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ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』解説あらすじ

ブルガーコフ
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始めに

 ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ロマン主義などの影響

 ブルガーコフはゲーテ、ゴーゴリ、プーシキンなどのロマン主義、ドストエフスキー、ディケンズなどの写実主義からの影響が顕著です。

 本作は特にゲーテ『ファウスト』の影響が顕著で、ドタバタやナンセンス、恋人たちの救済などのプロットが共通しています。

 ゴーゴリ「鼻」、ドストエフスキー「分身」のような、幻想文学要素が引き起こすドタバタが展開されていきます。

 またさらにゲーテのルーツであるシェイクスピア『十二夜』『夏の夜の夢』などとも近く、祝祭的儀礼や風習を背景にして、既成の秩序(「生と死」「フィクションと現実」「過去と現在」など)が混沌とするさまを描きます。

2つの舞台とメタフィクション

 この小説には二つの舞台があります。一つ目は1930年代のモスクワで、サタンがヴォランド教授に扮して総主教の池に現れます。ヴォランド教授はグロテスクな格好をした従者コロヴィエフ、黒猫のベヒモス、殺し屋のアザゼロ、女吸血鬼ヘラを従えています。彼らは文学界のエリートと彼らの労働組合であるマソリットを標的にしており、その本部はグリボエードフ・ハウスにあります。マソリットは官僚、不当利得者、皮肉屋といった腐敗した社交界の名士たちで構成されています。

 二つ目の舞台はポンティウス=ピラトのエルサレムです。ピラトによるイエスの裁判、イエスへの親近感(そして精神的な必要性)の認識、そしてイエスの処刑へのしぶしぶの同意が描かれます。このエルサレムのパートは後に巨匠が書いた小説であることが明かされます。

 エルサレムのパートを構成する章は、モスクワの登場人物の生活に織り込まれています。またモスクワでベルリオーズとベズドムヌイを訪ねたヴォランドは、エルサレムでのイエスの裁判に居合わせたと主張し、そしてイエスの弟子マタイは、小説の終わりにモスクワに現れます。

 このような構成によって、「現在と神話の時代」、「現実と神話」という境界線が曖昧なものになっていて、既成の秩序の混乱が展開されます。

物語世界

あらすじ

第一部

 5月のある日、モスクワのパトリアルシュ公園で文芸雑誌の編集長ミハイル=アレクサンドル=ベルリオーズと詩人のイワン=ニコラエヴィチ=ポヌイリョフ(ベズドームヌイ)が話をしていました。ベルリオーズによると、イエス=キリストにまつわる話は後世の作り話で、キリストは実在しないそうです。

 通りかかった一人の外国人男性が会話に口を挟み、キリストが実在していたことを証明すると言います。この外国人はその場に、つまりキリストを処刑したポンティオ=ピラトの屋敷に居たというのです。キリスト裁判の様子を語りだし、編集長ベルリオーズも詩人ベズドームヌイも呆れます。

 このヴォランドという男は未来を予言し、編集長ベルリオーズは予言通り電車に撥ねられて死亡します。やがて彼はいなくなり、詩人ベズドームヌイは気を取り乱してストラヴィンスキイ教授の病院に入院します。

 ヴォランドの手下コローヴィエフがベルリオーズが暮らしていたアパートに現れて彼の部屋を借りたいと言います。コローヴィエフはアパートの住居者組合の議長ボソイを罠に掛け、警察に連行させます。ヴァリエテ劇場でヴォランドの公演が行われる運びとなり、ヴォランドの手下の黒猫が司会者ベンガリスキーの首をもぎ取るパフォーマンスを行い、その場は混乱します。その後総務部長ヴァレヌンカが現れ、経理部長リムスキーは行方をくらませます。

 ベズドームズイの病室に謎の客(巨匠)が現れベズドームヌイのパトリアルシュ公園で起きた話を真剣に聞きます。その事件は悪魔の仕業だとして、ポンティオ=ピラトの屋敷の話を続けます。謎の客はイエスとピラトにまつわる小説を書いたものの批評家に非難され、原稿を暖炉で燃やしたそうです。

