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宇佐美りん『推し、燃ゆ』解説あらすじ

宇佐美りん
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始めに

 今日は宇佐美りん『推し、燃ゆ』について解説を書いていきたいと思っています。

背景知識、語りの構造

等質物語世界の語り手、あかりに焦点化

 この作品は等質物語世界の語り手・山下あかりに重たる焦点化が図られます。情緒不安定で理想化傾向が強く依存体質な語り手や焦点化人物の存在は作者の好む中上健次『千年の愉楽』『軽蔑』を連想します。

理想化された対象との関係

 本作は理想化された対象との関係を描く内容になっており、その点では三島由紀夫『金閣寺』『サド侯爵夫人』や岩井俊二監督『リリィ=シュシュのすべて』などを連想します。

 依存体質な主人公は推しという存在なしでは立っていることができないので、脆い自尊心の拠り所として、推しに縋っています。

アイドルもの

 本作は芸能の世界を扱うという点では綿矢りさ『夢を与える』、岡崎京子『ヘルタースケルター』を連想しますが、いずれもアイドルやモデルを主人公とするものでした。また前者はアイドルという職業に要求される感情労働、役割期待への葛藤、後者はコンプレックスから承認欲求を拗らせた主人公のグランギニョルな青春がテーマで、コンセプトとして本作とは大分異なっています。

 本作はおそらくはADHDというマイノリティ、アウトサイダーたる主人公の置かれた苦境と閉塞感を、推しへの心理を中心に展開しています。

発達障害(ADHD)

 本作の語り手、あかりはおそらくは発達障害(ADHD)であり、それに由来する注意障害が顕著でミスや人間関係におけるトラブル、極端な依存傾向を生んでいます。細やかな描写のなかに、マイノリティである語り手の置かれた苦境が描かれます。

 村田沙耶香『コンビニ人間』も発達障害(ASD)と思われる語り手の視点から綴られていたのを連想します。

物語世界

あらすじ

 高校2年生のあかりは、深夜に目が覚めます。今、SNSがざわついています。自分の推しがファンをなぐったらしく、あっという間に炎上しました。あかりは、拡散され燃え広がり続けるニュースをベッドの上で見つつも推しの心配をしていました。

日常生活において何もうまくいかず、周りともやっていけないあかりにとって、推しは人生の中心でした。

推しを失って生活の中心を失うまでが描かれていきます。

関連作品、関連おすすめ作品

・松本大洋『ピンポン』、三島由紀夫『サド侯爵夫人』、中上健次『軽蔑』、トーマス=マン『トニオ=クレエゲル』:理想化された他者との関係をめぐるドラマ。

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