PR

太宰治「恥」解説あらすじ

太宰治
記事内に広告が含まれています。

始めに

 太宰治「恥」解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

芥川の影響

 太宰治は芥川龍之介の影響が大きく、皮肉が特徴です。

 本作は芥川『藪の中』『地獄変』のような等質物語世界の語り手の和子を設定しています。

 芥川に影響したオスカー=ワイルド(『サロメ』『ウィンダミア卿夫人の扇』)のような、シニカルな文明批評を盛り込んだ、象徴主義風のシニズムも特徴的です。

セルフパロディ

 太宰治は芥川龍之介からの影響が顕著ですが、芥川龍之介はストリンドベリの告白文学から顕著な影響を受け、とはいえストレートに自伝的な告白文学はなかなかものさず『藪の中』『地獄変』といった告白形式の作品や、『大導寺信輔の半生』『歯車』など自伝的作品を著しました。

 本作はやや自伝的な文学になりつつも、芥川龍之介的なシニズムで相対化して展開しています。

 本作は語り手は和子という女性で、太宰治とも少し重なるような無頼派の戸田という作家に惹かれます。戸田は私生活が退廃的で体もボロボロだそうですが、和子はそんな戸田にどこか惹かれ彼に手紙を送ります。その後自分とそっくりのキャラクターが戸田の作品に現れたことから、さらに戸田に興味を持ち、直接訪ねて行きます。しかし実際の戸田は小説に描かれる印象とは正反対の清潔感のある男で、退廃的な生活は全部フィクションで、和子を作品のモデルにしたというのもただの偶然の一致で勘違いでした。和子はいたたまれない気持ちになります。

 作品を実生活との関連のなかで読み解かれることが多く、作家のメッセージ性の強い太宰作品ですが、本作はそうした自伝的な要素に関するセルフパロディになっていて、作品を通して描かれる作家と実際の作家には隔たりがありうることをシニカルに示しています。

 このような自己戯画化、セルフパロディ的な試みは「ダス=ゲマイネ」「道化の華」などにもうかがえます。

物語世界

あらすじ

 和子は「サムエル記」下・第13章19節「タマル、灰を其の首(こうべ)に蒙(かむ)り、着たる振袖を裂き、手を首にのせて、呼はりつつ去(さり)ゆけり」を引用し、友人の菊子に、わかい女は恥ずかしくてどうにもならなくなった時には、頭から灰でもかぶって泣いてみたくなると話します。

 和子はあるとき小説家の戸田に手紙を出します。戸田の小説には無数の欠点があるものの、底にある一種の哀愁感を尊く感じるという内容の手紙でした。自分の住所と名前は書きませんでした。

 それからのち『文学世界』の今月号に掲載された戸田の短編小説『七草』を読み、和子は、主人公の名前が和子で年齢も同じ23歳、父親が大学教授である点まで同じで驚きます。和子は戸田が手紙からヒントを得て、和子の名前を調べて小説を書いたのだろうと推測します。和子は自分の名前を明かし、再度戸田に手紙を出すと、しばらくしてから戸田から葉書がきます。

 和子は翌朝、戸田に会いたくなり、身支度を始めます。戸田は秋になると脚気が起こることを小説で知っていたので、ベッドの毛布を一枚風呂敷に包んで持っていきます。

 しかし戸田の家は、庭が綺麗な一軒家でした。奥さんについて行くと、そこには清潔そうで整った顔の男性が机の前に座っていました。

 和子がこれまでの手紙のことを話しても、戸田は関心を示さず、。そこで和子は誤解に気が付きます。戸田は、自分の創作はみなフィクションだと言い、さらに「あなたの最初のお手紙なんか」と言って、口をつぐみました。

 和子は、菊子への手紙に「小説家なんて、つまらない。人の屑だわ」と書いておくるのでした。

参考文献

・野原一夫『太宰治 生涯と作品』

コメント

タイトルとURLをコピーしました