への責任」という建前によって、自己の保身という真の動機と仲間を見捨てた逃亡という事実をカモフラージュするに過ぎず、正義でもありません

 先に出てきた「ネイトリーの女」とは、恋人だったネイトリーの戦死の責任をヨッサリアンに負い被せてヨッサリアンの命を狙う娼婦でしたが、彼女の倒錯した加害の正当化のための心理の合理化のプロセスと、ヨッサリアンの他者への責任理論はなんら変わるところはなく、現実の狂気や不条理から逃れるための、不正義を正当化する虚構でしかありません。

 また続編の“Closing Time”では、ヨッサリアンが家に帰ったときに少佐にされたとなっていて、本作のラストで思い描いた逃亡は実現せず、コーンとキャスカートとの取引に応じたことが仄めかされ、ヨッサリアンの成長が否定的に描かれています。

 ヨッサリアンはキャッチ=22の支配する軍隊から逃げたものの、逃げたことによって結局キャッチ=22から逃げることに失敗してしまい、むしろそれを内面化してしまったのでした。

物語世界

あらすじ

 主人公のヨッサリアンは、戦争に幻滅し上官たちを信用しなくなったため、慢性肝臓病を装ってこれ以上の戦闘任務を避けるため軍病院に退避しようとします。

 ヨッサリアンが所属するキャスカート大佐指揮下の空軍部隊では、「キャッチ=22」という、実はどこにも存在ない軍規が多くの条項をもち、兵士たちを強制的に死地へと赴かせ、ヨッサリアンも結局戦闘を免除されません。 部隊では、事実よりも公文書が優先されるなど不条理が展開されます。情報を握った一兵卒が将軍なみになり、「祖国愛」の名のもとに権力者と結託した資本家が利潤追求に没頭したり、政府特捜部員(CID)が暗躍し、暗黒裁判が行われ、粛清を展開します。

 上官たちは兵士たちの命を軽視し、自分たちの目的のためなら部下を犠牲にすることもいといません。特に、キャスカート大佐は危険な任務に自ら志願し、他のどの部隊よりも多くの戦闘任務を部下に強制します。任務を完了するために必要な任務の数を絶えず増やし、地位を確立します。

 44回の戦闘任務を経験した後、ヨッサリアンは空中戦と友人の死を目撃したことでトラウマに苦しみ、最終的には合計 71 回任務をこなします。

 さらに責任出撃回数が80回まで引き上げられ、ヨッサリアンは71回目の出撃後、軍の出撃命令を拒否してローマに出かけます。ローマへの機体のなか、ヨッサリアンは「他者への責任」として、戦争から逃げて生き延びることが、他者への正義であると考えます。狂った戦場ではあらゆる犠牲者が犯罪者であり、あらゆる犯罪者が犠牲者だから、この忌まわしい鎖を、誰かがそれによって断ち切らないといけないと言うのでした。

 やがて上官のキャスカート大佐とコーン中佐は、ヨッサリアンを本国に送還する代わりに、自分たちについて好意的な口添えをしてくれと持ちかけます。ヨッサリアンはこの取引に応じてしまい、その直後、彼はネイトリーの女からナイフで腹を刺され、瀕死の重傷を負います。「ネイトリーの女」とは、恋人だったネイトリーの戦死の責任をヨッサリアンに負い被せて彼の命を狙う娼婦です。

 ヨッサリアンは病院で意識を回復し、キャスカート大佐とコーン中佐と交わした妥協的契約を破棄する決意を固めます。タップマン従軍牧師から同僚のオアがスウェーデンにたどり着いたという情報を得たヨッサリアンは自分もスウェーデンへの脱走を決意します。ここに同席していたダンビー少佐から、自分の責任に背を向けてはいけない、と指摘されますが、ヨッサリアンは、自分の責任に向かって脱出するんだ、と言うのでした。

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました