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モラヴィア『倦怠』解説あらすじ

モラヴィア
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始めに

 モラヴィア『倦怠』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ドストエフスキーとモリエールの影響

 モラヴィアが影響を最も受けた作家はドストエフスキー(『貧しき人々』『地下室の手記』)でした。ここから、モラヴィアは性愛をテーマにする艶笑コメディを作風とするようになりました。本作も『貧しき人々』『地下室の手記』のように性愛にまつわる男の失敗を描きます。このあたりはドストエフスキーに影響された川端(『眠れる美女』『みづうみ』)と重なります。

 また、モリエールという劇作家からも影響され、そこから同様に性愛にまつわる喜劇を展開しています。

 他にもフローベール、カフカ、ジョイス、プルーストなどからも影響が大きいです。

ブルジョワ社会の倦怠

 作品はブルジョワ社会の倦怠を描き、有産階級のディーノが物質的には満たせれていても、生活の充足感を得られないさまを描いていて、パラニューク『ファイト・クラブ』などと重なる内容です。


 ディーノの倦怠は、世界がそこにあることは分かるものの、関わらざるをえない感じがしないという状態です。切実に関わる動機がないために、物や他者がすべて代替可能などうでもよいものとして知覚されます。生存から切り離された主体であるディーノは、労働によって生きておらず、欠乏や危機に晒されていないため、行為が生存と結びついていないのです。つまり、行為しなくても生きられる主体です。


 本来、絵画は世界を切り取り対象に意味と抵抗を与える媒介であるはずですが、ディーノにとっては描いても対象が物に見えないし、表現が現実に触れないために、芸術が現実回復装置として機能しなくなっています。セシリアへの執着も、愛でも依存でもなく、「現実を感じたい」という二次的欲望にすぎません。だから満たされても回復しないものです。

 ラストでは故意に自らを死に近づけることで、ディーノはわずかに現実を取り戻します。

物語世界

あらすじ

 ローマ貴族の出身で、アッピア街道沿いの別荘で母親と暮らすディーノの物語です。ディーノは絵を描くことに時間を費やしますが、周囲のあらゆるものに飽き飽きし、旅慣れた父親のように、母親が大切にしているブルジョワ的価値観を軽蔑します。

 時が経つにつれ、母親との対立は耐え難いものとなり、ディーノはマルグッタ街道へ移り住み、そこに画家アトリエを構えることを決意します。

 しかし絵を描くことさえ、ディーノの心を紛らわせることはできなくなります。義務感から母親を訪ねざるを得ない状況も、ディーノを苦しめます。母親は息子を実家に連れ戻し、より厳しい管理をしたいと望んでいました。

 隣にアトリエがあった画家マウロ=バレストリエリの死後、ディーノはかつての恋人セシリアと出会い、関係を持つようになります。しかし、すぐに彼女に飽きてしまい、別れを決意したその日、彼女はいつもの時間に正確であるにもかかわらず、現れなかったのでした。それがディーノの嫉妬心を掻き立てます。

 幾度となく彼女を追い回したディーノは、彼女が無一文のルチアーニという別の男と会っていることを突き止めます。ディーノは、セシリアと会った後に金を払う習慣を身につけ、心の中に娼婦のイメージを作り上げることで、彼女から逃れられることを期待するようになります。

 しかしセシリアは、以前バレストリエリから受け取ったのと同じように、全く無関心にその金を受け取り、他の男に渡すことにします。

 ディーノはますます絶望的な状況に巻き込まれ、セシリアから逃れようとすればするほど、彼女の嘘が暴かれ、ますます彼女に惹かれます。

 そして、結婚生活の日々が彼女の凡庸さを露呈させることを期待しながら、ディーノは彼女にプロポーズします。セシリアは、ディーノと他の男の両方に恋をしていることを認めた後、プロポーズについて考える時間をくれと頼みます。その間に、他の男とポンツァで休暇を過ごすための資金を調達するのです。

 ある晩、彼女が去った後、ディーノはプラタナスの木に車をぶつけることを決意します。差し迫った死を経験したことで、彼は少し変化を遂げます。

 ディーノは自分の境遇を受け入れ、現実世界に戻り、セシリアの帰りを待つのでした。

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