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大江「性的人間」解説あらすじ

大江健三郎
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始めに

 大江「性的人間」解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ガスカールとメイラー

 大江健三郎はガスカールという作家の戦争文学や、行動主義でモダニズムの作家ノーマン=メイラーの影響が初期には特に顕著です。

 本作も、ガスカールやメイラー文学のような、生々しく身体的でグロテスクな世界を展開しています。

アメリカの自然主義とリアリズム。シュルレアリスム

 大江健三郎は米文学の影響が顕著で本作も、ドライサー『アメリカの悲劇』、フォークナー『八月の光』のような、犯罪者やアウトサイダーの孤独が描かれます

 また大江健三郎は、グロテスクな性描写、肉体的口語的語り口、実際の事件への着目など、全体的にシュルレアリスムからの影響も顕著で、シュルレアリスムに影響された安部公房(『砂の女』『箱男』)にも着目しました。シュルレアリストのコクトー『恐るべき子供たち』もティーンの世界を描いたグランギニョルな青春物語です。また、シュルレアリストのブルトンは既成芸術やブルジョア社会へのカウンターとして、実際の若い犯罪者に着目するなどし、またモロー(「出現」)の絵画に描かれるファム・ファタル表象に着目しました。シュルレアリスムの影響が顕著な三島由紀夫の『金閣寺』や中上健次(『千年の愉楽』)の永山則夫への着目もこうしたモードの中にいて、グランギニョルな青春物語を展開しました。

 本作は、29歳の青年Jが主人公で、彼は何不自由なく暮らしていたものの満たされず、性的に放埒な暮らしをします。しかし妻の不倫により離婚することにします。国会議事堂前でJは一人の少年に出会いますが、この少年は詩を書くことを目指しており、創作のための痴漢の願望を持っていました。Jは少年に共感するものの、やがて少年は少年は線路に落ちた少女を助けようとして電車に撥ねられ、死にます。死亡した少年の遺志を継ごうと決意したJは、地下鉄内で痴漢を計画し、それを実現させたところで周囲の人々に取り押さえられ、償いの涙を流します。

 このように性のアウトサイダーの世界の中での孤独を描く内容になっています。

政治と性

 本作は『セヴンティーン』などと同じく、政治と性が結びつけられている内容です。Jが少年と出会うのも国会議事堂前です。

 同性婚絡みのあれこれなど、セクシャリティが政治と関連を持つというのは一般的にそうですが、大江にとって社会の中で閉塞的な状況にあり、コンプレックスのつよい人間こそ、メインストリー厶から先鋭化、過激化しやすい領域として性と政治を共通のカテゴリーに捉えているものと解釈しています

物語世界

あらすじ

 29歳の青年Jとその妻・蜜子、中年男のカメラマン、20歳の俳優、18歳のジャズ・シンガーら7人は、「地獄」をテーマとした短編映画を撮影するため、ジャガーで耳梨湾近くの山荘に向かいます。そこで彼らは乱交し、その様子を村の子供たちに見られます。

 その後、Jは妻の蜜子が中年男のカメラマンと不倫していたと聞かされ、離婚することにします。

 国会議事堂前でJは一人の少年と出会います。Jはそこで少年が行おうとした性犯罪を止めます。この少年は詩を書くことを目指しており、創作のための痴漢の願望を持っていました。

 少年は線路に落ちた少女を助けようとして電車に撥ねられ、死にます。死亡した少年の遺志を継ごうと決意したJは、地下鉄内で痴漢を計画し、それを実現させたところで周囲の人々に取り押さえられ、償いの涙を流します。

参考文献

小谷野敦『江藤淳と大江健三郎』(筑摩書房)

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