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スティーブンスン『ジキル博士とハイド氏』解説あらすじ

スティーブンスン
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始めに

 スティーブンスン『ジキル博士とハイド氏』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ロマン主義

 スティーブンスンは、イギリスを代表するSF作家です。

 ヘズリット、ラム、ワーズワース、サー・トーマス・ブラウン、デフォー、ホーソーン、モンテーニュ、ボードレール、オーバーマンの影響が顕著で、全体的にロマン主義的テイストが濃厚です。

 本作も二重人格をめぐる、SF的なストーリーとして展開されます。

モデル

 本作のモデルの候補は複数います。

 まずウィリアム=ブロディが候補です。スティーブンソンは、10代の頃にウィリアム=ブロディに関する劇の脚本を書き上げ、1882年に初めて上演されました。1884年の初めに短編小説「マークハイム」を書き、1884年にクリスマス年鑑に掲載するために改訂しました。

 昼間は、ブロディは商人で、エディンバラの家具職人の職を統括するライト商会の会長で、市議会議員でした。夜になると、ブロディは強盗や泥棒をはたらき、不正に稼いだ金はギャンブルや愛人との交際に使いました。

 またエディンバラの教師ウジェーヌ=シャントレルもモデルの可能性があります。彼は1878年5月に妻殺害の罪で有罪判決を受け、処刑されました。シャントレルは市内で普通の生活を送っていたものの、妻をアヘンで毒殺しました。

 とはいえふたりとも本作が描くような二重人格、解離性人格障害ではないように思われ、単に二面性を持っていた似すぎません。

語りの構造

 物語は弁護士アターソンを焦点化する異質物語世界の語り手の前半パートと、ジキル博士のこれまでの経緯の告白の手紙の後半のパートにより構成され、ここのパートの語り手は手記の書き手であるジキル博士です。前半パートは、アターソンの視点からジキルとハイドの姿を描き、二人の関係や正体が後半の手記により明かされる構成です。

 ジキル博士は、2面性をもっていて、表向きは善良な紳士であるものの、快楽への欲望が強く、これを満たすために科学的実験を重ねて善悪二要素の完全な分離の可能性を追求し、人格から悪の側面のみを切り離して別人格を出現させる薬を発明し、それによってハイドに変身していたことが明かされます。けれども次第にハイドからもとに戻れなくなっていき、ジキル博士の人格は消滅し、ハイドは自殺してしまったのでした。

物語世界

あらすじ

 19世紀のロンドン。弁護士のガブリエル=ジョン=アターソンと親戚のリチャード=エンフィールドは、習慣としていた日曜日の散歩中に、繁華街の裏通りで、エンフィールドが不気味な二階建ての建物を指差し、数ヵ月前に遭遇したという出来事について語るのを聞きます。

 彼の話によると、醜悪なハイドという男が、ぶつかって転んだ少女を踏みつけて立ち去ろうとしました。少女の家族らが詰め寄ると、ハイドは「金額を言え」と言います。100ポンド支払うよう要求すると、ハイドはその建物に入り、10ポンドの現金と90ポンドの小切手を持って出てきました。小切手の署名は彼の顧客であり友人のヘンリー=ジキル博士でした。

 アターソンはジキルから「ジキルが死亡か失踪した際には友人で恩人のエドワード=ハイドが全財産を相続する」という遺言状の保管を依頼されていました。アターソンはハイドがジキルの財産を狙って恐喝しているのではないかと危惧し、ハイドを捜します。

 例の建物はジキルの屋敷から続くジキルの実験室でした。アターソンはハイドを待ち伏せしたものの、ハイドは青白い小柄な若者で、不快感、嫌悪、恐怖を引き起こさせます。ハイドは「博士は留守」だと告げ、自分のソーホーの住所を教えます。

 2週間後ジキルの屋敷での晩餐会が終わった後に、アターソンはジキルにハイドについて問い質そうと残ります。50歳で大柄なジキルは、アターソンがハイドに会った事を告げると蒼白になります。ジキルは、心配するような事は無いと告げます。

 1年間が過ぎ、あるメイドが窓から外を眺めていると、ハイドが老紳士をステッキで撲殺するのを目にします。被害者はアターソンの依頼人でもあるダンヴァーズ=カルー卿でした。警察から連絡を受けたアターソンは、刑事をハイドの住居に案内します。

