始めに
樋口一葉『にごりえ』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
元禄文学の影響
近代になって、明治二十年代ごろ(1887~96)や1900年代前後に、日本の江戸文芸である元禄文学が着目されていきます。
これはナショナリズムの高まりと連動していて、井原西鶴や近松門左衛門のリアリズムが再度着目され、西洋文学とすりあわされるなかで再解釈されていきました。
最初の元禄文学ルネサンスには一葉と紅葉(『多情多恨』『金色夜叉』)、露伴(『五重塔』)、第二の波では自然主義の作家が元禄文学を参照にして、リアリズムを展開していきました。
本作も近松文学のような、心中を描く物語です。
心中のドラマ
本作はお力と源七という主人公二人の心中を描きます。
丸山福山町の銘酒屋「菊の井」の看板酌婦(私娼)のお力は、何かとお力の話を聞こうとする上客の結城朝之助に淡い恋心を抱くようになるものの、それ以前に馴染みになった客に源七がいました。源七は蒲団屋でしたがお力に入れ込んで没落し、今は妻子ともども長屋で貧しく暮らしています。それでもお力への未練があります。
やがて、お力と源七がそれぞれ受難を味わい、そこから二人が心中する展開が描かれます。
成立背景
下谷龍泉寺町から1894年5月に転居した本郷区丸山福山町には、銘酒屋が並び、そこには私娼が多くいて、一葉は彼女らと交流があったといいます。
一葉の家の隣にあった銘酒屋は「鈴木亭」という店で、主人公の「お力」は、その店の酌婦「お留」がモデルとされます。
結城朝之助は、一葉が恋を諦めた半井桃水が部分的にモデルと思われます。
物語世界
あらすじ
丸山福山町の銘酒屋「菊の井」の看板酌婦(私娼)のお力は、何かとお力の話を聞こうとする上客の結城朝之助に淡い恋心を抱くようになるものの、それ以前に馴染みになった客に源七がいました。源七は蒲団屋でしたがお力に入れ込んで没落し、今は妻子ともども長屋で貧しく暮らしています。それでもお力への未練があります。
盆の7月16日の夜、お力はお客の酒の相手をしているなかでふいに席を立って外に出ます。厭世的になり、人の声も物の音もしない静かな場所へ行きたいと思い、気が狂いそうになりつつさまよい歩いていると、誰かに肩を叩かれ、見ると朝之助でした。
朝之助と一緒に店に戻ったお力は酔って初めて朝之助に不幸な身の上話を語り、それを聞いた朝之助から、出世を望むな、と言われます。お力は驚き、望んでも貧乏暮らしが目に見えていて、玉の輿までは思わないと話し、朝之助の「始めから何も見知つてゐるに隠すは野暮の沙汰ではないか」という申し出をはぐらかし、自身の因果を思い、黙ってしまいます。夜が更けて帰ろうとする朝之助を、お力は引き止め泊らせます。
源七は仕事もままならなくなり、家計は妻のお初の内職に支えられています。そんななか、お力の店の近くに行った息子の太吉がお力から高価なカステラを貰ったことから諍いになり、源七は妻子とも別れます。
その後、お力は源七の刃によって、心中によって亡くなります。




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