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モーパッサン『女の一生』解説あらすじ

モーパッサン
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始めに

 モーパッサン『女の一生』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

モーパッサンの作家性

 モーパッサンはギュスターヴ=フローベールの弟子で、フロベールの家で、イワン=ツルゲーネフ、ゴンクール兄弟、エミール=ゾラ、ドーデーらと交流し、1880年、ゾラを中心として普仏戦争を扱った作品集『メダンの夕べ』に『脂肪の塊』が掲載され、世間に認められました。師匠筋のフローベールや自然主義のゾラと比べると長編の数、水準、評価はぼちぼちで短編がメインの作家です。フローベールにも似たシニカルで切れのいい短編はモーパッサンの持ち味です。

 本作はしかし長編で、師匠のフローベールの『ボヴァリー夫人』との類似が顕著で二番煎じにも見えるものの、独自のアレンジを加えています。

『ボヴァリー夫人』との比較

 夢見がちなヒロインが結婚に幻滅してさまざまな不幸を味わうというプロットはおおむね『ボヴァリー夫人』と共通しています。

 ただ結構相違点もあり、まずボヴァリー夫人であるエマは農民の出であるのに対して、本作のヒロインはもともと貴族です。

 それにボヴァリー夫人は夢見がちなあまり贅沢やロマンスを渇望して借金や不倫で夫を不幸にして自らも破滅するのに対して、本作のヒロインのジャンヌはほとんど受動的で、悪いことは全然しません。ナイーブですが夫の不倫や育児に悩む健気な女性です。

 ジャンヌの夫ジュリアンは不倫し、不倫相手の夫に殺されてしまいます。やがて不幸の中息子ポールを溺愛すると、ポールは完全に不良に育ち、ギャンブルや女遊びで家族の財産の大半を使い尽くしてしまいます。

 ジャンヌにとって救いとなるのは、家政婦だったロザリーとの友情で、ジュリアンと関係を持たされたのちに一家から追放されたロザリーでしたが、あとになってジャンヌと再会し、懸命にジャンヌを支えてくれます。

 最後にはポールの子供として孫を授かり、ジャンヌにとって希望となります。

 不幸な物語ですがロザリーとジャンヌのしたたかな生が描かれ、『ボヴァリー夫人』に比べると希望のあるラストです。

物語世界

あらすじ

 ジャンヌは世間知らずな貴族の娘で、自分の将来についてロマンチックな考えに夢中です。彼女は両親である男爵と男爵夫人と一緒に、ノルマンディーの海辺にあるポプラと呼ばれる一家の領地で暮らしています。

 若くハンサムな子爵ジュリアンがジャンヌに求愛します。彼女はジュリアンとの結婚に同意し、コルシカ島で新婚旅行に出かけます。そこで彼女は肉体関係を持ちます。

 ポプラ家に戻ると、ジャンヌは結婚後の将来に希望と期待を抱いていたものの、ジュリアンは変貌します。使用人に対して無礼で、けちで、残酷な風になり、ジャンヌへの関心も薄れます。

 ある日、ジャンヌが妹のように思っていたジャンヌの幼なじみのメイド、ロザリーが倒れ、子供を産みます。ジャンヌはロザリーとその赤ん坊を助けようとし、また、ロザリーの名誉を傷つけた悪党の名前を突き止めようとします。

 ある夜、熱で意識が朦朧としたジャンヌは、ロザリーを探して家中をよろめきながら歩き回り、ジュリアンのベッドにいるロザリーを見つけます。取り乱したジャンヌは、寒い夜に家を飛び出し、崖に着くと自殺を考えます。母親を傷つけるという考えだけが、ジャンヌが飛び降りるのを思いとどまらせます。

 ジャンヌは家に連れ戻され、薬を飲まされ、ジュリアンにすべては妄想だったと言われます。ジャンヌの両親は最初、ジュリアンを信じます。その後、村の司祭、アベ=ピコが召喚されます。ロザリーが司祭の前で嘘をつかないことを知っていたジャンヌは、ロザリーに、男爵と男爵夫人の前で夫と寝たことを認めさせます。

 男爵はロザリーをポプラ村から追放するものの、広大な土地を与えてやります。司祭は、男は皆妻を裏切ることを指摘し、男爵も同じことをしているとして、ジュリアンに対する男爵の怒りを和らげます。

 ロザリーは結婚し、両親と司祭は、子供のためにもジュリアンにもう一度チャンスを与えるようジャンヌを説得します。

 やがて息子ポールを出産したジャンヌは、子供を唯一の生きる理由にしようとします。肥満から男爵夫人は倒れ、突然亡くなります。

 その後、母親が大切にしていた古い手紙の山を読むと手紙から、ジャンヌは母親が浮気をしていたことを知ります。ジャンヌは母親に裏切られたと感じ、これが人間の性に対する嫌悪感を増大させます。

