始めに
河野多恵子『蟹』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
異質物語世界の語り、悠子に焦点化
本作は異質物語世界の、所謂三人称の語り手が設定され、主人公の悠子に焦点化されます。
悠子には、「幼児狩り」にも描かれるような、少年愛的な傾向があり、悠子の心理が振る舞いを通じて客観的に描かれていきます。
谷崎の影響、性的欲求
河野多恵子は『谷崎文学と肯定の欲望』という評論があるなど、谷崎潤一郎からの影響が顕著です。谷崎はアブノーマルな性愛を絡めた心理劇(『痴人の愛』『卍』)を特徴としましたが、河野多恵子にもそれは継承されています。
ただ、河野多恵子はどちらかというと評論のほうが優れております。なぜかというと、悪いところも後期の谷崎文学(『瘋癲老人日記』『鍵』)みたいになってしまっていて、とにかく漫画みたいでコテコテの内容の作品が多いです。「不意の声」とか、寒いアングラエロゲーみたいな話です。
ただ本作は割と完成度が高い方です。
ショタコン
タイトルになっている蟹は、甥の武が欲しがる蟹のことで、一緒になって探しに行くことになります。悠子は武に執着しており、なんとか武といっしょにいる理由を探そうと必死になります。
谷崎文学が『卍』『痴人の愛』でアブノーマルな性愛を描いたのと重なります。
動物のモチーフ
本作は動物を絡めた心理劇になっていて、谷崎作品の『猫と庄造と二人のをんな』を連想します。
谷崎の『猫と庄造と二人のをんな』では、庄造の前妻・品子は現在の妻・福子に対し、雌猫のリリーを譲らせます。庄造は嫌がったものの、喧嘩の末に猫を品子に譲ります。リリーは以前にも他人に譲られたたものの戻って来たので、そうなるのを期待しました。しかしリリーと品子は打ち解けます。庄造は気になって、品子の留守中にこっそりと家を訪ねます。リリーが大切に飼われている痕跡を見つけ、安堵するものの、品子が来たのでそそくさと逃げます。
こんな感じで、動物を交えた夫婦と元妻の三角関係が展開されます。「蟹」も同様に、蟹をモチーフに交えつつも、夫である梶井と悠子、それから甥の武の三者の関係を描きます。
物語世界
あらすじ
主人公の悠子は転地療養の為、外房州にきています。夫の梶井は嫌がったものの、1か月の間許されます。悠子は療養先で満ち足りた生活をします。
そこに夫の弟の家族がやってきます。悠子の甥にあたる武が蟹を見つけたものの、脚が折れて死んでしまいます。なので悠子は蟹を探そうとし、夫の弟の家族は帰らなくてはいけなかったものの、武だけは残らせます。
残った武と悠子は蟹を探すものの、見つかりませんでした。




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