PR

泉鏡花『夜叉ヶ池』解説あらすじ

泉鏡花
記事内に広告が含まれています。

始めに

 泉鏡花『夜叉ヶ池』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

泉鏡花の口語的世界

 泉鏡花は、尾崎紅葉の硯友社のメンバーで、そこから江戸文芸の戯作文学を参照しつつも、リズミカルな口語によって幻想的で性と愛を中心とする世界を描きました。

 江戸文芸にあった洒落本ジャンルは、遊郭における通の遊びを描くメロドラマでしたが、鏡花も洒落本を継承して、花柳界におけるメロドラマを展開しました。また読本的な幻想文学要素、人情本的な通俗メロドラマからも影響されて、幻想文学、メロドラマをものした鏡花でした。戯作文学の口語的な豊かな語りのリズムを鏡花は継承しました。

 本作も、中国幻想文学(志怪小説、伝奇小説、白話小説)を思わせる、とくに伝奇小説を思わせる、幻想的世界が特徴です。

夜叉ヶ池

 夜叉ヶ池は福井に実在する池です。そこに伝わる神話があって、それを下敷きにしています。

 それにはさまざまなバリエーションがあるものの、雨乞いのための生贄として龍神に嫁ぐ龍神伝説がよく知られます。

 本作は、おおまかにこの世界観をふまえつつ、独自の脚色を凝らしています。

ハウプトマン『沈鐘』

 本作はハウプトマン『沈鐘』の影響もあります。

 この『沈鐘』のあらすじです。シュレージエンの山の精たちを調伏するために鐘造り師ハインリヒの鋳た鐘は、魔物たちによって湖底に沈められ、ハインリヒも負傷するものの、妖精のような山の乙女ラウテンデラインに介抱されます。乙女はハインリヒを愛し、村人に連れ戻された彼を追って人里にきます。ハインリヒは妻マグダを捨てて乙女と山に入り、牧師の説得も退けるて「日の神」のための鐘をつくろうとするものの、わが子に妻が湖に身を投げたことを聞かされ、村に戻ります。乙女はその間に水の精の妻になります。ハインリヒは乙女の養母である妖婆に彼女との再会を頼み、命と引き換えに乙女の接吻を受け、太陽を仰ぎつつ死ぬのでした。

大まかなプロット

 舞台となる琴弾谷では、暴れ回り大水を起こしていた龍神を行力によって、三国岳の山中にある夜叉ヶ池に封じ込め大水を終息させた時、人間との誓いを龍神に思い出させるために、昼夜に三度鐘を鳴らす決まりになっていました。この決まりを現在も一人厳格に守っていたその老人が死に、その意志を継ぐべく萩原という男が地元の女性百合と結婚して村に留まり、鐘を撞いていました。けれども、この百合が龍神のために生贄にされそうになって自害し、悲しみから萩原も鐘を壊して自害し、それによって鐘を撞く誓いが破られ、龍神の白雪は剣ヶ峰の恋人のもとへ飛び立とうと、天翔け、夜叉ヶ池は大洪水となって村を押し流してしまうのでした。

 このように、恋人の悲劇の死によって、龍神との誓いが破られて村が壊滅し、龍神はそれによって恋人の元へとかけていく、という内容です。

物語世界

あらすじ

 激しい日照りが続く大正二年のある夏の日、岐阜県と福井県の県境にある三国岳の麓の琴弾谷のある村に一人の男がやって来ます。諸国を旅する山沢学円という学者の僧侶です。

 偶然出会った百合という美しい女性に山沢は語ひます。一昨年、萩原晃という自分の友人の学者が各地に伝わる物語の収集に出たきり行方知れずになり、その足跡を辿って諸国を旅しているそうです。

 そこへ百合の夫という男が現れます。その男こそ萩原でした。再会を喜ぶ山沢に、萩原はこの地に住み着いたいきさつを語ります。

 一昨年、この地を訪れた萩原は、村で鐘守を務める老人と出会いました。老人によると、かつて暴れ回り大水を起こしていた龍神を行力によって、三国岳の山中にある夜叉ヶ池に封じ込め大水を終息させた時、人間との誓いを龍神に思い出させるために、村では昼夜に三度鐘を鳴らす決まりだったそうです。この決まりを現在も一人厳格に守っていたその老人が死に、その意志を継ぐべく百合と結婚して村に留まり、鐘を撞いていました。

 夜叉ヶ池の龍神白雪は、剣ヶ峰の恋人のところに行きたいものの、彼女が動くと大洪水となるので眷属たちが止めるのと、萩原と百合が鐘を撞くのを疎ましく思います。

 その頃、村では代議士穴隈鉱蔵や神官鹿見宅膳が年頃の若い娘を雨乞いのため夜叉ヶ池の龍神への生贄にしようという提案をします。生贄に選ばれたのは百合でした。

 夜叉ヶ池を見に行った萩原と山沢の留守中に、村人たちが百合を強引に連れ出します。

 それに気付いて駆け付けた萩原と村人たちとの押し問答のなか、百合は悲しみから自害します。怒った萩原は撞木の縄を切り鐘を撞けないようにして、百合の後を追い自殺します。

 こうして鐘を撞く誓いが破られ、白雪は剣ヶ峰の恋人のもとへ飛び立とうと、天翔けます。夜叉ヶ池の水はあふれ出し、大洪水となって村を押し流しました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました