始めに
レオ・レオニ『平行植物』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
レオニの作家性
レオニは自伝の中で、自分の書く文章のスタイルに明確な影響を与えた作家として、ジョイス、ディラン=トマスの2人の名前を挙げています。ジョイス の意識の流れを追うような緻密な言語表現が、レオニの詩的な文章に影を落としています。ディラン・トマスはウェールズの詩人で、言葉のリズムや響きに対する感性に影響を受けたとされています。
レオニの絵本の特徴であるコラージュや抽象的な構成は、彼が若いうちに親しんだ近代美術の巨匠たちから強く影響を受けています。レオニはクレーの作品に深く傾倒していました。シンプルで記号的な図形の中に物語や哲学を込めるスタイルは、レオニの絵本制作の核となっています。カンディンスキーは色の心理的効果や形の構成において、レオニのデザイン理論に影響を与えました。
また特定の個人というよりはバウハウスという運動そのものです。機能的でモダンなデザイン、そして教育と芸術を結びつける姿勢がレオニの仕事に根付いています。ブルーノ・ムナーリはイタリアを代表する芸術家・デザイナーで、レオニとは親交が深く、お互いに遊び心と哲学を両立させる創作スタイルで刺激し合いました。
フェイクドキュメンタリー
この本の特徴は、存在しないものを、あたかも存在するかのように語ることにあります。レオニは、緻密な図版と、歴史的なエピソード、さらには実在の科学者の名前まで引用しながら、偽の学説を積み上げていきます。 私たちが現実と呼んでいるものは、いかに脆く、言葉や権威によって容易に構築・操作され得るかという批評性があります。
平行植物たちは、石のように動かなかったり、触れると消えてしまったり、あるいは思考の中にしか存在しないとされるものさえあります。物質的な豊かさや目に見える価値ばかりを追う現代社会に対し精神の中にだけ存在する真実や、目に見えない次元の豊かさを提示しています。例えば、代表的な植物チリッルスは、見る者の心の持ちようによってその姿を変えるとされています。これは、現象よりも認識の重要性を説いています。
レオニは、植物を分類し、分析し、定義しようとする科学の営みそのものをパロディ化しています。すべてを解明し、名前をつけて管理しようとする人間の傲慢さへの牽制です。平行植物たちは、既存の生物学の法則をことごとく無視します。これを通じて、未知なるものへの畏怖や、定義できない曖昧なものの美しさを守ろうとしています。
物語世界
あらすじ
著者は「平行植物」とは何かを厳かに宣言します。それは私たちの住むこの世界の物理法則には従いつつも、物質的にはこの世界に完全に属していない、平行した次元に存在する植物のことです。それらは成長せず、腐敗もせず、光合成も行わない。あるものは石のように硬く、あるものは思考の中にしか存在しない。それらは現象であって物質ではないとされます。
レオニは、あたかも実在する科学者や探検家たちが書いたかのような、古い文献や学説を次々と引用します。古代の壁画に描かれた謎の植物、18世紀の植物学者が熱狂した未確認種。緻密な脚註や参考文献のリストを並べることで、読者を本当にどこかに生えているのではないかという錯覚に陥れます。
本編のメインは、多種多様な平行植物の紹介です。チリッルスは平行植物の代表格で見る者の心理状態によって、その形や意味を変えてしまう不思議な植物です。ジラルーナは月に向かって咲くと言われる植物です。ことばの植物は音や言葉によって形作られる植物です。
最後は、これらの植物を解明しようとして失敗してきた人類の歴史が語られます。結局のところ、これらは測定や分析を拒絶する存在であり、人間の想像力の中にしか根を張らないことが示唆されます。




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