 ジャンヌはもう一人の子供が欲しいと思っているが、ポールさえ望んでいない夫をどう説得したらよいかわかりません。ピコ神父はジャンヌに、妊娠したふりをするようアドバイスし、そうすれば警戒を緩めるだろうと言います。この方法はうまくいきますが、ジャンヌは流産します。

 ジュリアンは、馬に乗って行ける距離に住む、同年代の貴族夫婦をジャンヌに紹介します。伯爵夫人は活発でジャンヌに深い愛情を注いでおり、伯爵は赤毛の巨漢で、不器用だが妻を愛しています。ある日ジャンヌはジュリアンと伯爵夫人が不倫関係にあることに気づきます。

 村の司祭のピコ神父は、高齢のため引退し、はるかに若いトルビアック神父が就任します。トルビアック神父は、村の性道徳に怒ります。神父はすぐにほとんどの農民を遠ざけ、男爵は彼を毛嫌いします。しかし、ジャンヌも最初はその妥協のない情熱に慰められます。

 ある日、神父はジュリアンの不貞についてジャンヌを問い詰めます。神父は、ジャンヌが夫の不倫を黙認していることを非難するものの、ジャンヌはそれを止める方法はないと神父に話します。神父は納得しないまま、その場を去ひます。ジャンヌがジュリアンの情事に耐え、男爵が反宗教運動を展開するなか、司祭は一家の公然たる敵となります。

 ある嵐の夜、ジュリアンと伯爵夫人は崖のそばの小さな小屋に逃げ込みます。トルビアックから妻の浮気を聞かされた伯爵はジャンヌの家に押し入り、妻に会うよう要求します。しかしそこにはおらず、伯爵は馬で妻とジュリアンが嵐をしのいでいる海辺の小屋を見つけます。伯爵は激怒し、崖の端から小屋を突き落とし、馬で逃げます。ジュリアンと伯爵夫人は小屋の中で崖に押しつぶされて死にました。

 男爵と若い司祭の争いがエスカレートします。トルビアックは、自分の説教に耳を傾けようとしない若い未婚のカップルに激怒し、子供たちが犬の出産を応援しているのをみて絶望します。すべての「性」への憎悪に駆られたトルビアックは、犬を殴り殺し、文字通り子犬を絞め殺そうとします。男爵が介入し、司祭を殴りとばします。子犬だけが生き残り、ジャンヌはそれをマーダーと名付けて飼うのでした。

 ジャンヌ、男爵、そしてジャンヌの未婚の叔母リゾンは、ジャンヌの息子ポールを育てます。ポールが「3人の母親」と呼ぶこの3人は、ポールを溺愛します。

 ポールが成長すると、ジャンヌは、ポールが授業をさぼり、ギャンブルをし、売春婦を訪ねているのに気が付きます。ポールは多額の借金を抱え、彼を救うために男爵は家族の財産を売ります。ポールはギャンブルですべてを失ってしまいます。そしてジャンヌが「ふしだらな女」と呼ぶ若い女性とパリに暮らすようになります。

 そんな中、まず男爵が亡くなり、次に叔母リゾンが亡くなります。

 ジャンヌは途方に暮れるものの、ロザリーと再会します。ロザリーの結婚はジャンヌのよりもうまくいき、息子はまともな働き者の若者になりました。ロザリーは男爵から与えられた何エーカーもの土地で、一人でうまくやっていました。

 ロザリーはジャンヌの世話人になり、ジャンヌの財政を管理し、ジャンヌが無分別にお金を使うことがないよう気を配ります。また、ポールが暴走するのも止めようとします。

 しかしジャンヌの財政はポールのギャンブルのせいで逼迫し続け、ロザリーはポプラの土地を売らざるを得なくなります。幼少期を過ごした家を離れ、別の町の小さな家に引っ越すことになります。

 ポールは、助けが必要なときだけ手紙を書いてきますが、7年間母親を訪ねていません。ジャンヌは自らパリへ行き、ポールを説得して戻って一緒に暮らすようにしようと決意します。しかし、到着すると、ポールとその愛人は借金返済から逃れるために出ていました。ジャンヌはポールを探すのに協力してくれるよう人々に頼むものの、ポールの債権者たちが次々に訪ねてきて、代金を払うよう要求します。ジャンヌはそれに応じ、パリに持ってきたお金をすべて失うのでした。

 パリから戻った後、ジャンヌは生きる意欲を失います。しかしロザリーは、貧しい女性に比べれば自分は幸運だとジャンヌに思い出させます。

 やがてポールから手紙が届きます。彼の恋人が妊娠しているのです。ポールはジャンヌに、赤ん坊を連れて来るように頼みます。ロザリーは赤ん坊を迎えに行きますが、母親は出産中に亡くなります。ロザリーは赤ん坊を連れて戻り、ジャンヌの人生は喜びに包まれます。

 現実的なロザリーの「人生は、自分が思うほど良くも悪くもない」という言葉で物語は終わります。

参考文献

アルマン・ラヌー (著), 河盛 好蔵 (翻訳), 大島 利治 (翻訳)『モーパッサンの生涯』

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