始めに
武者小路実篤『愛と死』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
白樺派の理想主義とヒューマニズム
武者小路実篤は白樺派の中心となった作家です。白樺派は、学習院の同人誌である白樺のグループの作家の名称で、傾向としては理想主義や人道主義を掲げて、そこから生田長江など自然主義の作家や評論家との論争がありました。
白樺派は有島武郎(『或る女』)、里見とん(『多情仏心』)の兄弟や武者小路実篤(『友情』)、長与善郎などの小説家の他にも詩人、歌人、画家もいて、作風の傾向もまちまちでした。とはいえこのグループではトルストイ(『戦争と平和』『アンナ=カレーニナ』)、ニーチェなどは広く共有され、トルストイ(『戦争と平和』『アンナ=カレーニナ』)のヒューマニズムからは実篤も影響が顕著です。
また「ドストエフスキイに就て」で評価する、ドストエフスキーの影響も顕著です。
加えて、漱石のユーモアと写実からも感化が大きいです。
タイトルの意味
本作は小説家の端くれである村岡の夏子との恋愛と結婚、そして彼女の急死を描く内容で、タイトルもそれに言及します。
洋行からの帰国後、帰国の歓迎会で村岡は夏子の死について、「死んだものは生きている者に対して大いなる力を持つものの、生きているものは死んでいる者に対して無力である」旨を語ります。
死者は生者を縛り、相手への罪悪感は時に耐え難いものになり得ます。けれども、どう生者が苦悩したところで、死者が救われることは何一つありません。なぜなら、死者はもうどこにもいないからです。
そのような考えが、長い年月を経ても村岡の救いであることが描かれます。
物語世界
あらすじ
小説家の端くれである村岡は、尊敬する小説家であり、友人となった野々村の元へ訪問するようになります。そこで野々村の妹である夏子と知り合います。
ある時、野々村の誕生日会の余興の席で夏子に窮地を救われてから、2人の関係が始まります。文芸会の出し物や手紙のやり取りで距離を縮めていき、最終的に村岡の巴里への洋行後に結婚します。
半年間の洋行の間でも互いに手紙を書き、帰国後の夫婦としての生活に希望を抱くものの、帰国する船の中で、電報で夏子の急死が知らされます。
帰国後、深い悲しみを負いながら野々村と墓参りをし、帰国の歓迎会で村岡は「死んだものは生きている者に対して大いなる力を持つものの、生きているものは死んでいる者に対して無力である」旨を語ります。
21年の時を経ても、その考えは慰めとなっているのでした。




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