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独歩『武蔵野』解説あらすじ

国木田独歩
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始めに

 独歩『武蔵野』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ロマン主義とキリスト教

 独歩は東京専門学校の頃から教会に通うようになり、日本基督教会の指導者である植村正久を崇拝していました。1891年1月4日に植村正久より洗礼を受けます。

 文学ではワーズワースやツルゲーネフ、カーライルなどを好んでいて、本人の創作はロマン主義からやがて自然主義へと移りました。

 ワーズワースとカーライルは日本ではなじみが薄い作家ですが、ともにイギリスのロマン主義を代表する作家です。ワーズワースは湖水地方を愛し、イギリス国教徒でしたが、ワーズワースなどロマン主義の作家にとって、自然は単なる物質以上のものであって、それは神が与えてくださった恩寵でした。なので、自然を通じた神との交霊をなそうとし、そのような自然への観察のまなざしがワーズワース作品には通底しています。

ツルゲーネフ「あひびき」

 本作はツルゲーネフ『猟人日記』の抄訳である四迷翻訳の「あひびき」からの影響が顕著で、引用が捧げられています。

 ツルゲーネフ『猟人日記』は、西欧派という自由主義者であるツルゲーネフが、作者の分身のような猟人(猟師)を語り手にして、ロシアの農村を渡り歩いた経験を物語る短編集です。ロシアの農村とその中に息づく人々の生活の美しさを伝えつつ、そうした美しい民衆の魂を搾取するロシアの農奴制について批判的に描写していきます。

 ツルゲーネフ『猟人日記』を踏まえる本作は、東京武蔵野の美しさを、自然の美と人の生活の美が融和し調和する世界の美しさとして称揚します。『猟人日記』に描かれるロシアの農村のように、そこには自然と人の生活の織りなす美しさがあって、語り手はそこに社会の縮図のようなものを見出すのでした。

物語世界

あらすじ

 語り手は武蔵野について話します。自分の日記をもとに明治29年秋の初めから春の初めまでの武蔵野の風景を語ります。

 昔の武蔵野は萱原の美と伝えられているものの、今の武蔵野は林です。

 日本人は落葉林の美を知らなかったものの、語り手はツルゲーネフの二葉亭四迷訳「あいびき」(『猟人日記』の抄訳)によりそれを知ったのでした。

 黄葉し落葉した後の静けさ、そこに聞く音、時雨、日の光をたたえます。

 語り手は、秋から冬の風景の特徴をとらえます。大洋のように高低起伏した地形の中の水田や畑、農家を描写し、自然と人の生活が調和する武蔵野の特色を伝えます。

 そしてまた、武蔵野の路について述べながら林と野が入り乱れて、生活と自然がこのように密接している場所は他にないとします。

 3年前の夏、友人と小金井に行ったとき、立ち寄った茶屋の老婆が、桜のある春ではなく夏に来た2人に呆れていたのを語ります。

 語り手は武蔵野の夏の光の素晴らしさを語ります。

 武蔵野の範囲を東京市の町外れまで含むものとし、次に武蔵野の水流が町の上水に通じているのを話します。

 生活と自然とを配合した場所が自分の詩興を喚び起こひ、それは社会というものの縮図でも見る思いをさせるからでした。

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