 物語はエルサレムにうつり、ベズドームズイはマタイが目撃したイエスの処刑を夢に見ます。夢はイエスと他の2人の囚人が木の柱に吊るされて処刑されるバルド山に向かっているところから始まります。マタイはイエスを拷問の死から救おうと、殺すためにナイフを盗むものの、間に合いません。イエスは十字架にかけられ、何時間も耐え難い暑さの中で苦しむものの、死刑執行人が水を差し出し、槍で心臓を刺して殺します。イエスが死ぬと、大嵐が起こり、空は雷と稲妻で満たされ、下にいる人々に激しく降り注ぎます。マタイはイエスの遺体を肩に担いで運び去ります。

 モスクワでは、ベルリオーズの叔父マクシミリアン=アンドレーヴィチ=ポプラフスキイが、ベルリオーズの部屋を相続する為にモスクワに到着しますが、ヴォランドやその手下達によって追い返されます。

 ヴァリエテ劇場のビュッフェ主任アンドレイ=フォーキチ=ソーコフはヴォランドによって財産の額を言い当てられたり余命まで宣告されて気が動転し、医師のグジミンのもとを訪れるものの相手にされません。しかし、そのグジミン自身も神秘に翻弄されます。

第2部

 若い科学者と結婚していたマルガリータ=ニコラーエヴナは、愛人である巨匠を忘れられません。街を歩いていると、彼女は偶然ベルリオーズの葬儀に通りかかります。そこでヴォランドの手下アザゼロに話し掛けられ、パーティーに参加して貰う為に「マルガリータという名の女性を探していて、参加してくれないか」と言われます。アザゼロから渡されたクリームを体に塗ると、マルガリータは空を飛べるようになります。

 マルガリータはアザゼロの提案を承諾してマルゴ女王としてパーティーに参加します。そこにはローマ皇帝カリギュラやメッサリナ、イワン雷帝の右腕であったマリュータ=スクラートフやルドルフ皇帝といった多くの歴史上の存在などがいました。

 舞踏会が終わり、マルガリータとヴォランド一味は食事を取ります。「何か言い残す事はあるか」と尋ねられたマルガリータは「何も無い」と答えます。すると、ヴォランドは「決して他人に願い事をしてはならない、特に強い者には」と語り、「舞踏会の御礼に何が欲しい」と訊かれた彼女は、「フリーダの枕元にハンカチを置かないで欲しい」と要求します。しかしそれは拒否され、再び訊かれた彼女は「私の恋人の巨匠を帰して欲しい」と言います。ヴォランドは巨匠を呼び出し、二人は再会します。ヴォランドは続いて巨匠の原稿を復活させ、そこには次の様な話が書かれています。

 雷鳴の中、ピラト総督はイエスを処刑した事について心境が揺れます。事前にイスカリオテのユダが殺害されるとの情報を掴んでいた総督は部下のアフラニウスに警護を命じます。しかし、ユダは殺害されてしまうのでした。警護命令は実は暗殺命令でした。絶望したマタイはユダを殺そうとするものの、総督は彼は既に殺されている旨を説明し、マタイに「誰が殺したのか」と訊かれた総督は「この私だ」と答え、ニサン十五日の夜明けを迎えたところで巨匠の原稿は終わっています。

 その後モスクワ市警はベルリオーズ死亡事故やヴァリエテ劇場での騒動について、そしてベルリオーズの首が盗まれた事件について捜査を始めたものの、ヴォランドを発見できません。

 やがて猫によってベルリオーズが暮らしていた50号室は火が放たれ全焼します。そして巨匠とマルガリータはヴォランドによって天界に連れて行かれ、そこで誰にも邪魔されない永遠の幸せを与えられます。

 詩人ベズドームヌイは歴史哲学者イワン・ニコラエヴィチ・ポスイリョフとして生活し始め、一連の事件について思い出さなくなりました。

参考文献

・Chudakova, Marietta. ”Mikhail Bulgakov: The Life and Times”

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