始めに
ラディゲ『ドルジェル伯の舞踏会』解説あらすじを書いていきます。
語りの構造、背景知識
古典主義(コクトー、コンスタン、ラファイエット夫人、ミュッセ)
ラディゲはコクトー(『恐るべき子供たち』)などのモダニスト、シュルレアリストと親交があって、前衛的な文学的潮流と接触していたものの、本人はフランスの心理小説(コンスタン『アドルフ』、ラファイエット夫人『クレーヴの奥方』)やミュッセの古典主義風のロマン主義文学に習いつつ、古典的な小説スタイルでもって小説を展開していきました。
本作もクラシックな心理小説『クレーヴの奥方』の翻案として、メロドラマを展開します。
『クレーヴの奥方』の翻案
本作はラファイエット夫人『クレーヴの奥方』の翻案です。『クレーヴの奥方』とは貴族の世界におけるメロドラマであること、貴族の奥方が主人公で貴公子と不倫の恋に落ちることが共通します。他方で、『クレーヴの奥方』では、夫の憤死と恋愛の破綻までが描かれるのに対し、本作ではその後の三人は描かれません。以下は『クレーヴの奥方』のあらすじです。
『クレーヴの奥方』で主人公のシャルトル嬢は美しい女相続人です。父親は早くに死に、母から厳しく育てられます。母親と宮中に行った時、クレーヴ公が彼女を見そめ、クレーヴ公と結婚して「クレーヴの奥方」となります。
しかし結婚してまもなくして、奥方はルーヴル宮の舞踏会でヌムール公と出会い、2人は恋に落ちます。そんな時母親が、夫に尽くす義務を言い残して急死します。ここから奥方はヌムール公を避けます。
しかしやがて夫はヌムール公への嫉妬と妻への誤解から病に倒れます。死の床で夫は妻の不義を責めます。ヌムール公は、あらためて奥方に告白しますが、奥方もヌムール公を愛していることは認めるものの、ヌムール公の元から去ります。奥方は修道院に入って、早くに亡くなりました。
物語世界
あらすじ
1920年2月7日の土曜日、ドルジェル伯爵夫人・マオは、夫のアンヌ・ドルジェル伯爵と「メドラノ」曲馬を見に行き、そこでフランソワ・ド・セリューズという青年と出会います。フランソワは、ドルジェル伯爵と踊る夫人・マオに惹かれます。
ドルジェル伯爵は翌日の昼食にもフランソワを招待します。フランソワはマオへの愛を自覚しはじめます。しかしドルジェル伯爵夫妻の前では平静を保ちます。マオに愛されている伯爵を嘆賞し、伯爵も青年に好感を持ちます。
やがてフランソワは、実家にドルジェル伯爵夫妻を招きます。このときフランソワとマオが血縁関係にあることが分かります。パリに戻り伯爵家に寄ったフランソワが帰る時、伯爵は妻とフランソワをけしかけ、従姉弟同士のように抱擁のキスの挨拶をさせます。
ある夜、劇場へ行く途中の自動車の中で、フランソワとマオは互いに自分の気持ちを悟り、ドルジェル伯爵も2人が腕を組んでいるのを見たものの、なんとか難を逃れます。けれどもフランソワとマオは関係を深めていきます。
追いつめられたマオは、セリューズ夫人(フランソワの母)に手紙で告白をします。セリューズ夫人はマオを訪ね、息子もあなたを愛していると言います。マオは喜ぶものの、フランソワが今夜の晩餐会に来ないように、セリューズ夫人に頼みます。
しかしセリューズ夫人は息子・フランソワの下宿へ行くと、マオの告白の手紙を息子に見せてしまいます。フランソワは興奮し、母を振り切りドルジェル伯爵の晩餐会に向かいます。そこで二人はお互いの感情を意識します。
皆が今度の仮面舞踏会の準備で盛り上がる中、ドルジェル伯爵がナルモフ公爵に下卑た冗談をやって、場は気まずくなります。マオは、夫がフランソワの面前でこんな醜態をさらすのに耐えられません。マオが夫の冗談に加わると、ナルモフは、夫をかばって自分も非難されようとしているのだと解してこれを讃え、座は和みます。
宴会が終ると、マオは突然倒れます。マオはその後寝室で、フランソワを愛していることを夫に告白します。伯爵は苦悩します。
伯爵は今後のセリューズ夫人やフランソワへの対応を考えます。伯爵は、今度の仮面舞踏会で、フランソワにはぜひダンスのはじめに一緒に出てもらおうと妻に提案し、マオの髪に接吻して別れます。
参考文献
・江口 清 『天の手袋―ラディゲの評伝』




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