PR

川端康成『禽獣』解説あらすじ

川端康成
記事内に広告が含まれています。

始めに

 川端康成『禽獣』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ドストエフスキー流の心理リアリズム、モダニズム(ジョイス、横光利一)、少女小説(内藤千代子)

 川端康成が好んだ作家はまずドストエフスキーなどの心理リアリズム作家で、サリンジャー(『ライ麦畑でつかまえて』)にも似た理想主義的な少女の表象はまずドストエフスキー(『地下室の手記』『虐げられた人々』)の影響を伺わせます。

 本作もドストエフスキー『地下室の手記』にも似た、視点人物である「彼」の鬱屈した厭人癖と純粋な子供や動物への関心が描かれ、このあたりはドストエフスキーに影響されたサリンジャーとかなり重なります。

 また内藤千代子の少女小説風の少女の表象の影響も顕著です。

モダニズム(ジョイス,横光利一)、異質物語世界の語り手、島村へ焦点化

 川端康成は新感覚派を代表するモダニズム文学の作家として知られています。ジョイス(『ユリシーズ』)、横光利一(『機械』)は意識の流れの手法を展開し、一人称的視点のリアリズムを展開しましたが、本作も一人称的視点の不確かさ、リアリズムを描く内容と言えます。

 本作における語り手は異質物語世界によるもので、「彼」に焦点化が図られます。フラッシュバックやマインドワンダリングのような形で彼の過去も詳細に描かれます。

ペット

 1929年9月、浅草公園近くの下谷区上野桜木町44番地へ転居し、その後下谷区上野桜木町36番地に移った川端康成でしたが、この頃から小鳥や犬を多く飼い始めます。

 当時は中産階級の動物飼育ブームになっていて、川端も熱中しました。そのことは本作や「水晶幻想」などの背景にもなっています。

物語世界

あらすじ

 昔の女・千花子の舞踊会を観にいくためにタクシーで日比谷公会堂に向っていた「彼」は、禅寺の前の道で葬儀の渋滞に巻き込まれます。放鳥の籠を載せたトラックからの鳥の鳴声で、白日夢から目が覚めた「彼」は、押入れに放置したままの菊戴の番の屍を思い出します。

 独身の「彼」は小鳥や犬が好きで、我のある人間よりも小動物に囲まれていたく思います。「彼」は、動物の生命や生態を理想の鋳型にし、人工的に良種へと改良する動物虐待的な愛護者たちを、冷笑しつつも容認します。

「彼」は、ボストン・テリアの分娩に立会いながら、雌犬の顔から10年前の千花子を思い出します。千花子は幼い娼婦でしたが、ハルビンで踊り子となり、帰国後は伴奏弾きと結婚し、舞踊会を催すようになりました。再会した千花子の踊りに「彼」は惹かれるものの、千花子の踊りは、出産してから衰えます。「彼」はそんな千花子を叱るのでした。

 回想の中、「彼」は捨てられた雲雀の子を眺めている間に、菊戴を水浴びさせすぎて、死なせてしまいました。その後小鳥屋が持ってきた新しい菊戴も水浴をきっかけに弱らせ、介抱もせずに見殺しにしました。

 日比谷公会堂で千花子の舞踊会を観た「彼」は、彼女の踊りの堕落に目をそむけます。楽屋を覗くと、千花子は若い男に化粧をさせていて、その死顔のような顔を見て、「彼」は10年近く前、千花子と心中しようとしたことを思い出します。千花子は「彼」に殺されようとしていたものの、その姿で「彼」は虚無のありがたさに打たれ、心中を思い止まります。

「彼」は楽屋の廊下で、千花子の元亭主に会います。その伴奏弾きは、しきりに千花子の踊りを褒めます。

 「彼」は自分も何か「甘いもの」を見つけなければ思うと、一つの文句が浮んできます。それは「彼」は近頃、好んでいた16歳で死んだ少女の遺稿集で、娘の死化粧をした母が、少女の死んだ日の日記の終わりに付していた文句でした。「生れて初めて化粧したる顔、花嫁の如し」と。

参考文献

小谷野敦『川端康成伝-双面の人』(2013.中央公論新社)

コメント

タイトルとURLをコピーしました