 ハイドの住居に彼はいなかったものの、凶器のステッキがドアの陰から見つかります。真っ二つに折れていて、事件現場にあった残りの半分と一致しました。

 そのステッキはアターソンがジキルに贈ったものでした。アターソンがジキルを訪ねると、ジキルはハイドとの関係を断ったと言い、引き起こしたトラブルについて謝罪して別れを告げるメモを見せます。その夜、アターソンの主任書記はジキルとハイドの筆跡が似ていると指摘します。

 ハイドは姿を消し、数か月の間はジキルは以前の社交的な態度に戻ります。しかし、ジキルは唐突に訪問者を拒みました。

 ヘイスティー=ラニョン博士はジキルのある秘密を知り、ショックを受けて病死します。ラニョンはアターソンに手紙を残したものの、ジキルが死ぬか失踪するまで開いてはならないという遺言がありました。

 アターソンはエンフィールドとジキルの研究所を通りかかり、窓越しに3人で会話を交わすものの、ジキルの顔を恐怖が覆い、突然窓を閉めていなくなります。

 ある夜、アターソンをジキルの執事のプールが訪ねます。ジキルが書斎に閉じ篭ったままで、様子がおかしいといい、一緒に来るように懇願します。

 アターソンとプールはジキルの屋敷へ向かいます。二人が屋敷に入ると、ホールには使用人が集まっています。書斎の中からアターソンの呼び掛けに答える声はジキルではありません.プールは書斎にいるのはハイドで博士は殺されたと考えます。二人はジキルの書斎に入ろうとします。

 アターソンに答えた声はハイドでした。プールが斧で扉を破壊し、二人は書斎に入ります。中には自殺したハイドの遺体があります。ハイドはジキルのものと思われるサイズの合わない服を着ており、ジキルの遺体はありません。

 事務机の上にアターソン宛ての封筒がありました。中には相続人をアターソンとしたジキルの遺言状、アターソンに向けた謝罪と詳細を記したジキルの手記がありました。アターソンはまずラニョンの手紙を読んでからジキルの手記を読みます。

 ラニョンの手紙には、ジキルの手紙での依頼どおりに研究所から持ち帰った薬品を自宅に置いていたところ、ハイドが来てその薬品を調合して飲み、ジキルに変身し、そのショックで病気になり、今や寿命が尽きそうだ、と記されていました。

 ジキルの手紙には、表向きは善良な紳士である自分の欠点は快楽への欲望の二面性であり、これを満たすために、完全な二重生活を生き、科学的実験を重ねて善悪二要素の完全な分離の可能性を追求し、人格から悪の側面のみを切り離して別人格を出現させる薬品を発明したことで、自分はハイドという別人に変身するようになった、と記されていました。

 最初はハイドに変身して道徳から解放された自由を楽しんでいたものの、薬を飲まなくても眠りながらハイドになることが増え、恐ろしくなって、変身をやめる決心をしたものの、誘惑に耐えられず、つい薬を使います。

 カルー卿惨殺はこの時のハイドで、数か月もの間抑圧されていた「悪」の人格が爆発したのでした。

 戦慄したジキルは変身をやめ、慈善事業に精を出します。

 しかし1月の晴れた日の公園で、突然の吐き気、悪寒、めまいに襲われてハイドに変身します。薬品によらない変化が覚醒時に起こったのは初めてでした。

 公園は研究所から遠く、ハイドは殺人犯で追われる身であるため、薬でジキルに戻るためにラニョンに頼りました。ラニョン宅へ行って薬品によりジキルに戻ると、ラニョンはショックをうけ、命取りになりました。

 家に戻っても自然発生的な変身は増え、元に戻るための薬の量も増えています。

 以前エンフィールド、アターソンとの会話を突然中断し、窓を閉めていなくなったものも、変身が始まったからでした。

 やがて薬品の材料の備蓄が不足し、新しく調達した材料で調合したものの、従来の化学変化が起こりません。

 最初に購入した材料に含まれていた不純物が重要だったようで、薬品の再現がそのごうまくいきません。

 ハイドからジキルに戻る薬品は尽きかけており、手記を書き終えた時には永久にハイドになるだろうということです。

 私は、あの不幸なヘンリー・ジキルの生涯を閉じる、と手記を結びます。

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