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エウリピデス『アンドロマケ』解説あらすじ

エウリピデス
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始めに

 エウリピデス『アンドロマケ』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

アンドロマケの葛藤

 本作のドラマを動かす最大のエンジンは、正妻ヘルメオネ(メネラオスとヘレネの娘)と、戦利品として奴隷にされたアンドロマケ(ヘクトルの未亡人)の激しい対立です。子供が授からないヘルメオネは、アンドロマケが主人ネオプトレモスとの間に息子を生んだことを激しく嫉妬し、魔法で自分を不妊にしたと一方的に恨みます。身分の上ではヘルメオネが上ですが、精神的な誇りや忍耐強さにおいては、かつての王妃であるアンドロマケの方が高貴に描かれます。


​ ​トロイア戦争で全てを失ったアンドロマケの姿を通して、戦争がいかに敗者に残酷であるかが描かれています。彼女はかつての敵の息子に従わなければならない屈辱の中にいます。彼女の存在そのものが、戦争がもたらす不条理と悲哀の象徴です。アンドロマケの息子モロッソスが命を狙われる展開は、戦争の火種を根絶やしにしようとする勝者側の冷酷さを浮き彫りにしています。

戦争

 この作品が執筆された時期はペロポネソス戦争の最中であり、エウリピデスによるスパルタ批判が非常に露骨に表現されています。悪役として描かれるメネラオスとヘルメオネは、卑劣で傲慢、かつ残酷な人物として造形されています。劇中でスパルタ的な狡猾さが厳しく非難されるシーンは、当時のアテナイの観客に向けた政治的メッセージでもありました。


​ ​物語の終盤、女神テティスが現れてアンドロマケの息子がエピロス王家の祖となるという予言を授けます。トロイアの血筋が、かつての敵の土地で生き残り、新たな繁栄を築くという結末は、滅びゆく者の絶望の中にわずかな希望と歴史の連続性を提示しています。

物語世界

あらすじ

 ​トロイアの王妃だったアンドロマケは、戦争に敗れた後、アキレウスの息子ネオプトレモスの奴隷としてテッサリアへ連れてこられました。彼女は彼との間に息子を生みます。​しかし、ネオプトレモスの正妻であるスパルタ王女ヘルメオネは、自分に子供ができないことを逆恨みし、アンドロマケが魔法を使って自分を不妊にしたと言いがかりをつけます。主人のネオプトレモスがデルポイへ出かけて留守の隙に、ヘルメオネは父メネラオスと共謀し、アンドロマケ母子を殺そうと企みます。


​ ​命の危険を感じたアンドロマケは、息子を隠し、自らはテティスの神殿に逃げ込んで庇護を求めます。しかし、狡猾なメネラオスは隠していた子供を見つけ出し、お前が神殿を出て死ぬかそれとも子供が死ぬか選べと彼女を脅します。​アンドロマケは悩み抜いた末、息子の命を守るために神殿を出て、捕らわれの身となります。ところが、メネラオスは約束を破り、母子ともに処刑しようとします。


 ​絶体絶命の瞬間、アキレウスの父(ネオプトレモスの祖父)である老王ペレウスが登場します。ペレウスは、身勝手で卑劣なメネラオスの振る舞いを激しく非難し、老骨に鞭打ってアンドロマケたちを救い出します。​気圧されたメネラオスは、急用ができたと言い訳をして、娘ヘルメオネを置き去りにしてスパルタへ逃げ帰ってしまいます。


 ​父に見捨てられ、主人の帰宅後の報復を恐れて絶望するヘルメオネの前に、かつての婚約者オレステスが現れます。彼はヘルメオネを連れ出すと同時に、ネオプトレモスを恨んでいたため、デルポイで彼を暗殺する計画をすでに実行に移していました。​まもなく、ネオプトレモスの死を告げる使者が到着し、彼の遺体が運び込まれます。孫を失ったペレウスは深い悲しみに沈みます。


 ​悲劇で終わるかに見えたその時、女神テティス(アキレウスの母)が天から現れます。彼女は指示と予言を与えます。 ネオプトレモスの遺体をデルポイに埋葬すること。​アンドロマケのはヘクトルの親族(ヘレノス)のもとへ行き、再婚すること。アンドロマケの息子が将来、エピロス王家の祖となり、アキレウスとトロイアの両方の血を後世に伝えること。


 ​ペレウスは神の意志を受け入れ、物語は静かな終焉を迎えます。

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