始めに
モーパッサン「隠者」解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
モーパッサンの作家性
モーパッサンはギュスターヴ=フローベールの弟子で、フロベールの家で、イワン=ツルゲーネフ、ゴンクール兄弟、エミール=ゾラ、ドーデーらと交流し、1880年、ゾラを中心として普仏戦争を扱った作品集『メダンの夕べ』に『脂肪の塊』が掲載され、世間に認められました。師匠筋のフローベールや自然主義のゾラと比べると長編の数、水準、評価はぼちぼちで短編がメインの作家です。フローベールにも似たシニカルで切れのいい短編はモーパッサンの持ち味です。
語りの構造
友人たちと一緒に、カンヌからラ・ナープルの間の広い平野に住む老隠者に会いに行った帰りに、仲間の一人が話を始め、二人の世捨て人を知っているが、一人は女性で一人は男性だった、と語り、その男性に会いに行った話が物語の中心です。この男が中心になっている隠者です。
物語は語り手の伝聞語りを通じて隠者の男の語りも展開されていき、その過去が物語られていきます。
プロットとしては、隠者がそのような生き方をするようになったのは、戯れに関係をもった女性が、かつて里子に出した自分の娘だったことに気がついて、絶望したからという他愛ないものです。とはいえ、語りの工夫が光ります。
物語世界
あらすじ
友人たちと一緒に、カンヌからラ・ナープルの間の広い平野に住む老隠者に会いに行った帰り。
仲間の一人が話を始めます。二人の世捨て人を知っているが、一人は女性で一人は男性だった、と語り、その男性に会いに行った話が中心です。
彼はラ・ナープルの向こう、エステレル山地の手前にそびえる蛇山に一人で暮らしています。年は45くらいで、髭は黒いものの髪は真白でした。話者は時間をかけてこの隠者と親しくなり、食糧を持って訪れたとき、夕食時に彼の打ち明け話を聞き出します。
どんな訳でこの頂上にやって来たのかを話者が尋ねると、男は過去を語りだします。
そこそこの財産を持った優雅なパリジャンであった男でしたが、四十歳の誕生日を迎えた日、カルチェ=ラタンをさまよい、あるブラッスリーに入ったところで給仕の女の子に目を留めます。話をまとめ、仕事の終わった後、彼女の部屋へと訪れます。
部屋を出る時になってふと目に入った写真に写っていたのは、なんと若かりし頃の自分の姿でした。
その女性はかつて自分が里子に出した、実の娘だったのです。
知らぬこととはいえ、実の娘と一線を越えてしまったという「近親相姦」の罪悪感に、彼は打ちのめされます。神への冒涜、そして自分自身の存在への嫌悪感から、彼はそれまでの華やかな地位も財産もすべて捨て去りました。
そして、人里離れた山の中で、死ぬまで己の罪を悔い改めるために「隠者」として生きる道を選んだのです。




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