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デュラス『愛人』解説あらすじ 

デュラス
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始めに

 デュラス『愛人』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

デュラスの作家性

 デュラスが最も初期に影響を受けたのがスタンダールです。登場人物が抱く情熱や、心理描写、ロマン主義はスタンダール譲りと言えます。

​ ヘミングウェイからは、ハードボイルド風の端正な描写に影響が見えます。プルーストからは代表作『ラマン(愛人)』に見られるような、過去と現在が混濁し、記憶の断片を繋ぎ合わせる手法における影響が見えます。

​ またデュラスはアラン=ロブグリエらを中心としたヌーヴォーロマンの運動に一時的に身を置き、影響されます。

異文化のなかで

 支配層だが貧しい白人(フランス人)の少女と、被支配層だが富裕なアジア人(中国人)の男性というねじれた力関係が、二人の愛に独特の緊張感を与えています。二人の関係には常に金の影がつきまといます。当時の彼らが生きるための切実なリアリティとして描かれています。

​ 投資に失敗し、精神的に追い詰められた母親を少女は愛しながらも、その不幸を憎み、そこから逃れたいと願っています。暴力的な長兄への恐怖と嫌悪、弟への愛が描かれ、家族という逃れられない環境が、少女を外の世界へと駆り立てます。

語りの構造

​ ​この小説は、老いた語り手が過去を振り返る形式をとっています。出来事が時系列ではなく、断片的なイメージとして現れます。

​ また若くして「壊れてしまった」自分の顔を語ることで、少女時代に経験した情事が、その後をいかに決定的に変えてしまったかが示されます。

物語世界

あらすじ

 1930年代のフランス領インドシナ、メコン川を渡る渡し舟の上で、15歳の白人の少女が27歳の裕福な中国人の青年と出会う場面から物語は動き出します。少女は、母親の古い絹のドレスに、場違いな男物のフェルト帽、そして金色のラメが入った靴という奇妙な装いをしていましたが、その危ういバランスが青年の目を釘付けにしました。青年は自身の黒い高級車で彼女を送り届け、そこから二人の密やかな関係が始まります。

​ 彼らが逢瀬を重ねたのは、ショロンにある青年の独身寮のような部屋でした。少女はその部屋の喧騒と孤独の中で、初めての性愛と肉体の悦楽を知ります。しかし、二人の間にあるのは純粋な愛だけではありませんでした。少女の家族は、かつて教育者だった母親が土地の詐欺に遭って破産しており、悲惨な貧困の中にありました。母は精神を病み、長兄は暴力的で家族の金を使い込み、少女が溺愛する次兄は長兄の影で怯えて暮らしています。

 家族は少女が中国人の「愛人」から金を得ていることを黙認し、彼を食事に招いても一言も口をきかず、人種的な偏見から彼を徹底的に無視して金だけを利用するという、冷酷で奇妙な関係を築いていました。

 ​少女自身もまた、自分が彼を愛しているのか、それとも家族を救うための金や、退屈な日常からの逃避を求めているのか、その境界線に惑わされ続けます。

 青年は彼女を深く愛していましたが、彼の父親は中国人としての伝統と誇りを重んじ、白人の貧しい少女との結婚を断固として許しませんでした。結局、青年は父親が決めた裕福な中国人の娘と結婚することになり、少女もまた家族と共にフランスへ帰国することが決まります。

 ​別れの日、少女はフランスへ向かう大きな客船のデッキに立っていました。船がゆっくりと港を離れていくとき、彼女は岸壁の遠くに、あの黒い高級車が停まっているのを見つけます。青年は車から降りることなく、じっと船を見送っていました。その時、少女は自分が彼をどれほど深く愛していたかを初めて自覚し、静かに涙を流します。

 ​長い年月が経ち、少女はフランスで作家として名を成しました。ある日、彼女のもとに、かつての恋人であるあの男から電話がかかってきます。彼は仕事でパリに来ており、彼女の声を聞きたかったのだと言います。そして、自分は今でも君を愛している、昔と変わらず今も愛しているし、死ぬまで君を愛し続けるだろうと告げるのです。

 この告白によって、かつての植民地での激しく、そして報われることのなかった愛の記憶が、永遠のものとして完結します。

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