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スタインベック『エデンの東』解説あらすじ

スタインべック
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始めに

 スタインベック『エデンの東』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

年代記として

 南北戦争から第一次世界大戦までのアメリカ合衆国カリフォルニア州サリナスを舞台に、創世記のカインとアベルの物語をモチーフとして、アイルランド移民であるサミュエル=ハミルトン家と、東部から来たアダム=トラスク家の二つの家族を主人公に物語を展開していきます。

 親子三代の年代記で、アダム=トラスクとその子キャルとアーロンの二代が主人公格で、前半部分でアダムとその兄弟チャールズ、父親サイラス、アダムの妻キャシーの物語が語られます。

 映画版では、特にキャルの世代のエピソードに絞って展開しています。

聖書的モチーフ

 本作は旧約聖書の創世記におけるカインとアベルの確執、カインのエデンの東への逃亡の物語を題材に、父親や母親と兄弟の確執を描く内容になっています。

 タイトルにある「エデンの東」とは、旧約聖書にてカインが弟のアベルを殺害し、神に追放された後に行き着いた場所です。そこはエデンのように神の恩寵はない土地で、 往々にして荒廃した暴力や肉欲の支配する場所として描かれます。

 「ティム シェル」=「汝、意思あらば、可能ならん」が作品のテーマで、物語はカインとアベルの象徴のようなアダムと弟チャールズ、キャルと弟アーロンを設定しつつ、神話のカインの罪や宿命を意思の力で乗り越えようとする様を展開します。

親子の物語

 物語でカインとアベルの象徴になるのがアダムと弟チャールズ、そしてアダムの双子の息子であるキャルとアーロンです。

 チャールズは父サイラスが兄だけを愛していることを知って、兄を半殺しにしたりもしますが、兄が入隊してから農場経営に専念し、次第に兄への態度を軟化させていきます。

 キャルも父アダムに弟アーロンばかりが愛されていることや、自分の粗野で反抗的な性格に悩んだりします。父に認められたいと願い商売で成功するものの、それを貧しい農民の搾取により稼いだ金だとしてアダムにはねつけられ、怒りに駆られます。そして、アーロンを母ケイト(キャシー)に引き合わせてしまったことで、悲劇が起こります。

 アダムとアーロンの母キャシーは、昔に家を出ており、いまはケイトと名を変えて前の経営者を殺して乗っ取った売春宿を営んでいます。キャシーは全体的にアダムと近い荒んだ性格です。

 母ケイトの正体を知ったのに衝撃を受けて、ショックから逃げるようにアーロンは第一次大戦に従軍して戦死します。それを受けて、アダムも脳卒中で瀕死になります。けれどもアダムは最後に、キャルを赦し、「ティム シェル」と告げます。

 間接的に弟アーロンを殺めてしまい、エデンの東のような荒涼とした境遇や精神に支配されそうになるものの、父の遺言を胸に、キャルは宿命に抗おうとします。

物語世界

あらすじ

 アダム=トラスクは、亡き父から財産を相続したばかりの新婚夫婦で、カリフォルニアに到着し、妊娠中の妻キャシー=エイムズとともにサリナス渓谷に定住します。アダムに内緒で、キャシーは編み針で妊娠中絶を試みていました。新居で、キャシーはアダムに、カリフォルニアに引っ越したくなかったし、できるだけ早くここを離れるつもりだといいますが、アダムはこれを一蹴します。

 キャシーは双子の男の子を出産しますが、アダムの肩を撃って逃げだしてしまいます。アダムは生き残りますが、精神的にふさぎ込みます。中国系アメリカ人の使用人リーと隣人で発明家のアイルランド移民のサミュエル=ハミルトンがアダムを奮起させ、アダムは聖書の登場人物にちなんで息子たちにアーロンとカレブと名付けます。

 リーはアダムとサミュエルの良き友人となり、家族の一員として迎え入れられ、カインとアベルの物語について哲学的な話をします。リーはサンフランシスコに住む親戚ら中国人学者のグループがカインとアベルの物語の教訓を追究しようと2年間ヘブライ語を勉強したことを伝えます。ヘブライ語の「ティムシェル」が「汝、意思あらば、可能ならん」という意味であることを見つけ、これは作品のテーマになっています。

 一方、キャシーはサリナス市で評判の良い売春宿で娼婦になります。ケイト=アルビーと名前を変え、女主人に取り入り彼女を殺害して、その店を相続します。キャシーは新しい売春宿をサディズムの温床にし、またサリナス渓谷の富裕層や権力者に対する脅迫の源になり、悪名を広めます。

 アダムの息子、カレブ (「キャル」) とアーロン (「アロン」) は正反対の性格です。アーロンは高潔で責任感が強く、キャルは粗野で反抗的です。幼い頃、アーロンは裕福な家庭の少女アブラ=ベーコンと出会い、惹かれ合います。。

 サミュエルに感化されて、アダムは下手な事業を始め、家族の財産のほとんどを失います。兄弟は、特にアロンは、父親が町の笑いものになり、その失敗を仲間から嘲笑されていること戦慄します。

 兄弟の学校生活は終わりが迫り、キャルは農業の道を進むことをきめ、アーロンは聖公会の牧師になるために大学に進学します。キャルは落ち着かず、欠点に対する罪悪感に悩み、人を避け、夜遅くに町をさまようようになります。そんななか、キャルは母親が生きていて、売春宿の女主人であることを知ります。キャルが母ケイトに会いに行くと、彼女は意地悪そうに、自分たちはよく似ていると言います。ケイトは、ただ怖かったから、逃げたのだといいます。

 キャルは、現在自動車ディーラーとして成功しているサミュエルの息子ウィルとビジネスを始めます。第一次世界大戦を利用してサリナス渓谷で栽培した豆をヨーロッパ諸国に売って利益を上げ、父親の承認を得て借金を返済しようとします。これは成功を収め、現金 15000 ドルのプレゼントをアダムに感謝祭で渡そうとします。

 アーロンは休暇でスタンフォード大学から帰ります。アーロンはまだ大学を中退するつもりだと父親に告げていません。一方、キャルは夕食時にアダムに稼いだ金を渡し、父親が誇りに思ってくれることを期待します。しかしアダムは受け取ることを拒否し、キャルが搾取した貧しい農民に返すように言います。

 自分に関心を向けない父への怒りと父に愛される弟への嫉妬から、キャルは、アロンを母親に会わせます。アロンはケイトの姿を見て、嫌悪感を覚えます。自己嫌悪からケイトは、自分の財産をアロンに譲って自殺します。

 理想主義者のアーロンは大きな衝撃を受け、第一次世界大戦に従軍しようと陸軍に入隊します。アロンは戦死し、アダムはリーからそれを聞いて脳卒中になります。アロンが従軍するなか、アロンの恋人アブラと関係を持ち始めたキャルは、一緒に逃げるよう説得しようとします。しかし彼女は、キャルに実家に戻るよう説得します。

 リーは、瀕死のアダムに息子キャルを許すように懇願します。アダムは、キャルを許すと示し、「ティムシェル」と告げて、宿命を乗り越えるように伝えます。

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