始めに
ビアス「月明かりの道」解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
ジャーナリズムでのキャリア
ビアスは、ジャーナリストとして活躍し、新聞記事への寄稿や雑誌編集でキャリアを積み、風刺的な才覚や筆力を身に着けました。
ジェームズ=ワトキンズの指導でシェイクスピア、ラロシュフーコー、スウィフト、ヴォルテール、サッカレーなどに触れ、その風刺性、リアリズムにおいて感化されました。
ロマン主義者で、ディケンズやH=ジェイムズのリアリズムを批判しました。
信頼できない語り手
物語は信頼できない語り手を設定していて、語り手は等質物語世界の語り手三人(ジョエル=ヘットマン=ジュニア、キャスパー、ジュリア=ヘットマン)を設定していて、三人の語り手はそれぞれ物語世界内の情報について、誤解したり曖昧な認識を抱えています。そして三者の語りから、ジュリアの殺人事件を描きます。
ジョエル=ヘッドマン=ジュニアは、母親が殺されたことで父親に大学から呼び戻され、そして事件のことを父から間接的に聞かされます。月明かりの道で何かが現れたようなのですが、彼には何も見えず、父だけはそれを見て恐怖します。
キャスパーの語りは、実は父ジョエルであることが読み取れます。ひどい妄想にとりつかれていて、妻ジュリアの不貞を疑って殺めてしまったことを懺悔します。そして月明かりの道で、ジュリアの霊を見たのでした。
ジュリアの語りは、殺されたあと、霊媒師を通じて語ります。ジュリアは家にいたとき、何かが家に侵入し、身を隠していたところ、男がやってきて殺されてしまいますが、犯人の顔をみることはできませんでした。そして、夫と息子を心配し、月明かりの道に姿を現しますが、夫が犯人と知らないので、咎める意図があるわけではありません。
芥川「藪の中」への影響で知られる本作ですが、こちらはリドル・ストーリーではなく、語り手それぞれの信頼できない語りとすれ違いが描かれるものの、読者の解釈に委ねられている物語世界内の事実関係は乏しいです。
物語世界
あらすじ
最初はジョエル=ヘットマン=ジュニアが語り手です。彼は父親に大学から呼び出されます。母親のジュリアが絞殺されているのが発見されたというのでした。父親は出張から戻ると、家から逃げる男の姿を見たと主張します。そして父が家に入ると、妻が寝室で死んで横たわっているのを発見したのでした。
数か月後、父と息子が月明かりの道を歩いていると、父親が何かを見て突然青ざめ、夜の闇に消えます。
次のパートは、罪悪感に苛まれる、キャスパーと名乗る男(おそらくはジョエル=ヘットマン)によって語られます。キャスパーは夢の中で妻の浮気を疑い、出張から早めに帰ると見知らぬ男が家を出て行くのを見つけます。部屋で怯える妻を見つけると、嫉妬から激怒して妻を殺害します。別の夢では、月明かりに照らされた夜の道で妻の幽霊が現れ、首には絞められた跡が見えます。
最後のパートは、被害者のジュリア=ヘットマンが霊媒師を通して語ります。ジュリアは殺害された夜のことを回想します。家の中に一人でいると、恐ろしい音が聞こえ、何かに追われていると思いました。部屋の隅で身をすくめていると、男がきてジュリアを絞め殺しましたが、彼女はその男の顔を見ていませんでした。その後、夫と息子が悲しんでいるのを見て、ジュリアは霊界から交信し、慰めようとます。ついに月明かりの道に彼らの前に姿を現すことができましたが、彼女の姿が見えたのは夫だけで、彼は恐れて逃げました。
参考文献
・西川正身『孤絶の諷刺家アンブローズ・ビアス』




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